見出し画像

流転

勿論、狙って引いたわけではない。できるならば私自身も引きたくないと思ってる。それでも時として、何処に隙があったのか自覚がなかったとしても引いてしまう。風邪とはそういうものである。そりゃあ、完璧な警戒心で完璧な防衛策をとっていれば罹らないのかもしれない。でもそこにおける完璧とはなんだろうか?むしろ完璧なものがないからこそこの世界は美しいのであって……って。まあ、それはいいとして。完璧なものとは一体なんなんだろう?正直私は興味すら湧かない。どうでもいい。完璧主義万歳。消えろ。鼻水が止まらん。眠たい。くしゃみが止まらん。私だって辛いんだ。それをあんな顔されるとは。私自身が病原菌そのものかのように蔑んだ視線。

「うわ!近寄らないで!」

「なにしてんの?気をつけなさいよ」

わーわー言われて、だんだん私の存在そのものが迷惑なんだと言われてる気がしてくる。でも怒る元気はない。だから私は到底論拠など掴めるはずもなく謝罪する。私が消えれば問題は解決するのだから。解決。

軈て部屋に戻りベッドに倒れ込んで思う。なんであんな風に嫌な顔されて自分の行いのせいだと叱責されなければならないんだ。心配してくれとまでは言わないけど、だんだん腹が立ってきた。

あー、くしゃみがとまらん。風呂入るかな?眠るかな?なんか食べるかな?鼻水だけでも止まんないかな?身体は全然だるくないのに。てか、これ、風邪じゃないかも(てか、鼻水だけ止まらんって一体どう言う状態?)。うん、なんだか余計に病原菌扱いを受けたことに腹が立ってきたぞ。そしてなんかすごく美味しいもの食べたいぞ。ああ、もう厭なことは忘れて次の世界に向かおう。

こうして年が暮れていく。昨日とか明日とか、いつもと変わらない観点からならなんでもない日だ。それでも明日新しい年が明けるらしい。もし区切りみたいなもんがあるとするんなら次はもっと嬉しいことや楽しいことだらけに切り替わっててほしい。みんなにとって。私も。そっちに向かっていこうよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?