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期間限定の4文字に舞う、俺という名の踊り子
『期間限定!』
この世界は、さまざまな期間限定に溢れかえっている。
お菓子やアイス、洋服だってそう。
学生も期間限定だし、この人生さえ期間限定と言えるかもしれない。
そして期間限定と聞いて思い浮かべるのは十中八九スタバだろう。
今回は、そんなスタバの期間限定商品を買いに行くお話である。つまるところ、たいした話ではない。
スタバは全ての人を受け入れてくれる。
カフェというオシャレ空間に耐える肉体と精神を持ち合わせていない自分が唯一、心置きなくオシャレを全身に纏うことができるカフェ、スタバ。
某日am7:00、黒いスーツを身に纏った出勤前のサラリーマンやキャリアウーマンが行き交う駅に、一際目立つ青い服を着た男が立っている。
僕だ。
日頃、気になる新作のフラペチーノが出ると、気軽に足を運ぶスタバ。
待ち合わせの時間まで30分以上時間があると、とりあえず入るスタバ。
いつだってスタバはオシャレという空間に耐性のない僕らを受け入れてくれる。
だがその日は違った。
前には出勤前のスーツを着た3人組の男女。
後ろにはオフィスカジュアルの女性が2〜3人。
挟まれてる、どう考えても部屋着の上から真っ青な上着を羽織った僕が挟まれている。完全に場違いだ。
サイズがS・M・Lではなく、ショート、トール、グランデとか、言うだけでオシャレになった気持ちにさせてくれるスタバはここにはいない。
しかし、今回の目的は飲み物ではなく、ハロウィン限定のオバケのマグカップ。それさえ確保できれば店内にとどまる必要は無い。
「そんなの発売日の午前中にはほぼ無くなるよ」
という嫁の一言で早朝、出勤前のスタバに来ているのだ。ここで引き下がる訳にはいかない。
素早くマグカップを手に取り、列に並ぶ。
「マグ目当てで来られたんですか〜?」
緑のエプロンをしたオシャレの権化が、かなりフレンドリーに話しかけて来る。心の距離を一瞬で0にされる。
そのエプロンには何か能力でもあるのか。
メインのギアに『人見知り無効』でもついているのか。
「あ、は、はい…」と必死に返答をし、会計を済ませて商品を受け取ろうとすると、マグカップと共に手のひらにおさまるほどの小さなカップが差し出された。
「良かったらコーヒーどうぞ♪」
小さなカップになみなみ注がれたコーヒーをいただいた。
oh...なんという良サービス…。
顧客満足度の高さは富士山をも軽く超え、あわや大気圏に突入する手前まで来てるだろう。
2度と来る。またすぐ来る。
そう、心に誓い、コーヒーをひと口…
ここで問題が発生した。
あちい。
コーヒーが爆裂に熱い。
ただでさえ猫舌の自分に、こんな熱々のコーヒーが飲めるはずがない。なみなみ注がれている為、普段通り歩こうものならその右手は大火傷待ったなしだ。ここは冷めるまで慎重に帰路に着くしかない。
5分ほど歩いた頃だろうか、やっと飲めそうな温度になった。
ホッと一息つき、コーヒーをひと口…
ここで問題が発生した。
にげえ。
コーヒーが爆裂に苦い。
ただでさえ、苦くてコーヒーが飲めない自分にこんなブラックのコーヒーが飲めるはずがない。ただ、なみなみ注がれている為、普段通りガムシロップやミルクを入れた時点でジ・エンド。溢れたコーヒーで右手は大火傷、待ったなしだ。ちびちび飲むしかない。
ぬるくなった苦いコーヒーをちびちび飲みながら歩く男を見かけたとしたらそれは僕だ。
絶対に話しかけないでやってほしい。
無事、家にたどり着いた僕は、お口直しに牛乳をがぶ飲みし、お腹が痛くなった。
『期間限定』それは人を狂わす最強の謳い文句である。
はい終わり。
チョコしか買わん。