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ストーリーは謎のままアクションで満たされる新しいヤクザ映画【映画「ヘルドッグス」】

岡田准一のアクション映画ということで気にはなっていたが観にいけずネットフリックスで遂に配信が始まったので見た。

あらすじ

愛する人が殺される事件を止められなかったことから闇に落ち、復讐のみに生きてきた元警官・兼高昭吾。その獰猛さから警察組織に目をつけられた兼高は、関東最大のヤクザ「東鞘会(とうしょうかい)」への潜入という危険なミッションを強要される。兼高の任務は、組織の若きトップ・十朱が持つ秘密ファイルを奪取すること。警察はデータ分析により、兼高との相性が98%という東鞘会のサイコパスなヤクザ・室岡秀喜に白羽の矢を立て、兼高と室岡が組織内でバディとなるよう仕向ける。かくしてコンビを組むことになった2人は、猛スピードで組織を上り詰めていく。

とにかくアクションシーンは想像以上に良くて興奮する。殺陣は岡田准一にある程度自由に任せられていたのか彼がやりたいような作品になっているのだろうと感じた。後半からはほぼガンアクションだけに偏っていたが、前半からストイックさが見える肉体に一人だけ雰囲気の違う速いアクションは男も惚れる姿だった。

ストーリーに関しては原作ありきで観る話なのだろう。真剣に見ていても分かりづらさを感じる独特のスピードの台詞回しに雨のシーンでさえアフレコ編集をしていないであろう聞きづらさによって、キャラクター達の行動の真意がよく伝わらない。大事な説明台詞ほど小さかったり早口でよくわからなかったりするからその辺は演出も含めてわざとやっているのだろうとは思う。

ただそれによって作品独特の雰囲気とテンポ感は出ていたから批判まではしがたい作品でもある。アクションの見せ方や音にこだわっているのは分かるので話よりもそこをメインに見せる編集だったのだろう。ただもう少しセリフに編集加えてくれれば傑作級の評価も受けていたとは思うが、「もう一度見せること」も含めての昔ながらの映画ぽさもある。もしこれから観る人は「字幕付き」で観ることも薦めておく。

舞台となる東鞘会のヤクザは「孤狼の血」のような昭和を感じさせる喧嘩ヤクザではなく、令和版として描かれやすいスタイリッシュなインテリヤクザとして描かれている。会長役にアーティストのMIYAVIや若頭にはんにゃの金田を起用してるところでもその意図はうかがえる。重要な役柄でもあるので演技面で観てるこちらも不安だったが、そこまで変な違和感を持つことはなく結果的に裏切られる形でよかった。ヤクザっぽい怖さとしては物足りなさもあってアンダーカバーにしか見えない所もあったが他の作品でもまた観たくなる演技だった。

全体的に見せかたや雰囲気も硬質な映画という感じで、ここ最近の邦画にはない良質なハードボイルド作品であった。話はいまいち分からずとも男臭い空気間とアクションはターゲットを振り切っていることも見えて好感も持てる。登場してくる女性も必要最低限の少ない人数でスパイで登場してくる女優さんはよかった。アクションシーンはスタントマンだろうが、拷問シーンでの姿は覚悟も見えた。それ以外の女性にもきちんとキャラクター付けされていてインパクトのある存在だった。
実力俳優を起用しながら、俳優としては知られていない著名人や俳優も良く起用されていて見てる側も裏切られるのも映画の魅力でもある。

このうような高い質のアクションとして映像化されることもそうだが、知られていない俳優を発掘される映画も少なくなってしまい全てがポップなドラマ主導になっているのが最近の映像メディア事情として感じる。

「ヤクザ映画」で一つとってもヤクザ業が廃れビジネスとして成り立たなくなった果ての姿を描かれることが最近は増えたが、こちらは逆で密輸入で成り上がり別の組と抗争中であるヤクザを描かれているという異質さもある。


日本ではこういうものを作りたがる俳優や監督がもう少なかったり配給事情もあるのだろう。同じアジアでもここ10年は韓国でこういう系統の作品がよく作られているし、政治サスペンス等含め日本映画はかなり越されている。これをきっかけに日本でももっと増えてほしいなとは思うがこういう魅せ方ができるのも岡田准一だったからというのも大きいなとも思わされる。

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