見出し画像

ドラマサイズなら評価されていたであろうホラーサスペンス【映画「聖地X」】


題材と俳優陣は良かったのに低評価が目立ったホラーサスペンス映画「聖地X」を観た。

あらすじ
その土地には、絶対に行ってはならない。ひとたび足を踏み入れた者は、想像を絶する奇妙な現象に巻き込まれ、死ぬまで悪夢は終わらない!小説家志望の輝夫(岡田将生)は、父親が遺した別荘のある韓国に渡り、悠々自適の引きこもりライフを満喫中。そこへ結婚生活に愛想をつかした妹の要(川口春奈)が転がり込んでくる。しかし、韓国の商店街で日本に残してきた夫の滋(薬丸翔)を見かける要。その後を追ってたどり着いたのは、巨大な木と不気味な井戸を擁する和食店。無人のはずの店内から姿を現したのは、パスポートはおろか着の身着のまま、記憶さえもあやふやな滋だった。


上映は21年でありながらパンデミック前に作られたのか韓国が舞台となったホラー映画。元々は劇団の原作で舞台で話題になった作品だったらしいが、映画はあまり話題にはならなかった。

予告から完全に心霊映画を匂わすプロモーションだったにもかかわらず、蓋を開けたらサスペンスコメディだったのも低評価が多かった理由らしい。

話は別居で兄輝夫が住む韓国の別荘に訪れた妹の要が、買い物中夫に似ている男の姿を見かけオープン予定の居酒屋まで追いかけていったところから始まる。

その居酒屋の土地では相次いで外国から来た人間が店を始め、不審な死亡事件が起きている地だった。その地ではドッペルゲンガー現象が相次いで起きており、要の前に現れた夫もその一人であった。

後に輝夫の推理によってその人間の思念がその地では具現化されることが明らかになり、ドッペルゲンガーとして現れた人間もその一部で記憶が本人と分裂してしまいと曖昧になっている。

わざわざ韓国を舞台にしている理由は謎であったが、異郷の人間が訪れ大きく異なった強い思念がその地にとっては呪いにもなり聖域にもなりかねないという題材は面白かったと思う。

日本の辺境地でやっていても一応成立はするが、韓国と日本との関係も含めた日本人にとってのその地の不気味さなどもメタ的に表していたのであれば斬新ではあるし巧妙だなとは思う。直接的な表現はなかったのであくまで考察の範囲内でしかないが。

また具現化された当人の記憶が曖昧になる仕掛けも、思念によってもたらした人間の記憶を前提にその人間や物を見ているという暗喩でもある。

人間は客観的な事実より主観的に人間や物事を見ることの方が多くその人の世界はそれで成り立っていく。この映画で具現化されたもう一人の要の夫や居酒屋主人の奥さんも、当人の記憶が分裂した分の彼らの記憶を中心に「そういう人間」だと都合よく捉えていたということでもある。

人間は自分の記憶を主に世界や人を見ておりそれが「聖地」では本人をも脅かす呪いとなって具現化された話であったのだろうと解釈できる。
途中で現れた霊払いはこの場所は「悪魔だと思えば悪魔であるし、神だと思えば神にもなる」といった一言も人間の記憶によって不気味な場所になっているがそうはなりえない場所にすることも自分たちでできると言った意味に思う。

最後は要は夫への執着と怒りがさっぱり消え分裂したもう一人の夫は消えたということだろう。女性の記憶力と切り替えは早い。輝夫はそれまでの現象をミステリー小説にまで落とし込み前に進んだ。

仕掛けや題材はよかったが後半になるにつれてコメディさが増して解決の過程も内容も薄くて興味を失い面白くなかった。作品時間も2時間近くあったが、後半1時間は非常に長く感じてしまった。

タイトルにも書いたが1時間のドラマサイズでテンポよく終わってたらもう少し評価されていたかもしれない。時間のわりに終わりも親切ではなく、捻りを感じなかったのも低評価に繋がりやすかった理由だろう。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?