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新作「WONKA」では描かれないであろうティム版ウィリーウォンカの過去【「チャーリーとチョコレート工場」】

チャーリーとチョコレート工場の主人公でお馴染み主人公ウィリーウォンカの過去を描く「WONKA」が新作として今年の12月に公開されるらしい。

日本語字幕の予告編も公開されている。


予告編だけなのでまだ分からないが、おそらくティムバートンが描いたウィリーウォンカの幼少期からの過去とは異なったパラレルワールドな気はしている。

時系列的にも幼少期以降の話にはなるからティム版を含んだ上での新作の可能性も考えられるが。

いずれにせよティムバートンとは異なる新しいウィリーウォンカの過去が分かる作品になる。

ではそもそも「チャーリーとチョコレート工場」のウィリーウォンカという人間はどのように描かれていたのだろうか。
新作では描かれないであろうそれ以前からの彼の人生を思い出していきたい。

あらすじ
失業中の父、母、そして2組の寝たきり祖父母に囲まれ貧しいながらも幸せに暮らしている少年チャーリー。彼の家のそばには、ここ15年間誰一人出入りしたことがないという、謎に包まれた不思議なチョコレート工場があった。ある日、工場の経営者ウィリー・ウォンカ氏は、全商品のうち5枚だけに入っているゴールデン・チケットを引き当てた者にだけ、特別に工場の見学を許可する、と驚くべき声明を発表した。そして一年に一枚しかチョコを買えないチャーリーも、奇跡的に幸運のチケットを手にし、晴れて工場へと招かれるのだが...。

そもそもウォンカが子供を工場に招待した目的

ウォンカは選ばれた5人の子供を工場見学という名目で招待したが、彼の真の目的は工場の後を継いでくれる後継者探しだった。

ウォンカチョコが大好きであることと、工場にいるウンパルンパの面倒を見てくれる人間を探しており相応しくない人間はほぼ自滅にも近いがそのまま退場させた。


結局チャーリーと祖父が最後まで残り特別賞として工場の跡継ぎに指名するが、家族と二度と会えない条件があったのでチャーリーはそれを拒否する。

ウォンカはまさか断られるとは思わず、驚きそのまま去っていく。

そんな条件を理由に断られることが彼にとって意外だと思えてしまったのは、そもそも父親との軋轢がきっかけになってチョコレート工場を作り成功の道を歩んでいた過去があったからだった。


トラウマだった父親によって形成された人格

ウォンカは歯科医師の父を持ち好きなお菓子は禁止させられ厳しい環境の中で育てられていた。

また母親も作中では存在しておらず幼少期からどこか不足したまま彼は育っている。

大人になってもその影響は大きく、幼い子供のような彼の性格やライバルにレシピを盗まれた際も訴えるのではなく自分の工場を封鎖する極端な彼の人付き合いの弱さもそこに繋がる。

また工場見学の時による子供から大人にも理解されない彼の極端な会話中の空回りの多さと、後継者に相応しくない人間への突然の冷酷さは人付き合いの仕方が分からない彼の孤独な過去の背景が感じられるようになっている。

ウォンカは幼少期から年を重ねると大好きな菓子を許してもらえなかった父親に反発し、自らの道で工場をつくり成功を収めたがその背景には家族という概念は愚か人との関わりもほとんど存在していない。

トラウマだった父親から逃げた先にウォンカは好きを追い求めたが道中はほとんど孤独であったのが、彼の理解されない人格と物哀しさを感じる繋がりだった。

家族に今後会えないことを条件にした後継者探しも、過去を辿ると彼なりの論理で子供に伝承すべき賞として用意していた理由だった。


チャーリーに見抜かれ、成功から幸福の道に移る

チャーリーに後継者を断られてからも、ウォンカは工場の経営を続けるが業績は下がり新作は売れない日々が続く。

ウォンカはチャーリーのもとへ相談しに行き、「家族が必要」だとチャーリーに見抜かれる。

チャーリーの家はお金はなかったが家族単位で豊かさを知っていた。

工場に招待された4人の子供もみんなお金はあったが皆家族関係含めて人格は貧しく孤立している。そういう意味ではウォンカの論理に乗っ取った4人であったが結局その果てで自滅していったのも彼ら4人。

豊かさを知っていたチャーリーはしたたかにただ見学者としてウォンカの案内に沿って学んでいただけだった。

その意味ではウォンカが探した後継者としてこれまでの成功論理も超えたお菓子を通じ幸せを理解してくれる存在だったと思える。

その後チャーリーの言葉を受けたウォンカは父親の元に会いに行く。密かに息子を応援していた事実を知った彼は和解し初めて家族という概念を感じ始めた。

それからは「家族と離れないこと」を条件に掲げ目的通りチャーリーは工場の後継者になり、ウォンカも幸せそうに食卓を囲んで終わっていく。

成功と幸福は相関しているように思えて実際になってみたら別物だと言われるが、大人になって振り返るとそういう大事な話をウォンカの人生を通じて丁寧に描いていた作品だったなと思える。


考察:新作映画「WONKA」は父を排除した、母との優しい話

これを踏まえて新作の予告を見ると話しの視点は大分変ってくると思う人は多いと思う。

ウォンカの好きだったものを否定する存在は父親から、「夢を見たら罰金を科せられる街」へとすり替わっている。

そしてティムバートンの方では存在の影も見えなかった母親が登場しているのも新たな要素だろう。

ウォンカの人格も夢に向かう純粋でさわやかな少年になっており、父との反骨心を持ちながら感情がコントロールできない彼とはまた変わってくるかもしれない。

そもそも作り手の視点で考えたら今さら父と息子の確執の過程を見せられても誰もついてこないと思うのは自然なのも分かる。

現代に親子の喧嘩や愛情の題材として成立するのは、母親と娘か息子ではある。

新作は新たなウィリーウォンカの顔を知る作品として見る認識の方が正しくて、自分のような世代だったおじさんが過去の映画とどれぐらい繋がるのかを細かく見るのはまた違う作品なのだろう。





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