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于吉はなぜ目覆いの少年に憑りついたのか【WOLONG:ウォーロン】

PS4ゲーム「ウォーロン」のシナリオをクリアした。アクション性がかなり充実しているゲームでストーリーは正直あってないようなものだったが、
疑問が残ることも多かったので史実を元にまとめたい。


于吉とはそもそも何者なのか?

于吉とは史実によると仙人であったというデータしか正式には残っていない人物。

三国志正史の方には登場しないが、三国志演義にて孫策の死因でありその脚色に使われている。言い伝えでは「于吉は孫策に処された」ことは多くの資料で一致しておりそれを広げた話として描かれている。

孫策許貢から受けた怪我の療養中、袁紹の元から使者として訪れた陳震を持て成すために、呉郡の城門の楼上で部将や賓客たちと宴会を開いている時に登場する。于吉に民の人望が集まることを憎み、妬んだ孫策は、于吉に難題を押しつけるが、于吉はそれをことごとくこなしていったため、言いがかりをつけて彼を殺害してしまう。

孫策はこの頃勢力を伸ばし続けていたと同時に敵対する人間も多く作っており、許貢という刺客によって深い傷を負わされ一線からは離れざる得ない状態だった。正史ではここで病死するが、演義では袁紹にここで共闘を持ち掛けられ使者を歓待する宴が開かれる。

于吉は民衆からも慕われた仙人であったことから宴会に登場すると孫策などはそっちのけにされたことを怒り、于吉を捕らえさせた。

于吉はここで仙術による雨乞いを証明することによって赦しを請うが孫策は言いがかりをつけて処する。

しかしこのあと于吉は孫策の前に亡霊として何度も現れ彼の精神を蝕み、ついには鏡の中にも現れて彼がたたき割った破片が傷口に刺さり亡くなるという結末で終わる。

その後も信者には于吉の死は信じられず尺解したとして考えられしばらくあがめられたらしい。三国志ではオカルト要素の多い象徴的な人物として描かれている。


臥龍(ウォーロン)の于吉

ウォーロンでの于吉は妖魔という異形の存在を創り出す元凶となる。
丹薬と呼ばれる薬を使って人間を妖魔に変えてしまい、その影響によって漢王朝が脅かされる世界観になっている。

あらすじ
西暦184年、後漢末期の中国。異形の存在である「妖魔」と頻発する戦乱の影響によって、長く繁栄してきた漢王朝は滅びつつあった。張角の率いる太平道による「黄巾の乱」が激化する中、主人公は義勇兵として黄巾党討伐に向かった先で謎の少年に出くわす。

于吉自身も丹薬によって妖魔と化した姿になり彼自身がそれを広めあらゆる英雄たちを妖魔と化し戦っていく。

三国志演義に乗っ取って解釈すれば孫策から不当に処されたことによる完全なる呪霊であり、負のエネルギーによる仙術によって乱されて世界観と話は形成されている。

主人公は義勇兵として張飛や関羽、曹操の中に加わっていき劉備的な立場で進む。劉備本人は妖魔とされて後に戦うが、主人公しか使えない仙術を用いてようやく倒せる存在になってるのもこの世界観の象徴を成しているように感じられる。

孫権や孫策も作中では于吉によって殺されていき、彼の史実を逆手に恨みをテーマにしたことによる逆転現象がしばしば起こるストーリーになっていた。


そしてここからはネタバレになるが、于吉を倒した後のラスボスは「目覆いの少年」と称された謎の少年である。

この少年は身体や自意識はまだ残ったままだが于吉によって精神体を乗っ取られ、主人公と戦うことになる。

于吉の本体はこの少年の精神の中に潜んでいたことになり、正に「尺解」の現象によって動いていたことがあらわになる。

その後少年を倒したムービーになるとその少年のその後が映し出され、羽毛の扇子がちらつくことにより正体が諸葛亮であることが明らかになる。


于吉は諸葛亮の少年時代の精神体に憑りつきこの世界観の元凶を形成していたというところで終わっていく。


于吉が目覆いの少年に憑りついた理由

三国志が好きな人は最初から勘づいていたと思うが、このゲームタイトルの
「臥龍(ウォーロン)」は諸葛孔明が劉備にもまだ仕える前のころに呼ばれていた異名である。

そのころから管仲や楽毅のような名宰相の能力はあると自負していたものの、他人にはあまり認められず自分からも売り込まなかったためにそれを見た人鑑定の人物に眠れる龍と言う意味で臥龍と呼ばれたらしい。

そして諸葛亮はそもそも道教の信仰者であり仙人の信仰が深かったと言われていて、幼いころから魔術的な能力があると言われていたのもこの辺りに起因している。

于吉が目覆いの少年に憑りついたのは彼が成しえられず認められなかった仙人としての力の使い方を彼がその後体現する人物であったからであろう。

次世代の後継者や信者を多く作れなかった于吉は諸葛亮に見出し、尺解することで世の中に復讐と言う形で憑りついたのだった。

臥龍時代に自分の力を認めてもらわず、広めようともしなかった境遇も何かと一致していて振り返ると面白い設定だったと思う。

また最初のステージが諸葛亮の出生地の徐州であったり、ラストに于吉が化ける龍は「応龍」だったりと何かとタイトルに基盤が創られた世界観だった。

結論としてはこのゲーム自体は諸葛亮が表舞台に現れる前日譚エピソードをファンタジーに置き換えたストーリーだったということだろう。劉備ポジションにいるプレイヤーが主人公と思いきや、諸葛亮が主人公であるゲームだと最後にひっくり返される。

正直普通にプレイしているだけでは伏線が少なすぎてこの辺のオチも分かりづらかったと思う。せめて孫策の死後による孫堅の話を詳細に描いてれば誰もが見ても頷ける面白いストーリーゲームにもなっていたのに惜しい。

赤壁の戦い前で終わる時代構成なのでかなり渋い設定だったがそれを凌駕するアクション性でそれなりに一般受けしたのは流石だったが。

有料dlcでそれ以降のストーリーが拡張されているらしいが、于吉と少年は退場したのでタイトル的にはおそらく関係ない話になる。

劉備のポジションにいるプレイヤーが諸葛亮を口説いていく話ぐらいは続編で作ってもいいだろうがシーズンパスまで作られたのでもうないでしょうね。



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