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【考察】ラスアス3は「救済」の物語か。「復讐」というミスリードから残された伏線【The Last of Us Part II】

レビューが一部で荒れに荒れたと聞いたラストオブアス2を今更初見でクリアしてみた。

レビューはその他大勢が書いているので、この作品の最後の結論と伏線が改修されなかったところを踏まえ制作未発表の続編に繋がる「ラスアス3」の考察をしたいと思う。


あらすじ
The Last of Us』の続編。文明の崩壊したアメリカで、父親のような存在だったジョエルを喪ったエリーが、ジョエル殺害の実行犯である女兵士アビーに復讐を果たそうとする物語となっている。
前作は「一人娘を失って失意に生きるジョエルが『愛情』を取り戻すまで」をテーマにしていたが、本作では「ジョエルを失って憎しみに捉われたエリーが『復讐』を遂げるまで」が描かれる。同時に、ジョエルによって父親を殺されたアビーの『復讐』の物語でもある。本作のテーマを一言で表現すれば、『2人の復讐の末路』である。


レビューが荒れた大きな要因としてはジョエルが早々にアビーの過去の恨みによって退場し、再びエリーが復讐を誓うこの連鎖をプレーしないといけないからということであった。

ただ最後まで見届けた人は分かるが、この作品において「復讐」というテーマはミスリードであり重要なことではなかった。

1から大切な存在であったジョエルが殺されることで序盤はエリ―やトミーの思いとプレイヤーは同化しアビーの負の側面にしか向かないような展開ではある。

しかしおよそ10時間プレイしアビー視点の物語をプレイさせられることで彼女への憎悪への偏見は取り除かれていき彼女もまた理性から踏み外していない倫理観の中で過去のトラウマに襲われながら生きている人物だと知ることになる。

度々出てくる夢の中での手術室の光景は正に彼女のトラウマとなった証拠でありジョエルが引き起こしたあの日の光景になっている。

彼女自身もジョエル個人の恨みが重要だったわけではなく父を亡くした恐れから来るトラウマの解放を願った結果がこの物語の根源を引き起こした理由である。

そうして徐々にアビーに対しての負の側面を取り除かれ始めた先にセラファイトから逃げ出したレブとヤーランを救う物語が始まる。

過去のトラウマによってマヒしていたアビーの人間性はWOLFに恨まれてでもレブらを救い彼女らの親になることで愛という形で取り戻し始める。これは完全に1のジョエルがエリーを救う姿と酷似する構造となっている。

この異質な構造の物語を経ていくことでプレイヤーは彼女への復讐と報いの連鎖を辿る無意味さに直面し最後のエリーの結論を見届けることになる。

そしてエリーさえも最後は殺さない選択を選ぶことになる。彼女はアビーの物語は知らないが、命に代えてでも庇う人種が異なるレブの容姿からプレイヤ―同様の視点で察したのである。

アビーも血の繋がらないジョエルの過去と同じ姿であったからこそジョエルの姿が浮かび彼女も葛藤していた復讐の倫理からようやく解放され「許し」という概念を考えられるようになった。

この作品の最も良かった点は復讐や暴力の倫理観に背く複雑な行為を「良くない」というような簡単な結論で片付けさせなかったことだったと思える。

かつては敵だと思わされたアビーを「生きながらえさせる」というゲームの目的のもと複雑な感情の中でプレイするということで、彼女に対しての恨みを客観視し白黒の二択で結論づけさせなかった。

だからこそエリーがレブを一目見ただけで殺さなかったという結論にこの上ない納得と複雑性をより感じられることになるのである。

エリーにしても最後は指を二本無くす痛々しい姿にはなるが、彼女の変化だけを能天気な正義としては終わらせず痛みが必ず伴うことを描ききっている。

最後は指が抑えられず音が出ないままジョエルのギターを弾くことになるがジョエルの思いを抱える執着からようやく解放された示唆的なワンシーンでもあった。

ジョエルに投影していた形見のギターは弾けなくなったことで彼女は手放すことができ、新たな一人の人生として旅立ったのである。


「ラスアス3」に繋がりそうな残された伏線

発売から3年後PS5のリマスター版は決定したが続編の報せはまだ出てこない。

構想は書いているという噂は聞こえては来るが今のところはこういうニュースぐらい。

シングルプレイ専用の『The Last of Us Part III』については次のように答えている。「プロセスは『Part II』と同じです。つまり、1作目や2作目のように、愛についての普遍的なメッセージを持つ魅力的なストーリーを思い付くことができれば、そのストーリーを描きます。何も思い付かなかった場合は、『The Last of Us Part II』で非常に強力なエンディングを描けたので、それで完結になりますね」

愛、復讐という流れを見ると3作目がもし描かれるならば救済や幸福をテーマとして描かれて終わっていくのは予想はできる。

完全な架空の考察にはなるがラスアス2の残される伏線を挙げて繋がりを予想する。

1.アビーとレブのその後

アビーとレ部はエリーに見逃され、そのままファイアフライの新拠点となる島を目指して終わった。

戦うことを辞めた彼女らが再びプレイ視点として戻るかは分からないが、ジョエルとも重なる二人の関係性を描いた上で何も出てこないで終わるということはないだろう。

エリーがその後どこに向かうかは未知ではあるが、近隣ではほとんどの組織が退廃した上で彼女が目指す目的を考えれば、同じ島に向かうことは十分考えられる。

その際にファイアフライの上の立場に彼女らがいることになって登場すれば話もまとまりやすくなるだろう。

2.エリーの新たな目的

彼女は唯一感染の抗体を持つ人間である。

そして彼女自身この世界で自分が生きる意味として考えるほど自身の抗体を活かさなければいけないと強く感じている。

2ではアビーの父がそれを活かす人物として登場したがジョエルが神にチャンスを与えられても同じ決断をしていたと言うほど、エリーにとって良い結論をもつ医者ではなかった。

そうなると彼女の新たな目的は抗体を活かしてくれる医者を再び一人で探すことだろう。

そしてファイアフライこそアメリカ全土に広がるほどの巨大な組織であり自ずとアビーらが向かった新拠点へ誘われ再開する展開は想像しやすい。

なんなら戦いから解放されたアビー自身がその医者の存在になりえるかもしれない。

3.新組織の存続と菌の解明

今作ではWLFの他に、セラファイトとラトラーズが新たな勢力組織として登場してきた。

WLFのリーダーアイザックはヤーランの銃によって撃たれたがその後の生死の報せはないまま終わっている。

セラファイトやラトラーズも拠点ごと壊滅させられたものの残党が残ってる可能性は高い。

セラファイトに関しては宗教性によって組織されており武力組織としては脆さは持つものの、あの世界観において唯一に近い宗教思想が絶えることは考えにくい。

アビーでさえWOLFの理念からセラファイトの思想に救われて寝返るほどの教義を持っていた。残党が新たな組織を作り平穏になるかあるいは彼らだけ復讐と宣教の呪縛に囚われ対立勢力として現れるかもしれない。

またラトラーズは終盤に出てくるが情報はなく未知の組織のまま終わった。

今作の世界観では感染者はかなり弱い立場になり人間にとっても脅威とは呼べないほどの存在として描かれた点は気になる。

ラトラーズに至っては造反した人間を敢えて感染させて拠点の見世物にするほどの人間側の慣れと菌への制御力を象徴していた。

リーダーや幹部の存在も明かされなかったうえにラスアスでは感染の菌がどこからはじまったのかについて根源的な問いもなく明かされていない。

終盤のラトラーズの存在は今作にはかなり違和感を持つ登場だっただけに、続編が描かれるならば世界観において核心に迫りうる組織になる可能性も高い。


以上大まかではあるが、結論が謎のまま終わった三点の要素を挙げて予測してみた。

インタビューなどの情報ではそもそもエリーとは変わる全く主人公の違う作品になる可能性もあるようなので架空の考察として置いておきおく。




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