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職人が語る〜縫い目への拘り〜

私の作品はすべてハンドステッチで仕上げていて、
ミシンを使いません。

その理由はいくつかあるのですが
ハンドステッチは2本針で糸をクロスさせて縫うため、
仮にどこかの糸が切れてもほつれにくいことで
修理の際、縫い目を拾って縫い直せる。
 また、作品の重厚感・奥行きがミシン縫いとは全くの別次元と言って過言ではない。
といったことから、手縫いでの縫い上げにこだわっています。

 さらに、縫う際には革に穴を開けてから糸を通していくわけですが、
この時に使う道具にも様々なものがあります。
効率の良さで言えば、4つや8つの穴を一気に開ける菱目打ちという道具もあるのですが、分厚い革を貫くと手前側の穴が大きく広がってしまう欠点があります。
 私は、縫い穴を一つ一つ菱錐で開けています。
菱錐という名前からもわかるように、ひし形の穴をあけるものなのですが、研いで仕立て直して、ひし形ではなく左右の尖った楕円になるようにしています。(ヨーロッパ目に近い)
 分厚い革でも片手でするっと刺さっていく鋭さです。
これによって、縫い穴周辺も荒れませんし、直線はもとより、角や角丸の角度に応じて縫い穴の角度をコントロールすることで、ステッチもきれいに整います。

最後に、縫い糸も厳選して使用しています。
汚れやスレに強く、6本の細い糸で編み込まれた特殊なという糸を、ヨーロッパより仕入れています。
縫うパーツやかかる負荷に合わせて太さを変えて縫っています。

それなりに手間のかかる工程を踏んでいるのですが、
『日々の暮らしの中でずっと使えるもの』
であるために大切なことであると判断したからです。
それと、個人的な想いとして、
こういう手仕事って、常に最善を目指して様々なことにこだわり続けるから熟練していくんだと思っています。
「これでいい」と思ったら終わり。
常に「もっと良くならない?」を自身に問いかけながら、創っていきたいと思っています。

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