ヒラエスと呼ぶのだろうか

【ウェールズ語の「ヒラエス」は、「帰ることができない場所、失った場所や永遠に存在しない場所への郷愁と哀切の気持ち」を意味する。 】

らしい。

どうしようも無いくらい大切で大好きで愛おしくて狂っていくくらいあんたにずぶずぶだったんだよ。好きで好きで好きで、頭の中はあんたの事だけで飽和していたそれくらい私の全部だった。

けど終わった。どうってことない。

あれから1年経った。ちょうど1年今日で経った。

1年前の私は1年後の私もあんたの事を記憶の中で擦り続けてるかと思ってたしそう確信していた。だって世界の全てだったから。

でも違った。

写真を消した。iPhoneのデータから削除したら、あとは何も残らなかった。笑った顔のあんたは最近削除した項目って所に居た。
だからそこからも消した。そしたらもう堰を切ったように次の行動をとれた。

手紙、アルバムを捨てた。透明なゴミ袋に入れて、そのまま可燃ごみとして扱った。きっともうとっくに燃えカスになっている。

あの手紙、何回も何回も呼んだんだよ。アルバム、嬉しくて沢山抱きしめた。その記憶も燃えて無くなるように捨てた。

そして時間が経った。そして1年経った。

そしたらもう記憶の中で呼ぶあんたも居なくなった。どんな声で私を呼んでたっけ?

好きだった、ただそれだけだった。
これはヒラエスと呼ぶのだろうか。もう二度と帰れないあの場所は、どんな薄れ方をしていくのだろうか。

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