SHARP X1 - AVパソコンとしての出発
シャープのパソコンは愛されているようで、今までMZシリーズについて書いてきた記事はいずれもたくさん読まれています。
8ビット時代を駆け抜けたクリーンコンピュータ - MZ-2000/2200/2500
まだ触れていないMZシリーズも残ってはいるのですが、そろそろAVパソコンのシリーズである X1 を取り上げたいと思います。
X1の初代機(CZ-800C)は1982年11月に発売されました。当時のメーカーの多くは事業部制を採っており、パソコンは電子部品を扱っていた事業部であったり、もともと計算機を作っていた事業部であったり、どの事業部が取り扱っているのかはマチマチでした。パソコンが売れ始めると「そんなに売れるのならウチも出すか」と他の事業部からもパソコンが出てくるようになりました。シャープも事業部の独立性が高い会社で部品出身のMZシリーズと計算機出身のPCシリーズをようやくMZシリーズに統合して間もなく、今度はテレビとしてのパソコンであるX1シリーズが登場することになりました。
X1 (コンピュータ)
ディスプレイとして専用ディスプレイではなくTVモニタを使っている人も多かったのですが、それも含めてパソコンとしてしまった辺りにシャープの先進性が感じられます。テレビとしても使えるうえに、テレビ画面とパソコン画面を重ね合わせてスーパーインポーズを使えるのが強みです。もっとも見るだけでスーパーインポーズの出力を録画するなんていう使い方は無理のようでしたが。まだ対象がテレビなのでビデオコンテンツとパソコンの連動なんていうのも先の話です。
パソコンテレビ X1 CZ-800C
シャープなのでBASICをROMに持たず基本的には内蔵されたカセットレコーダからプログラムを読み込んで起動するのですが、プログラムから制御できるのでそれなりに使い勝手が良くなったようです。また速度も2700bpsと他の機種に比べると圧倒的な速度で、それが故にフロッピーの普及はゆっくりとしたものになったようです。
Sharp X1-C (CZ-801C) - Vintage CPU
Sharp X1 CZ-800C - The Centre for Computing History
ディスプレイがテレビなので解像度は640✕200。VRAMはZ-80の16bitに拡張されたI/Oアドレス空間に割り当てられており本体のメモリと干渉せずに48KのVRAMをアクセスできました。これは後のソニーSMCシリーズにも採用された方法で、メモリ空間に配置した場合のようにDMAによる待ちが発生しないためにむしろ高速にアクセスできたようです。残念なのはテレビを使ったので中間色を出せたはずなのですが、8色しか扱えなかったことです。
CPUはポピュラーな4MHzのZ-80だったのでグラフィックをゲームなどで高速に処理をするには厳しいものがあり(そもそもVRAMはオプションなので標準ではテキストのみ)、むしろテキスト文字が対象のPCGを積んでいたので、そちらを使うのが主流だったようです。またPSGも積んでいたので効果音は出せるのですが、少しばかり使い勝手は悪かったようですね。
ツライのがお値段で本体こそ15万とちょっとなんですが、VRAMとディスプレイを合わせると30万くらいになるのでデザインも格好良く普段はテレビとして使えることを考えてもお高めでした。それでも人気はあってテレビと融合した使い方を提案した機種がその後次々と発売されるようになりました。この時代のパソコンは動画を扱うには力不足だったので、ビデオデバイスとの連携が無ければどうしても情報量の乏しい画面で我慢しなければなりません。それでキャプテンなどのビデオ端末やパイオニアのMSXで試みられたレーザーディスクとの連携を図ったデバイスも登場したのですが、コンテンツを揃えるのが大変だったようで、その試みは限定した領域に留まったようです。
この元祖X1も愛されていて中古品を楽しむ方もまだまだいるようです。
JUNKパーツ回顧録 第3回:SHARP 初代X1(CZ-800C) PART2 「カナ」ロック
シャープ X1(CZ-800C) 3台目ホワイト 1982年 メンテナンス編
このシリーズの影響なのかMZシリーズもようやくカラー化の道を歩み始めます。またX1シリーズも毎年のように新機種を投入し1984年にはX1turboシリーズにグレードアップし1986年にはX1tueboZシリーズに進化しました。1988年に最後のシリーズをリリースし、こちらも人気のあったX68000シリーズに道を譲ることとなりました。
ハードが無くてもエミュで頑張る方にはこちらも参考に。
X1センター
X1 compatible ROM ver 0.7.3
X1互換 8x8ドットフリーフォント
ヘッダ画像はマイコン博物館所蔵のX1。