PC-8001登場
私がApple][を買ってまもなく1979年9月、遂にNECからPC-8001が発売されました。ベーシックマスターもCOMPOBSも、正直に言って基板をケースに入れただけのものでしたし、MZもキットという形での販売でした。PC-8001の登場で、ここにいわゆる和製パソコンの歴史が始まったのです。この日を「パソコンの日」としているらしいのですが、実際にいつ発売されたのかに諸説があるようで、公式には月までしか認めていないとのことです。
NECとしてはパソコンとはどういうものであるか、かなり突っ込んだ検討をしたようです。マイコンボードをケースに入れただけであればCOMPOBSで十分です。海外製パソコンでは既にフロッピーを使えるようにしていて、ビジネス目的にも使えるようにしなければなりません。そうであればプリンタも必要です。NECは大型機を売っていますから、その端末としての利用も想定していました。今までのようにいろいろな装置に繋ぐのであればI/Oも充実させなければなりません。入力デバイスとしても、まだマウスを使うようなグラフィカルな環境は無かったのですが、ライトペンも繋げるようにしてありました。そして多分譲れなかったのがカラー表示だったんだと思います。もっともカラーに関してはディスプレイが高すぎて、最初の頃はあまり活用されていなかった気もします(テレビを使えないのは痛かったです)。
PC-8001
PC8001については、これに惚れ込んで徹底的に調べ倒した人が、いくらでもいるので、あまり深いことは控えます。私はApple][で忙しかったのですが、どんなBASICを積んでいるのだろうかだけは調べていた覚えがあります。スペックとしてApple][に追いついているとは思っていなかったので、あまり興味を持つことはありませんでした。気になりだしたのは、後継のPC-8801あたりからですね。
一応、主なスペックだけはまとめておきましょう。画面は40または80桁に20行または25行。図形文字による160✕100ドットの簡易グラフィックが使え、テキストもグラフィックも8色が使えます。これを単なるハードウェアで実装するのではなくCRTCと呼ばれるチップで制御していました。このCRTCが優秀でVRAMを効率よく使うことが出来るのですが、その機能上の制限から、グラフィックではドットごとに色をつけることはできず2✕4ドット(これがテキスト1文字相当なんで)毎に同じ色でなければならないとか、コードと修飾情報という作りであり、修飾情報が1文字ごとに設定できないことから、1行内の左端から右端の方向において変化する回数に制限があったりして、微妙に使いにくいものでした。
PC-8001 CRTC
よく話題になったのが、VRAMアクセスをCPUとCRTCで分け合うことから、CPUの能力のうち半分程度しか使うことができず、パフォーマンスを出すために画面を消してしまうハックがよく行われました。MZなどに比べれば2倍の能力を持っているのに、半分の能力しか使えなければ似たりよったりになるのが我慢できなかった人も多かったようです。
PC-8001の開発 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/2010/15/2010_15_15_58/_pdf
さて搭載されていたBASICですが、NECは独自開発したBASICを持っていたのにも関わらずマイクロソフト製のBASICを採用しました。この経緯については、いろいろな事が言われているようですが、ROMに焼き込んで出荷するわけですから品質が求められたのではないでしょうか。結果的には大成功だったんだと思います。
N-BASIC - サイズは24K。だいぶ大きくなっていますね
BASICの仕組みとして拡張性が考慮されており、ディスクや拡張I/Oを接続した場合にはじめて使えるようになる命令も含まれています。それまでは、それぞれのメーカーが独自にBASICを開発していたために、同じコードであっても動作が異なることがたびたびありましたが、マイクロソフトBASICがデファクトスタンダードの地位を占めるようになって書かれていない仕様はこれが基本となりました。
basicのfor-next実装
後から考えればN-BASICは、まだまだ粗削りな感じがしますが、標準の地位を確立したことは間違いありません。単なるひとつの実装に過ぎなかったN-BASICの仕様が世の中に広まりすぎて、N-BASICで有効なハックが、その後に他のBASICになっても意味もなく引き継がれることも多かったような気がします。後継機種が出てもN-BASICのROMは互換性のために搭載され続けました。
【日本電気】 PC-8001
PC-8000シリーズ
結局25万台売れたようです。日本でのApple][の販売台数と比べればものすごい数です
1979年の9月に販売開始されたPC-8001は2年ほどメインとして売り続けられ、ちょうど2年後の1981年9月に後継のPC-8801、11月にはPC-6001が発売され、最終的にPC-8001mkIIが1983年の1月に出るまでは現役を続けました。日本のパソコン界にとっての転換点を示した機種だったと思います。
ヘッダ写真は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nec_PC_8000_series.jpg
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