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HP 15c Collector’s Edition - 復刻ブーム万歳

いつも眺めているGIZMODOに以下の記事が配信されました。

40年前の関数電卓が復刻。処理スピードは当時の100倍

いやぁ懐かしい。電卓を含めモバイルなガジェットについても、いろいろ書こうと思っていたところです。どこから書き始めるか悩んでしまい、なかなか手がついていなかったのですが、思わずこの記事を書き始めてしまいました。

HP-15C

この電卓は 2010年にも HP 15c Limited Edition という形で復刻したことがあり、これが二度目なんですね。80年代のパソコンが次々復刻されている昨今、お前もかとも思ったのですが、こちらが先でした。

※HPのアジア向けの購入サイトが、ずっとアクセス不能なので、入手は諦めかけています。


大学に入って良さげな関数電卓が欲しいと思い、HP-65 以来の憧れだったHPの電卓を買おうと思い物色したところ、HP-15C は少しばかりお高かったので、HP-11C を買ったことを思い出しました。当時は高級な15Cと普及型の11C、金融向けの12C、プログラマ向けの16Cというラインナップでした。

HP-65

HP-10Cシリーズ

なぜ16Cではないの?と思われる方もいるとは思いますが、もうパソコン時代だったので、プログラムを組む時にはコンピュータの前にいるので、わざわざ電卓を使う必要はなかったんですね。それよりも講義や実験などの最中に手軽に少しややこしい計算を行うのに、できればプログラムもできるような関数電卓を必要としていたんです。

ちなみに普通の人は決して、この電卓に手を出してはいけません。キーをよく見ていただければわかるのですが "=" キーがありません。普通の電卓は 1 + 1 の計算をするのに "1" "+" "1" "=" の順にキーを押すと "2" と画面に出るのですが、HPの電卓は "1" "ENTER" "1" "+" と押すことで "2" が表示されるのです。これを知らないとまったく役に立たないことになります。

この式の入力手順は逆ポーランド記法と呼ばれる式の表現で、値を順にスタックしておいて、そのスタック上の値に対して演算を行うという順序で計算を行います。これはコンピュータで計算を行う時によく使われている手法で、コンパイラを書いたことがあれば必ず勉強します。

逆ポーランド記法

特徴といえば数式の括弧を必要としないように並べ替えることです。この並べかえを含めて通常の式を変換する手順は yacc/lex を覚えるのにだいたいやってみる課題です。

そういえば大学時代にも、この電卓を「ちょっと貸してくれ」という友人がいても、大部分はすぐに「わかんねぇ」と返してくるものでした。実は逆ポーランド記法は日本語との相性が良くて、"1" "ENTER" "1" "+" は「"1" "に" "1" を"足す"」と言いながら入力すれば良いわけです。予め書かれている式を使うには向きませんが、頭の中でやりたい操作を考えながら打ち込むには実に適していました。

それとよく出来ているなぁと思ったのは、表示する有効桁を設定できることでした。普通の電卓は表示できる一杯まで結果を出してくるのですが、予め有効桁数を設定しておくと、内部表現では細かく計算してあっても、表示に関してはあくまで有効桁で出してくれるんです。科学で扱う数字はだいたいにおいて実測値を使うので、これはありがたい機能でした。

もっとも有効桁って何?というのをきちんと理解しておかないといけないのですが、これは理系であれば必須の知識ですからね。とはいえ四則演算の有効桁は習ったかもしれませんが、関数を通した時の有効桁は意外に難しく、実習の時に「pHの有効桁って何なのよ!」と大いに話題になった記憶があります。

こうして数字に対して敏感になることも大学での勉強のひとつではあったんでしょうね。似ているけどちょっと違う話としては、計算機の分野でも丸め誤差であるとか、誤差の累積といったことを習いましたよね。今でこそデジタルの精度が上がったので目立たなくなりましたが、数字というものは実際の現象から、どのようにして手に入れたかによって、いろいろな飾りがついたものなので、その「真の姿」を見失ってはいけません。

ヘッダ画像は、以下のものを使いました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hp15c.jpg
By en:User:Hpgene - http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Hp15c.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1236819

#電卓 #HP #HP15C #HP11C #プログラム電卓 #逆ポーランド記法 #復刻

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