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MSX - ゲームの普及に一役買った世界の統一規格

1983年といえばPC-9801E/Fも登場し16ビットの足音が聞こえてきた時代です。8ビット機初期のPCもAppleはIIe、NECはPC-8801mkIIやPC-6601、シャープはMZ-2200そしてX1、日立はL3Mark5、東芝もパソピア7と世代交代した新機種を投入し、しのぎを削っていました。このような中でMSXという規格がアスキーとマイクロソフトから提唱されました。

この時期になると、元々計算機に関わりのあった会社だけではなく、家電メーカーや事務機機器メーカーもPCを発売するようになっていました。多くの選択肢があるのは好ましいことなのですが、ハードウェア構成もバラバラで、機種ごとにゲームを始めソフトを移植しなければなりません。これは特に低価格帯のPCにとってはなかなか厳しいことで、せっかく安価なPCが登場しても使えるソフト(特に著名なゲーム)が殆どないということもありました。

まだゲーム向けの専用機がほぼ無かった時代、低価格帯PCの統一規格ができたことにより、さらに多くのメーカーが参入し、既にPCを出していた一部のメーカーも低価格帯のPCはMSXに切り替えて、普及に一役買いました。

基本的にはハードウェアをアクセスするための機能をMSX-BASICに取り込み、ハードウェア自身も特にビデオ周りを統一することで、MSX規格のソフトはどのMSXでも動かせるようにしました。細かいところではコネクタ類を統一したことで、周辺機器も互換性があるようになったことです。もちろんメーカー独自の拡張機能も許されてはいましたが、多くの拡張機能は他のメーカーでも動くものでした。

少し内部に立ち入りましょう。まずCPUはZ-80A(後にZ-80上位互換の16ビットCPUであるR800も使われました)。これでバイナリレベルは互換になります。メモリはROM32KとRAM8Kが最小構成で、16Kバイト単位のスロットを導入し、これを巧妙にバンク切り替えをして使うようにしました。そしてビデオは TMS9918A で標準化され家庭用テレビも使うことが出来、256✕192✕16色の表示が行えました。特徴的なのがスプライト機能で256種類までの8✕8の自由なパターンを画面上の好きな位置に表示することができ、ゲームなどに威力を発揮しました。ビデオRAMはVDP側で持ち、CPUからはVDPへ命令を送ることで画面情報をやりとりする形です。サウンドはAY-3-8910でいわゆるゲーセンで聞こえていたような音であればお任せです。

TMS9918 - VDP

Programmable Sound Generator - AY-3-8910

拡張スロットには大部分の信号線が接続されていたので、RAMだけではなくゲームなどのROMやデバイスを接続することも出来ました。デバイスを使うときなどの為にカセットにあるROMにBASICの拡張命令を置く仕組みも用意されていました。

ハードウェアを扱うサブルーチンの多くはBASICからだけではなくBIOSコールとして整理されていて直接操作して互換性を損なうことのないように考えられていました。

8ビットPCとしての集大成を示す規格で、後は各メーカーが素直に実装するもよし、この上に独自の特徴を出していくのも良しで、実にいろいろなPCが発売されました。規格自身は時代に合わせて、MSX2、MSX2+、MSXTurboRと進化していきましたが、途中でマイクロソフトが撤退しヨーロッパでの販売も出来なくなったようで、ゲームの中心はファミコンなどのゲームコンソールに移り消滅していきました。

代表的なMSX機であるとか、MSX-BASICの特徴についてはあらためてまとめてみようと思います。

たくさんあったゲームに心残りの人も多く、未だに多くのエミュがあって、懐かしいゲームを楽しむこともできるようです。その後1チップMSXというものが企画されたようですが、こちらはどこに着地したのかは分からずじまいです。

最近になって MSX3 であるとか、MSX0 などというワードが Twitter で話題になっているようですが、果たしてどうなるのでしょうかね。

MSX

ヘッダ画像は、以下のものを使わせて頂きました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:MSX-Logo.svg

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