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PC-8801 - 8ビットの頂点

PC-8001の進化型であるPC-8801が発売されたのは1981年12月でした。PC-8001から2年あまりが経過していたのですが、この間にはベーシックマスターL3(1980年5月)やFM-8(1981年5月)が発売され、PC-8001のスペックもだいぶ色褪せてきました。特にグラフィックに関してはPC-8001はあくまで簡易グラフィックであり、そろそろちゃんとしたグラフィック能力が求められていました。またビジネス用途には漢字も使えるよというところも見せないとなりません(このためにもグラフィックが必要です)。

搭載しているBASICも元になるマイクロソフトのBASICがL2相当からL3相当に進化しており、こちらも追いつく必要がありました(表面上はわかりにくいですが、内部の実装はかなり変化しています)。このため必要なメモリサイズがかなり増えていて、素直に実装すると64Kのメモリ空間を圧迫してしまいます。ビデオRAMも素直に実装するとプログラムを置く場所が無くなってしまいます。

そこでPC8801では積極的にバンク切り替えを採用して、プログラムで使えるメモリ空間を確保しました。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:PC-8801MemoryMap.gif

グラフィックはテキスト画面にオーバーレイできる640✕200✕8色(または640✕400✕2色)で、もちろん1ドットづつ自由に色指定ができます。これでようやくまともなグラフィック操作ができるようになりました。とはいえ特別なハードウェア支援があったわけではないので、速度はかなり犠牲になりました。

BASICはN88-BASICになり、これは後継のPC9801に於いてもN88-BASIC(86)として引き継がれるなど、NECパソコンにおける基本的なOSとしての地位を得ました。もちろんPC8001との互換性にも配慮されていてN-BASICのROMも積まれており、モードを切り替えることでPC8001のソフトも動かすことができました。

N88-BASIC

また漢字ROMも追加することが出来て640✕400のグラフィックモードでは40文字✕25行の漢字表示を行えるので、入力方法や速度の意味では厳しいものがありますが、漢字が使えるんだよというところは見せることができました。もっとも640✕400を使うには、とてもお高い高精度ディスプレイが必要になるので、無印PC8801の時代にはあまり使われなかった気がします。拡張スロットも用意され、サードパーティからいろいろなカードが出ただけではなく、独自に回路を組んで使うこともできました。

PC-8801シリーズ

このように万全のハードウェアを用意したことで、ややお高めの価格設定となったことと、貧弱なCPUで広大なビデオメモリを扱うので、リアルタイム性の高いゲームが幅を利かせていたホーム、ホビー用途には不向きでPC8801発表の2ヶ月後である1981年11月にはPC6001が発売され、ゲームはそちらにお任せという目論見だったようです。

しかしながらPC6001はPC8001とはかなり設計思想が異なっており、PC8001のゲームを動かすには苦労が多く、高い能力を持つPC8801だからこそのゲームとして比較的リアルタイム性の低いゲームが次々と登場し、こちらはこちらで進化を続けていったようです。PC8001で使えたPCG(プログラマブル・キャラクタ・ジェネレータ)もPC8801で使えるようになりましたし、MIDIやPSG(プログラマブル・サウンド・ジェネレータ)も追加できるようになって、PC8801もすっかりゲームマシンになりました。

またCP/Mも当初から使えたようですが、後には8086拡張カードも登場し、PC9801との互換性は無かったもののMS-DOSも動かせたようです。

PC-8801発売の翌年である1982年10月にはPC9801(無印)が発売されたものの、さらにお高い価格設定だったのと、CPUが16ビットに変わったためソフトが揃うのに時間がかかり、当初は漢字が使えるCP/M-86またはMS-DOS機として使われPC-8801と棲み分けがなされていたようです。さらに翌年の1984年10月にはPC9801も後継のPC9801E/Fが発売され、フロッピーディスクが標準的なものとなり、PC8801も後継のPC8801mkIIを用意しPC6001系との隙間にターゲットを移します。実はここが王道だったようで、実に多くのゲームが開発され、それなりの台数が売れたようです。さらにおよそ1年後にはPC8801mkIIはSR/TR/FR/MRと多彩な展開をするようになり、今まで拡張が必要な機能を最初から用意するなどして進化を続けました。

PC-8801    17万台
PC-8801mkII  17万台
PC-8801mkIISR 16万台
(なお、PC8001はWikiによれば25万台とある)

https://kapi80123.livedoor.blog/archives/2108578.html より

さらにPC8801FH/MHシリーズを出した後も、いくつかの新機種が出ましたが、最終的にはPC98シリーズとのハイブリッドな機種を経て16ビットへ移行し、使命を終えたようです。今でも当時のゲームに愛着のある人が多いようで、多くのエミュレータ実装が見つかります。

PC-8800シリーズ

ヘッダ画像は、以下のものを使わせて頂きました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NEC_PC-8801_with_keyboard.jpg

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