見出し画像

MZ-80K - 日本初になり損ねたパソコン

最初のパソコンと呼ばれるアメリカで発売されたパソコン御三家の話は

パソコン御三家 - Apple、PETとTRS-80

で書いたのですが、この頃は日本ではまだマイコンボードしかありませんでした。あくまでマイコンというハードウェアをいじるもので、その上でゲームをするとか計算をするというソフトウェアはおまけみたいなものだったのです。

しかしながら、パソコンというマーケットが認知されると日本でも恐る恐るではありますが、パソコンという世界に乗り出そうという機運が高まりました。これに合わせてパソコンを扱う雑誌も次々と創刊されました。ちょっと時系列に並べてみたいと思います。

  • 1976年 8月 - TK-80発売

  • 1976年10月 - I/O 創刊

  • 1977年 6月 - Apple][発売、ASCII 創刊

  • 1977年 8月 - TRS-80発売(出荷は11月から)

  • 1977年10月 - PET2001発売(日本では翌年2月)

  • 1977年11月 - TK-80BS発売

  • 1978年 1月 - RAM 創刊

  • 1978年 5月 - MZ-40K発売

  • 1978年 9月 - ベーシックマスター発売

  • 1978年12月 - MZ-80K出荷開始

  • 1979年 4月 - COMPO/BS発売

  • 1979年 5月 - PC-8001発表(発売は同年9月)

私がApple][を買ったのが1979年の8月ですから、この直後ということになります。日本製のパソコンが出たもののグラフィックもショボいしディスクもしばらく使えそうにないと思ったのが決め手だったような気がします。何せいきなり48KメモリにDISK][もでしたから。

マイコンの時代はNECの圧倒的な力に日立が何とか対抗しているという図式でしたが、シャープも密かにこのマーケットを狙っていたようです。最初にMZ-40Kというマイコンボードを出しましたが、これはTK-80の成功を見て、より安価にどちらかというと教育用として設計されたもののようです。ただそれだけではなくてTK-80BSの成功を見て、ホビーパソコンの分野を目指すための土台として作られたのかもしれません。

MZ-40K

MZ-80Kは、パソコンという形は見えていたものの、まだキットという形で販売されていました。キットといっても、キーボードのみ組み立てる必要があるだけでカセットテープレコーダ、ディスプレイを含んだケースもついていました。もっともこのキーボードが悪評の高い方眼配列のスイッチでした(それでもPETよりはマシ)。完成品としなかったのは、あくまで部品であり製品として流通させる用意が整っていないためだったのかもしれません(その後、完成品としても売られるようになりました)。

特徴としてはROM(に入った高級言語)を持たない(モニタROMはさすがに入っています)「クリーンコンピュータ」というのがあり、必要なプログラムは本体に備えられている「カセットテープレコーダから簡単に読み出して使えますよ」ということだったのですが、これは急いで販売開始するためにROMを焼いている時間を節約したというか、開発中のBASICの品質に自信がなくて、バグがあった場合の改修を考えると、そもそもROMなんか無くてもいいのではないかということになったからなのかもしれません。それとも他社がより高性能なBASICをブツけてきてもバージョンアップが容易なので、そういう形で対抗しようと目論んでいたのかもしれません。

デザインであるとか使い勝手に関しては、PETをお手本(駄目なキーボードも含めて)としたところが感じられます。モノクロ画面ですし、グラフィックも図形文字を使うものだけでした。速度もクロックがZ-80で2MHzなので、PET(6502の1MHz)と同じようなものです(ちなみにTK-80BSが8080で2MHz)。キットに含まれたRAMは20K、48Kまで増設できたようです。

残念ながら直前に日立がベーシックマスターを発売したので、日本初のパソコンの栄誉は逃してしまいましたが、ベーシックマスターが68系のCPUを搭載していたのに対し、TK-80BSで馴染みのある80系であることも相まって、評判は上々だった覚えがあります。

ちなみに80系特有のVRAMとの競合は「気にしない」という解決策を取っていたので、CPUは全力で動くものの注意しないと画面が乱れるという欠点はありました。この話はPC-8001が出てから、より議論にはなった気がします。

結局、ユーザからみて「クリーンコンピュータ」が良かったのかというと、電源を入れるたびにBASICをテープから読み込む必要があったものの装置は本体に内蔵されているので、そんなには手間ではなかったようですが、当初は(CP/Mなどの)BASIC以外のシステムを使うこともなくメリットは感じられていなかったと思います。やはりクリーンコンピュータが成り立つのはディスクが普及してからですね。

ベーシックマスターに続いて、このMZが出たことで、横綱相撲をしていたNECが慌ててCOMPO/BSを出し、PC-8001の発表を急いだことを考えると、時代は明らかにマイコンボードからパソコンへの道を確実に歩んでいたのだと思います。

MZ-80

【シャープ】 MZ-80Kパーソナルコンピュータ


ヘッダ写真は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mz80k.jpg


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?