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夜は好きですか?

夜は好きです。あなたは気まぐれに私の心の扉をノックした。

あの時以来私はそっと毎夜、あなた優しい言葉を待つようになってしまいました。

あなたは毎夜、違う花を持ってやって来てその日に出会った少し変わった子供のような大人達の話をまるで音楽のような美しい声で、病院の5階の窓の手すりに腰掛けて、私に面白く語ってくれる。

私達はお互いの姿を見せずにカーテン越しに気配を感じ、私の笑うのをあなたは嬉しそうに声が弾むのを優しい夜の光が見守ってくれている。
そんな二人の物語です。
「今日ね、歯医者の入り口でうずくまったおじさんがいたの。
てっきり歯が痛くて、我慢できなくてなったのかな?って心配していたら、違うの。
そのおじさんったら、四つ葉のクローバーを見つけて写真撮ってたの。

私はその光景を想像した。微笑ましいおかしくてちょっと笑えた。
「ね?おかしいでしょ?」

あなたは満足気に私を見て微笑んで、今度は二人で静かに笑った。
なんとなく幸せな気分でベッドに横になる。
あなたは
「また来るね。」
と、静かに月を見上げる。
「おやすみなさい」
私はあなたに告げて目を閉じた。


おやすみなさい。

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