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公的年金論議を軽視した企業年金論議は危険

確定拠出年金の記事を見かけました。企業年金・個人年金部会の議論が進められているようです。
今日は、企業年金・個人年金についての私の考えを披露させて頂きたいと思います。

考え方のポイント
・生活者年金研究所(マガジン名)を標榜する立場からは、ベースとして、公的年金の拡充を一義的に考えています。
もちろん、公的年金と企業年金を対立的に考えているわけではありません。

企業年金は約1700万人、個人年金(iDeCo)についも170万人を超えたとのことで必ずしも一部高所得者のためのものではなく、無関心ではいられません。また、その給付削減、権利の侵害には当然反対する考えであります。

・しかしながら、厚生年金基金あるいは確定給付企業年金(DB)まではいわゆる一般的に考える年金と言えるでしょうが、確定拠出企業年金(DC)、特に、個人年金については、支払方法が年金に近い形の私的(自己責任)の積立金でしかありません。
この自己責任を軽く思わせるためか各種の税制面での優遇措置をまぶしています。

・また、確定給付企業年金についても、リスク分担であったり、バイアウト(外部への売却)により、企業リスクの回避、受給者・加入者の権利を侵害する方向にあります。この点には当然、反対の立場です。

この間、企業年金・個人年金部会においては昨年12月の「議論の整理」以降も、何回もの部会が開催されておりますが、案の定、主に個人年金の枠拡大の議論が中心で、企業年金の受給権保護については無視・軽視されてきています。

また、こうした企業年金の議論の際には、今後の公的年金について少子高齢化等により給付水準が低下していくとの前提で、企業年金・個人年金の重要性を説いておられます。昨年の2000万円問題と同じ発想と言えるでしょう。

企業年金について議論・改善する点は多いですが、今日は
 受給権保護を本気で検討頂きたい
という点に留めておきます。
今日の本題は、年金議論が全体として、
公的年金があたかも低下していくことは当たり前のこと、あるいは自然現象に近いものとでも言うのか、公的年金の改善を無視して進められていることに警鐘を発したい
との思いからまとめたものである。

昨年末にまとめられた企業年金・個人年金部会の「議論の整理」の資料から一部抜粋し次に掲げました。
https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/000616405.pdf

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これを私なりに解釈した内容が次のとおりになります。

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この間の流れは、
・公的年金から企業年金へ
・厚年基金は解散・代行返上によりDB・DCへ移行
・企業年金の中では、DBからDCへウエイト
・企業年金(個人型)が企業とは関係ない個人にも拡大
・そしてますます個人年金の拡大を図っていく

そして、これは、
企業負担から加入者負担、企業責任から加入者の自己責任へとの流れであります。
俯瞰的に眺めれば、この間の流れは明らかであり、また今後のこの方向性がいかに危険なものか案じられます。

企業年金自体についての議論については、その給付削減・権利侵害については反対との立場では関わっていきたいと思いますが、今後も主には公的年金の改革・充実の観点から企業年金論議をみていきたいと考えております。(先に掲げた図もこうした思いからまとめたものです)

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