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賃金上昇率は物価上昇率に比べなぜ低い

前回の記事で
そもそも、賃金上昇率が低い(物価上昇率>賃金上昇率)のは、なぜか?   
  参照記事→ https://note.com/kazusana/n/n29bd25ace460

と予告しましたが、今日はその点を
「平成28年度法人企業統計調査結果と調査から見た企業動向(財務総合政策研究所 若松氏執筆)」を参考に見てみたいと思います。​

https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201711/201711c.pdf

尚、その出所となっている統計調査の30年度結果を合わせて掲載しておきます。
  30年度財務省法人企業統計調査
   https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h30.pdf

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これらによれば、平成28年度結果は、
経常利益及び利益剰余金(内部留保)が過去最高額を更新

労働分配率は足元低下
 平成24年度以降の付加価値額の急速な増加に対し、人件費の増加が
 追いついていないことから、労働分配率が低下していることがわかります。

これらを踏まえると、企業が「経常利益」の増加により「利益剰余金(内部留保)を積み上げる一方で、国内設備投資に慎重になっている構図が窺えます。

と纏められています。
そして、平成30年度の調査結果もその方向性は変わりありません。

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さて、それでは、こうした資料を参考に見ていきます。(上記資料はあくまでもデータとして参考にさせていただいたもので、以下は全て私の主張です)

そもそも、賃金上昇率が低い(物価上昇率>賃金上昇率)のは、なぜか?

この間ずっと好景気と言われながら、生活実感としては、全くそれが感じられない状況が続いていました。
戦後最長の好景気と言われてたものがその後修正されましたが、企業収益はこの間上昇を続け、内部留保は平成30年度には463兆円と、凄まじいペースで積み上げられています。

内部留保の積み上げは、設備投資には慎重になっているためで余剰の増加は当然のこと、との声も聞こえてきます。

しかし、そもそも内部留保の元になる経常利益、その増加要因は何なのでしょうか。労働分配率の表と絡めて見ればこの間の経過は明らかです。つまり、経常利益の増加の一因として労働分配率の低下、すなわち賃金を低く抑えられている実態を見ることができます。

手口は、ご承知のとおり様々の方法で。非正規社員の増加、正社員の労働条件悪化等々、同一労働同一賃金を言われながらほんの一部を除き認めない最高裁の判断がそれを補強。
企業の内部留保がそうした労働者から搾り取って積み上げられたものだと言うことを、はっきり確認しておきたいと思います。

これに対して、需要供給による賃金決定、それを正当化する資本側の論理もあるでしょう。しかし、それは対等な立場を前提としたものではありません。強者の論理です。強者の醜い論理です。

賃金を抑えること、労働者の生活を抑えることが、国民経済的にもそしてそれが経営的にも良いことではありません。現在の言うならば負の循環から正の循環へと切り替えたいものです。
コロナ禍で諸々の変化球も飛んで来そうですが、原則論として、次々回くらいにその辺りも触れてみたいと考えています。


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