見出し画像

「アルジェの戦い」

 アルジェリアで現職のブーテフリカ大統領の4選に反対するデモが広がった。そして、ついに同大統領が出馬を取りやめた。アルジェリア情勢の展開は、予断を許さない。但し明らかなのは、フランスからの独立以来、この国を支配してきた軍や治安当局の上層部による権力の独占に対する国民の不満が高まっているという事実である。アルジェリアは百万人ともいわれる人的犠牲を払って独立戦争を戦い抜いた。その壮絶な戦いの様子は、1966年に公開された『アルジェの戦い』という映画を通じて追体験できる。この映画ではカスバと呼ばれる旧市街に立てこもる独立派と弾圧するフランス軍の息詰まる戦いが迫真のリアリティで描かれている。この映画の中で独立運動の指導者たちが、現状と将来を語る場面がある。その中での一人の発言が心に残っている。それは、「独立運動を起こすのは難しい、それに勝つのは、もっと難しい。しかし一番難しいのは勝利を収めてからだ」という内容の言葉である。

 アルジェリアの新政権も、独立後に腐敗臭を放つようになって現在に至っている。なぜ、こうも簡単に、あれだけ勇敢に独立運動を戦った人々は腐敗してしまうのだろう。実は、こうした例はアルジェリアに限られない。激しい独立運動を戦った国々の大半で新政権は腐敗してしまう。

 なぜだろうか。それは、旧宗主国の弾圧が厳しれば厳しいほど、独立戦争が激しければ激しいほど、独立派は中央集権的な組織とならざるを得ない。どうしても指導者に権力を集中しがちである。弾圧下の独立運動には悠長に民主的に議論を尽くしている余裕はない。その結果、こうした組織が権力を掌握する段階では、野党的な勢力は育っていないし、議論の伝統なども存在しない。絶対権力は絶対的に腐敗するというが、大半の元民族解放運動は腐敗してしまう。アルジェリアでのデモの報道を見ての思いである。

冒頭の地図は以下による。
https://www.drivingdirectionsandmaps.com/wp-content/uploads/country-locator/ag-locator-map.gif

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?