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アフガニスタンのトルコ軍

 2002年に治安の一時的に改善していたアフガニスタンを訪問した。といっても、首都カブールのみであったが。その首都で赤地に白い三日月と星の国旗を掲げたトルコ軍部隊を見て驚いた。対テロ戦争を戦うアメリカ軍を支援して派兵したNATO(北大西洋条約機構)各国軍の一部だった。こんな遠くにもトルコ軍が来ているのかと感慨深かった。NATOの一員として義務の履行とはいえ義理堅い国だと思った。

 ところが最近は、世界各地でトルコ軍が「活躍」している。注目されるのがアフリカの角のソマリアである。ここにトルコは基地を設け、ソマリア軍の訓練にあたっている。またトルコは、平行して民生部門への援助も行っている。

    そして隣国のイラクとシリアにトルコ軍が介入している。イラクへの介入は、トルコ政府と対立するPKK(クルディスターン労働党)のゲリラを追っての動きのようだ。シリアにおいても、やはりクルド人勢力の拡大を懸念が介入の理由のようだ。

   さらにペルシア湾岸の小国だがガス大国のカタールに派兵している。カタールとサウジアラビアが対立しているので、これでトルコはサウジアラビアを敵に回した観がある。カタールとトルコはイスラム世界に広く支持者を持つムスリム同胞団という組織を支援している。このムスリム同胞団が「アラブの春」の後の選挙で勝利を収め、エジプトで権力を握った。しかし、軍のクーデターで権力から追われた。この軍をサウジアラビアが支援している。

 こうしたトルコ軍の各地での活動から判断すると、トルコ軍の諸外国での活動の背景にあるのは、義理堅さのみではないようだ。イスラム世界の盟主として役割を果たしたいというトルコのエルドアン大統領の野心があるようだ。特にイスラムの聖地のメッカとメディナのあるサウジアラビアへの対抗意識が透けて見える。それがサウジアラビア人のジャーナリストのジャマール・カショギのイスタンブールでの殺害事件の政治的な決着を拒否している理由の一端だろう。サウジアラビアのイスラム世界のリーダーとしての顔に泥を塗る狙いもあるのだろうか。エルドアンは、オスマン帝国期以来の新たなスルタン的な地位を目指しているのだろうか。


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