ホルムズ海峡

イランからアラブ産油国へのメッセージ

ペルシア湾岸地域で緊張が高まると、ホルムズ海峡の封鎖が論じられることが多い。この海峡の封鎖の可能性というのは1980年代のイラン・イラク戦争の頃から論じられてきた。その際にも、つまりホルムズ海峡が封鎖された場合にも石油の輸出が続けられるようにサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、着々と手を打って来た。

サウジアラビアの場合は、ペルシア湾岸の産油地帯から紅海側に至るパイプラインを建設した。同国を東西に横断するパイプラインを使って、ホルムズ海峡を通らずとも紅海の港から石油を輸出する体制を整えている。アラブ首長国連邦の場合は、ホルムズ海峡の外に位置してアラビア海に面している同国のフジャイラまでパイプラインを建設した。同海峡を迂回しても石油が輸出できるようにしている。

さて5月にアメリカがペルシア湾岸へ航空母艦部隊とB52戦略爆撃機の派遣を発表した。続いて1500 名の陸上兵力の増派も決定した。戦争を予感させる動きであった。現地では緊張が高まった。その現地で二件の事件が発生した。一つは、フジャイラでタンカーが何者かによる攻撃を受けて破損した。またサウジアラビアの東西横断パイプラインの送油施設がドローンによる攻撃を受けて破損した。こちらの方は、イエメンでイランの支援を受けているフ―シー派が攻撃を発表している。

攻撃を受けた二か所は、どちらもホルムズ海峡の迂回路である。あるイスラエルの研究者は、これをイランからの以下のようなメッセージであると解説している。「ホルムズ海峡が封鎖される際には、ホルムズ迂回路も無事ではないだろう」との通告である。説得力のある推測である。

写真は、ホルムズ海峡 
同海峡を通過するタンカーより撮影
2010年1月7日 早朝
写真提供 帝京平成大学 須藤繁教授

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