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80年代イーストベイ・パンクシーンが生み出したフェミニスト・ラップ・ユニット、Yeastie Girlz

Green Dayといえば、誰もが知る有名なアメリカのパンクバンドで、今や「超」の付くセレブですが、彼らを輩出した80年代のイーストベイ・パンクシーンというものがあります。特に、カリフォルニア、バークレイの924 Gilman Streetに位置するギルマンというアートスペースで活躍したバンドは、後年にほとんど伝説的な扱いとなっています。後にRancidを結成するメンバーがいたスカパンクバンドの雄、Operatio Ivyを筆頭に、Crimshrine、Stikky、Jawbreakerなど、メインストリートから外れたユニークなバンドがたくさんいました。

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ギルマンのバンドを収録した当時のコンピにYeastie Girlzという名前があります。ネットで調べると”フェミニスト・ラップ・トリオ”と紹介されていて、音源ではアカペラでラップを披露しています。すごく気になる存在でしたが、情報が少なく自分の中で謎の存在でありました。そんなYeastie Girlzの元メンバーの一人、Cammie Toloui(写真家、ラッパー)がインタビューに応える記事(2019年)があり面白かったので、内容を要約して紹介したいと思います。

元記事(記者:Serena Mitchell)
https://advantagesofage.com/.../the-yeastie-girlz-interview/

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1980年代半ば、メンバーのCammie Tolouiはギルマンストリートのボランティアスタッフでした。この時、Cammieは高校を卒業したばかりの18歳。ある時、ギルマンで大きな音楽イベントが開催されたのですが、Cammieは参加するバンドがほとんど男たちばかりであることに対して疑問を持ちました。友人のジェーン、ジョイスたちと「これは何とかしなければいけない」と話し合い、その場で即興の歌詞を書いて、勇気を出してステージに飛び上がり「新しい曲を書いたから聴いて欲しい」とマイクを掴んで叫んだのです。衝動的な行為だったので、楽器もありません。3人は超ローテクかつDIYな、アカペラという手法でラップで挑んだのです。

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その後も3人は遊び感覚でクラブで歌うようになりましたが、MAXIMUM ROCKNROLL(当時のUSパンクシーンで強大な影響力を持っていたジンで、ギルマンストリートの創設にも関わっている)編集部に持ちかけられて、7inchのレコードをリリースすることになりました。新しい曲もどんどん書き、トリオの名前もYeastie Girlzとしました。1986年当時、ラップ業界ではBeastie Boysがデビューアルバムをリリースし、爆発的な人気を得ていました。そんな彼らの曲を”Rapey”だと感じていた彼女たちは、「私たちは”Yeastie Girlz”だ!」と宣言しました(性感染症の、イースト感染症にかけていると思われる)。

彼女たちの書く曲は、字面だけ見るとどぎついのですが、生理のこと、性感染症のこと、●●●●●●●のことなど、女性が自分自身を守るためのメッセージをステージ上から放ちました。時には、膣鏡を手に入れて、オーディエンスの中の女性たちにその使い方を説明することもありました。パンクのライブなので、観客はほとんど男性ですが、男たちが恥ずかしがることもお構いなく、彼女たちは歌いました。カセットテープに赤く染めたタンポンを入れて販売したり、タンポンアプリケーターを楽器にして”アイアンマン”を演奏する方法を考えたり、パフォーマンスもユニークでした。

その後、Yaestie Girlzはヨーロッパツアーにも出かけましたが、メンバーの住む場所が変わり、ラップ以外に集中することができたため、1980年代後半に解散したようです。しかし、その後もConsolidatedというバンドのアルバムに参加したり、メンバーで集まって曲を作ったり、歌ったりということをしているようです。「今度、3人で集まって更年期障害の歌を作る」とも言っています。一方で、Pussy Riotのような新しいフェミニストバンドが登場していることにも触れ、彼女たちへの敬意を表しつつ、「もう世界はYeastie Girlz」を必要としていない」と、ポジティブに語ります。最後に、現代を生きる18歳の新世代たちに「GO GIRLS!」と、Cammieはメッセージを送ります。

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マイク一本で戦うという姿勢、DIY精神あふれるアイデア、パフォーマンス、音楽、すべてがめちゃくちゃにカッコイイです。また、ネガティブな反応も少なからずあったでしょうか、彼女たちのような存在を生み出した、オープンマインドなイートストベイ・パンクシーンも素晴らしいですね。

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