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通販新聞<アドネットの闇>記事へのコメント

「通販新聞」でアドネットワーク広告(レコメンドウィジェット広告)の問題点について提起した記事が出た。

大阪府警、ASPを捜査か<アドネットの闇> 重くなるウェブ広告関与の「代償」
https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=5648

私は上記記事に全く関与していないが、感じるところがいくつかあった。私が考えたことを書く。

通販新聞の記事論旨について

今回の、通販新聞の記事論旨については概ね同意する。現在の「アドネットワーク広告(レコメンドウィジェット広告)」には、違法なものが多い、という認識だ。

これは現在に始まったことではなく、私の観測範囲では、少なくとも2年半ほど前には、現状と同程度以上の違法な広告が存在した。

「アドネットワーク広告」における違法な広告の比率は、私の調べでは全体の26.4%、薬機法関連商材を母数にすると77.2%だ。
※調査対象期間は2019年1月~2019年8月

「バブルに沸くウェブ広告業界」について

今回の記事では、「バブルに沸くウェブ広告業界」として「3年で売上高100億」との記述がある。要するに、「ウェブ広告業界なら、商売を始めて3年で売上100億円に到達できる」という意味だろう。

それは、おそらく事実だ。

例を挙げる。「アドネットワーク広告」の運営社であり、今回の通販新聞に名前も出ているログリー株式会社の2020年3月期決算公告を見ると、筆頭取引先として「株式会社レギネ」が記述されている。

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引用元:ログリー株式会社 2020年3月期 有価証券報告書 18ページ目
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6579/yuho_pdf/S100J4XQ/00.pdf

この株式会社レギネは、2019年2月に設立された会社だ。その会社が、2020年3月までの一年間で4.8億円を売り上げている。ログリー株式会社の有価証券報告書を信じるとすれば、ログリー株式会社と資本関係や人的関係も無い。

そういう設立されたばかりの会社が、いきなり4.8億円を売り上げ、上場企業の筆頭取引先となった。このように「アドネットワーク広告業界」というのは、儲かるパターンを見つけることができれば、大きく稼ぐことができる世界だ。

「新たなメディア支配の構図」について

Webメディアという商売は儲からない。参入障壁が低いからだ。だから、どのWebメディア運営会社も疲弊している。

そこに、貴重な売上をもたらしてくれるのが「アドネットワーク広告」だ。Webメディアから見れば売上の源泉だから、この広告を外すことは、商売の存続を考えれば、事実上できない。「支配」という言葉を当てはめるのは一定の妥当性があるかもしれない。

しかし、Webメディア側に矜持があるならば、「違法行為をしないと商売が存続できないのなら、その商売から撤退する」という選択はできるはずだ。

とても苦しい選択だと思うが、その選択肢に向き合い、違法行為をやめるために商売をやめる人は、「アドネットワーク広告業界」から退場できる。一方、違法行為を続ける人は生き残る。

そう考えると、「支配」という言葉は、やや行き過ぎと思う。Webメディアは、商売をやめる、という選択肢がある。その意味では、Webメディアもこの構造に能動的な協力をしている。その点では、支配という言葉は、あまりにもWebメディア側の矜持やモラルを軽く見すぎているように思う。

また、やや蛇足気味に言及すると、現在の「アドネットワーク広告業界」では、違法行為を続けるタイプの人ばかりが多く残り、濃縮され続けているのではないだろうか、という考えも浮かぶ。

その他の些末なこと

概ね言いたいことは以上だが、この通販新聞の記事にはいくつかの不正確な点や、曖昧なところがある感じる。些末なことだが、以下へ2点のことについて書く。

1.「アドネットワーク広告」「アドネット」との表現

この通販新聞の記事では、「アドネットワーク広告」や「アドネット」との記述がある。それらの言葉の意味するところはとても曖昧なので、適切な表現ではないように感じる。

インターネット広告業界にはよくあることだが、「アドネットワーク広告」という言葉には、私が知る限り、明確な定義がない。今回の記事内では「AkaNe by GMO」「UZOU by Speee」「Zucks」「Taboola」「popIn」「logly(ログリー)」が挙げられているので、それらの会社が提供している広告を指して「アドネットワーク広告」と呼んでいるのだと思う。

「アドネットワーク広告」という言葉は、それらの広告を指すものとして使われることが多いと思うが、そうでない意味で使われることも少なくない。そのため、私は「アドネットワーク広告」という言葉は使わず、「レコメンドウィジェット広告」という言葉を使うことが多い。

また、通販新聞の記事では、「アドネットワーク広告」を省略して「アドネット」との略称を使っている。この略称は、私は使われているのを見たことがない。かなり違和感を感じた。

2.ASPの意味を取り違えている?

今回の通販新聞の記事では、記事タイトルに「ASPを捜査か」との記述がなされている。ASPとは、一般的には「アフィリエイトサービスプロバイダー」を指す。

しかしながら、今回の記事内にはASPにあたる会社が登場しない。「アドネットワーク広告運営会社」のことを「ASP」と呼んでいるように感じる。

アフィリエイトサービスプロバイダーにも悪い会社はあると思うが、今の書き方だと、ASP業界は、とばっちりを受ける形になっている。本当にASPを指しているのか、「アドネットワーク広告運営会社」と取り違えているのか、言及頂けるとありがたい。

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