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お菓子が教えてくれたこと

人と関わらずに生きていけたらいいのにな。

昔のぼくは、そう思っていたみたい。

何がそうさせたのか、これといった原因は分からない。

もしかしたらDNAにそう書き込まれていたのかもしれないし、怯えながら過ごしていた学生時代がそうさせたのかもしれない。

何か“問題”があると、“原因”を探しにいって、最速で解決したくなってしまうけれど、”問題”があることさえも、忘れてしまうほど美しいものがきっとどこかにある。

お菓子とぼく

高校1年生の秋。

勇気を出して自分に連絡先を聞いてくれた一人の女の子がいた。

その時、彼女のガラケーを差し出す手は震えていた。
連絡先が聞けたものの、緊張が解けずに顔がこわばっていていて、「嬉しい」という言葉と表情がまったく噛み合っていなかったのを覚えている。
当時のぼくは「変なの~」と思っていた。

でも、心の中では、彼女が差し出してくれた”手”が、とても嬉しかった。

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その気持ちに応えたくて、何かお返ししたかったけれど、その時はその人の多くを知らなかった。

知っていたのは、歌手のmiwaが好きっていうことと、スイーツが好きっていうことくらい。

初めはmiwaの歌をカバーしてみようかと思ったが、高音すぎて無理だった。

自分はmiwaにはなれない。でも、スイーツなら作れるかもしれないと思って、家にあった母のレシピ本を読み漁った。

当時高校生の自分が持っていたお金は、数千円。自分が持っているカードの中で、必死に作戦を考えていたと思う。

結局、その人の誕生日にブルーベリータルトを作ったのが最初のお菓子作りだった気がする。

誕生日当日、「召し上がれ」とすまし顔で出すものの、心の中ではドキドキが止まらない。

フォークを口へ運んだ後、その反応は、目を1.5倍くらいに見開いた状態での、「おいしい!」だった。

正直、「お菓子」にこんなパワーがあると思っていなかったから、感動させられたのは、こっちのほうだった。

自分がやったことは、レシピ本に書いてあるのを、ただひたすら忠実に再現しただけ。

こんなの誰でもできるし、才能なんていらない。たかがお菓子でしょ、と思っていた。

でも、今目の前で起きていることは、"感動"そのものだった。

「お菓子の力」を知ったぼくは、たまにお菓子をつくって学校に持っていくようになったり、大学生になると人を家に呼んでホームパーティーをしたりするようになった。

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複数人でお話することが苦手だった自分にとって、「人とつながっていたい」「自分も輪の中にいたい」という気持ちは、たくさんの苦しみを生んだ。

そんな自分にとって、ホームパーティーは、料理やお菓子を作ることに徹していればよく、かつ輪の中にもいられることに気づいた。自分の“ホーム”で人と関われることがとてもありがたかった。

今ではたくさんの素敵な人たちとつながるきっかけをつくってくれている。

1.どんな物語も一人の想いから始まる

あのブルーベリータルトがなかったら、たぶん今ぼくはお菓子を作っていないし、もしかすると人とのつながりを持つことを極端に恐れて、社会とのつながりを断っているかもしれない。ぼくが、「“あの人”に何かを届けたい」と思った、あの気持ちが生まれたことに感謝したい。そして、“あの人”は恋人、友人、家族、近所の子供…と身近なところにもいるのかもしれない。

2.「モノづくり」って尊い

最近、友人と話しているときに沸いてきたコトバ。

「ものづくりって尊いよね、自分がつくったものが“ここ”にあって、自分の手で触れることもできるし、直接渡すこともできる。目に見えない価値を届けることを仕事にしていると、この”手触り感”が自分を落ち着かせてくれる」

手作りのお菓子は“生もの”であることが多いから、作って・届ける、までのリードタイムが短い。これが人とのつながりを大切にしたい自分にとってはいい。

3.自分が大切にしたいこと

お菓子づくりを通じて、”自分が大切にしたいこと”に気づかせてもらった。「人とつながりたい」という気持ちを押し殺さずに、ちゃんと表現できたのは、一切れのブルーベリータルトがあったからかもしれない。

最後に

あなたにとっての”ブルーベリータルト”が、この世界の誰かに届いて、ちょっとだけ世界を豊かにすることを願っています。

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