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生きて死んで巡るめぐる

ひと月遡るけど
家族のようにお付き合いさせてもらっているお寺の盆踊りに参加した
各地もそうだったように、数年ぶりの開催だった

境内の真ん中にちいさな櫓(やぐら)が立ちあがり灯りが放たれる

盆踊りといえば、こどものわたしにとっては夏の祭りであったが
先祖供養、初盆おくりであったのだと改めて知る

本堂で行われた法要のあと、笛太鼓、唄が満ちてくる
こなれた装いの浴衣姿で円を組んで舞うおねえさん方
簡単そうに見えるのに、全然まねできない
くるりとまわり、足を払い手を差し返す
境内の小さな砂利が笛の合いの手のように音をたてる

100円玉で手渡される、かき氷
鮮やかな色の蜜をまるくかけて
「足りなかったら、またかけてくださいね」

きっと誰もが顔見知りなのだろう
それでも町の外からやってきたわたしも居心地よい

生きて死んで巡るめぐる、いまを舞う
二時間もあっただろうか
あっさりと円は開かれた
上気した顔で声を掛け合いお茶が配られ、みな散ってゆく

潔いおわり

櫓が解かれ、ぼんぼりの灯りがゆれる
本堂に上がる階段の下でその様を眺めながら
ゆめのようだな、と思う

おどろくような衝動も
よろこびも淋しさも
集い、巡り、ひらき散る

すべては大したことではないし
一粒一粒は、唯一のものだ

15歳の親友が「かずみ、また来てね」とハグしてくれる

何度も誘ってくれてありがとう
来てよかった
しかし、かわいいな、浴衣姿

来年は踊るよ
教えてね
浴衣も着たい
誰かに貸してもらおう

できることも
できないことも
なんでもしてみよう

踊れるうちは
いくらでも踊ろう

誰とでも
ひとりでも


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