「私たちはさよならと言った」
一九九九年の夏、雪村澪は学舎を繋ぐ渡り廊下の上で宙に浮いていた。首元に赤いリボンの付いた、半袖の白いサマーブラウスと学校指定のチェック柄のフレアスカートの裾を揺らしながら。大縄の端のスティックを持った女子生徒が声を張り上げている。
「いいよ、澪。その調子!」
雪村はわずかに汗をかきながら、縄の間をするりと抜けていく。赤い上靴のソールが渡り廊下のリノリウムの上を跳ねた。頬を上気させ、十四歳の快活な少女だけが見せる、特有の笑みを浮かべている。渡り廊下三階のアーチ状に開けた天蓋