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中編・短編小説集

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kazumaの中編・短編小説集です。
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#バナナフィッシュにうってつけの日

「バナナフィッシュのいない夏」

 ある男が浜辺の階段に腰掛けている姿を望は何度も見かけた。その男はいつも朝早くにやってきて、ちょうどきっかり七時になる前にいなくなる。海の底に引きずり込まれる貝殻のように跡形もなく姿を消し、翌日には何事もなかったかのように階段に腰掛けている。望は浜辺の遊歩道をひとりで歩いていた。学校指定の紅と白のラインの入ったジャージを、二の腕が見えるまで捲り、先を歩く犬のカノンの後を追って。早朝の遊歩道には殆どひとがおらず、すれ違うのは目深に帽子を被ったランナーばかりだ。塩気のある潮の匂い