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波は続いている

久しぶりに、海に来た。
向こうに広がる水平線。
沖合にはタンカーが何隻か佇んでいる。

空には雲がほとんどない。
日差しが強い。
波の音と、風の音に包まれる。

砂浜に、波が次々と押し寄せる。
沖にも、波の白い筋がいくつも見える。
太古の昔から、海にはずっと、こうして波は続いていたのだ――。
当たり前のことが、ふと、腑に落ちた。
ささくれ立っていたものが、少しほどけた。

「すいません! いま、何時ですか?」
不意に、小学生と思しき男の子が尋ねてきた。
「今ねえ……、4時23分」
「ありがとうございます!」
野球帽をかぶった少年は人懐こそうな笑みを浮かべ、お辞儀をした。
友だちと2人連れ立って、砂浜を駆けて行った。

そろそろ、私も帰ることにしよう。
気持ちも、だいぶ落ち着いてきた。
「いま、ここ」から、やれることを続けていく。
それで、いいのだ。

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