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「アメリカ代表」と「羽生結弦」が見せた勝ち方のお手本——。 世界の女子サッカーは今どこで何をしているのか?

女子サッカーW杯が幕を閉じた。名実ともに、圧倒的な強さで優勝を果たしたアメリカ代表が、近年女子サッカーの発展著しい欧米諸国に対して「私たちがチャンピオンである」と、厳然たる事実を叩きつけた。

彼女たちは、いかにして“必然的に”トロフィーを勝ち取ったのだろうか。そこには、複雑な要因が絡み合っている。


■史上最高のW杯

前提として、私は長年女子サッカーを追いかけて来たような人間ではない。なでしこが優勝したW杯を除いて、熱心に女子サッカーの試合を見た記憶はあまりなかったのが正直なところである。

そんな私が、大会が開催する約1ヶ月前にTwitterでこのような投稿をしている。

結果として、ジャンニ・インファンティーノFIFA会長が口にしたように「史上最高の女子W杯」になったことは間違いなさそうだが、なぜ女子サッカーの歴史を辿ってこなかった私が、このような“予感”をしていたのだろうか。これは、私が何か特別な予測能力を持っていたからではない。


■国際女性デー

自分を恨むことしか出来ないが、私はほとんどの日本人男性と同じように、ジェンダーに関する問題に対して関心が薄かったと言わざるを得ない。しかし、昨年からあらゆるきっかけを経て徐々に関心を持つようになり、また活動が活発な国に住んでいることがそれを助け、そして3月8日の『国際女性デー』が私の関心をさらに深いものにした。

関心の薄かった私のような人間が問題を直視するようになったのは、無論サッカーが大きな要因である。『国際女性デー』では、あらゆるサッカークラブ(コミュニティ)が、SNSまたはメディアを通して、現代社会が抱えるジェンダー問題について声明を行った。

この日をきっかけに、もしくは合図に、女子サッカーに存在しているあらゆる問題に対して実際にアクションを開始する組織もあり、アルゼンチン女子サッカーリーグのプロ化に合わせた動きは、そのような流れの中で大々的に行われたものであった。

現在、あらゆる社会問題への啓蒙を目的として『国際〇〇デー』が多く設けられているが、そのような動きに対して日本に否定的な見方があるのは、善悪を除いて無視できない論点である。日本サッカー界に関して言えば、『国際女性デー』をきっかけにサッカーの持つ力を利用しようするような動きは、残念ながら見られなかった。

これらに対して私の賛否はここでは書かないが(意見はこちら)、少なくとも、近年は『国際〇〇デー』の度に、世界におけるサッカーの存在価値(影響力)の大きさと、また日本におけるその小ささを突き付けられている。

世界では「サッカーの世界」と「実世界」が繋がっていて、日本では「サッカーの世界」は「実世界」とは隔離して存在しているのかもしれない。このような流れの中で、私はあることを学んだ。

「(日本)サッカーは、世界の中で孤立してはならず、また社会の中でも孤立してはならない」

私の目には、日本サッカーは世界のサッカーからあらゆる意味で孤立し、また日本社会からも孤立しているように見える。「なぜ孤立してはいけないのか?」そして「どうすればその孤立を防げるのか?」、私の考えはこの記事の後半で述べたいと思う。

W杯開催1ヶ月前のこの投稿が、残念ながら現実となってしまったように思う。ベスト16での敗退は、結果論だろうか。それとも必然だったのだろうか。こと現代サッカーにおける「視覚」的な流れからは、信じられないほど孤立していることが明らかになってしまった。それについての見解も後述したい。


■コミュニティの存在

サッカー界に起こっているムーブメントを支えているのは、欧米諸国を中心に存在する『女性のサッカーコミュニティ』である。

“現代サッカーのルール”として私たち日本人が今すぐ把握しなければならないのは、「世界には、プロとは異なる、サッカー界を大きく動かすもう1つの世界が存在している」という事実である。それら「もうひとつの世界」はサッカー界に大きなムーブメントを起こせる影響力(価値)を持っているが、今回の「女子W杯史上最高」の盛り上がりも例外ではなく、彼女たち『女性のサッカーコミュニティ』を抜きにして語ることは一向に出来ない。

ここに掲載したのは、現在ヨーロッパを中心にコミュニティ及び個人として強い影響力を持っている女性たちの、ごく一部である。それぞれの詳しい説明は割愛するが、以下の事実だけここでは把握して頂きたい。

1.世界には女性によるサッカーコミュニティが存在している
2.それらが今回のW杯で大きな役割を果たしている
3.日本には1つも存在していない(流れを知らない)

このような『女性によるサッカーコミュニティ』はここ数年で徐々に出来上がってきたカルチャーであるが、大会前及び大会期間中、彼女たちを中心に様々なプロジェクトやイベントが行われ、女子サッカーが持つパワーを存分に発揮、拡大した。


■コミュニティの条件(特徴)

日本には、現在このようなコミュニティが存在していない。これは誰のせいでもないが、その点で世界と孤立していると言える。ここで言う「世界」とは、サッカーを先導するヨーロッパと、女子サッカーを先導するアメリカである。私たち日本人は、常に目を光らせて「世界」の流れを把握しなければならない。私がいつも主張するように「ピッチの外で孤立すればピッチの中でも孤立する」からである。

ここで、上記したような女子サッカーの発展に大きく関係している「コミュニティ」の条件(特徴)を整理しておきたい。

1.影響力とは必ずしもSNSのフォローワー数ではない
2.クリエイティブである(サッカーで"遊ぶ"センスがある)
3.NIKE or adidasとコラボ出来るセンスを持つ
4.プロサッカー界の人間たちではない
5.サッカー自体が目的ではない(別の欲を持っている)

これらの条件を備えた彼女たちは、いかにしてこのようなカルチャーをつくってきたのだろうか。そして、どのようにサッカー及び社会に影響を与えているのであろうか。その仕組みを以下に書くが、これは現代サッカー全体に共通している仕組みであり、女子サッカーに限定されるものではないことは留意して頂きたい。

今回の女子サッカーに関して言えば「タイミング」がより重要な意味を持っていたことは確かであり、またそのタイミングは偶然訪れたものではなく、意図してつくられたものである。そこを紐解いていくと、アメリカの優勝と大きな関係があったことがわかる。


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「アメリカ代表」と「羽生結弦」が見せた勝ち方のお手本——。 世界の女子サッカーは今どこで何をしているのか?

河内一馬

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1992年生まれ(27歳)/ サッカー監督 (南米サッカー連盟 Aライセンス)/ アルゼンチン在住 / 監督養成学校在籍中 / サッカーカルチャーブランド「92 F.C.」Founder / NPO法人 love.fútbol Japan 理事 / 月額マガジン『蹴球症候群』
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