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頭が真っ白で指が震えながらも乗り越えた、ピアノでのライブ演奏

「わかりました!中島みゆきの『時代』ですね。せっかくなのでピアノでやります!伴奏は私一人で。これ弾けるようになったら絶対カッコいいよな。あと8ヶ月ぐらいか。練習します!!」

そっからピアノとの戦いが始まった。

ピアノはあまり得意ではない。
そもそも楽譜が読めないし、ギターが染み付いている私はまず頭でコードに変換して音を探して鳴らすので、どうしてもワンテンポ ツーテンポ遅れる。
だけど流しを始めて数々のアーティストや名曲を知り、ピアノへの憧れは強くなっていった。

パッと思いつくのはビリージョエル。
『Piano Man』が弾けたらどれだけカッコいいだろう。
流しではギターで弾くけど、やっぱりあれはタイトル同様ピアノが良い。

練習開始

練習を始めた。とは言っても、どっから手をつけたらいいかわからない。
かと言って初心者止まりで終わりたくない自分もいる。
人前で披露するのだから、それなりに形にはしたい。

とりあえずYouTubeで、ピアノ演奏動画らしきものを色々見た。
すると中級レベルのものを見つけ、ここを目指すことに決めた。

『時代』は歌の前にイントロがある。
そもそもここを形にするだけで1ヶ月かかった。
私もまったく同じ、指が動かない追いつかない。

頭ではわかっているのに身体が追いつかない悔しさは久々だった。
ギターではもはやこんなことは起こらない。
ピアノに挑戦したことで気づく事もあり、何だかんだで自分のやってきたことは積み重なっていたと少し感動した。

しかしそんなことを言っている場合じゃない。
ただひたすら練習の日々だった。

「一馬くんがピアノを弾くことはサプライズにしたいので、これで本番驚かせようね!」
この言葉を機に、ピアノの事はSNSでも触れないようにした。
虎視眈々と、練習あるのみ。

ただ弾けただけ

本番2ヶ月前。
全体の音も流れも覚え(楽譜が読めないのですべて暗記)、ようやく形になってきた。

実際にスタジオで音合わせをした。
確かに弾けてはいたが、表現が無い。
ただちゃんと1曲を弾けただけだった。

「1番と2番で弾き方を変えたほうがいいと思いますよ。あと抑揚もつけたらもっと良くなると思います。ペダルの踏み方もこうのほうがいいかな。」
家に帰り、再び練習を再開。

確かに、決まった音をそのまま弾くのでは何もおもしろくない。
ギターでも歌でもそうだ。
”らしさ”だったり”味”のようなものが、個性だったり魅力になる。

なるほど勉強になる。
一度通ってきた道だろうけど、改めて出会うと心に突き刺さるものだ。

失敗だらけの最終リハーサル

最後のリハーサル。
謎の緊張感があり、受け止め噛みしめながら本番を想定し演奏。

すると、練習では起こり得なかった間違いが右から左から。
度々変な音はなるし、間奏は弾く位置を見失い、止まりはしなかったものの戻すこともできず、不協和音の連続。

一気に不安が押し寄せた。
他の曲にも影響を及ぼすほどに精神が追い込まれた。
これ本当に大丈夫なのか。
思い出すだけでも心拍数が高まる。

もうそっから帰って練習。
あまり覚えてないけど、聞けば朝7時からピアノを弾いていたらしい。
音量を最小まで落としたつもりだが、聞こえていたらしい。
しかし本番前日、自分でもよくわからないが「失敗が失敗じゃない弾き方」を見つけた気がした。

美しい間違え方

ギターでもそうだが、実際は失敗したけど”表現”や”味”として置き換えられるやり方というのがある。
”ごまかし”とも違うのだが、一言で言えば「美しい間違え方」だ。
子どもに絵本取ってきてとお願いして、漫画を持ってくるようなものだ。

なるほど失敗してもいい。
ただ失敗のやり方に気をつければいい。
この事に気づき、少し肩の荷が降りた。

練習のやり方も変え、翌日に疲れを残さないためにも早めに就寝し、いよいよ明日は本番。

座った瞬間、頭が真っ白

もっと引きずるかと思ったが、意外に気分は爽快だった。
ピアノ以外に私のステージもある。
新曲披露もあるし、メインバンドのギター演奏もある。
もうあとはやるだけという気持ちのみ。

第一部の私のステージが終わった。
ライブ自体も新曲も、手応えは上々。
いよいよ第二部、本日のメインバンドが始まった。
ピアノ演奏は後半。

あんだけ鼻息荒く気持ちは昂っていたのに、一通り演奏が終わってピアノの前に座ると、恐ろしいほどのド緊張。指が震えて止まらない。
あと鍵盤が音に見えない。白と黒の板にしか見えない。
何を押したらどの音が出るかがわからない。

だけど緊張が伝わったらお客さんを不安にさせてしまう。
真の意味で音楽を楽しめなくなってしまう。
それだけはと平静を装い、余裕の表情を作りイントロを弾き始めた。
するといきなり不協和音。

「もっかいやりますね!いやいやお約束ですって。やります!!」
この可能性はあると思っていたから、ここまでのくだりは想定していた。
これが良い意味で”失敗”という呪いに苦しめられずに済んだ。

だけどこのカードは一度切り。二度目は無い。
集中力を最大値まで高め、私は弾き始めた。
指の震えが止まらない。もうこっからは練習を信じるしかない。
頭はポンコツだ緊張して動かん。身体の動きだけで弾くしか無い。

間奏突破で終わりじゃない

最大の難関は間奏。
左手で階段のような伴奏を弾き、右手でメロディーを奏でる。
演奏中、難易度の低いコード弾きで間奏をくぐり抜けようと何度も頭をよぎった。
最終リハーサルのような美しくない失敗をしようものなら目も当てられない。

だけど逃げたらいかん。
”表現”ということにしておいてテンポを2ぐらい下げ、間奏を丁寧に弾いた。
目立つ間違いはなく乗り越えられた。あとは大サビとアウトロのみ。

練習でもよく起こったのは、間奏突破に安堵して終盤が崩れる事。
最後の最後まで気を抜いてはいけない。
歌をちゃんと聴き、歌を乗せて音楽を届ける。

大きな壁を乗り越えて

8ヶ月の練習を経て、『時代』が幕を閉じた。
ライブも大成功で、一気に解放されたのか打ち上げはよく食べよく飲んだ。

今振り返れば、ピアノは楽しかった。またやりたいと思った。
大変さも苦しさも、私に取っては”おもしろい”のひとつ。
またひとつ、人として音楽家として深みが出て成長できるならば、これほど嬉しい事はない。

さあ今週が再び始まった。
次へ行こう!!流しの宿題はてんこ盛りだ。
今日は社長さん達が集う異業種交流会。
私はまだまだ上へ行く!

これからもぶっ飛ばします。良かったらぜひ!