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耳に残る昭和の声②

家族の成長と困難

昭和9年11月、錠一と梅の間に長女の和子が生まれた。和子の誕生は家族に新たな希望をもたらし、錠一と梅は彼女の成長を見守りながら、さらに商売に力を注いでいった。和子は幼少期から両親の働く姿を見て育ち、家族の大切さを学んだ。

昭和10年にはさらに家族は賑やかになり、錠一と梅の間に長男の修一が誕生した。錠一は修一に対して大きな期待を寄せ、将来の商売の継承者として育てる決意を固める。しかし、錠一は仕事一筋で家庭をあまり顧みることがなく、修一に対しては厳しく接することが多かったようだ。修一は店のことを全くやらずにぶらぶらしていたわけではなく、何をやるべきか見失い、和子が店を仕切るようになったため、もともと居場所がなかった。そのため、修一は次第に家族の中での居場所を失い、苦しい思いを抱えるようになる。

戦後の復興が進む中、錠一の商売はますます繁盛し、地域の人々からも信頼されるようになった。錠一は常に新しいアイデアを取り入れ、商売を拡大することに力を注いでいた。例えば、店では季節ごとの特別メニューを導入し、常連客を飽きさせない工夫を続ける。昭和14年には次女の美代が生まれ、家族の絆はさらに深まった。

一方で、戦後の社会は急速に変化しており、錠一は新しい時代に対応するために努力を惜しまなかった。昭和17年には次男の良男が生まれ、家族は一層賑やかになり、子供たちはそれぞれの道を歩み始め、家族の未来に向けて希望と期待を持って成長していった。

家族の成長と共に、店も少しずつ拡大していった。しかし、錠一が仕事に没頭するあまり、家族との時間はますます減少していった。昭和20年代後半、商売はさらなる繁栄を迎えるが、錠一は生涯現役のつもりで、次世代に継承するための準備を全くしていなかった。その結果、修一は次第に家族の中での居場所を失い、苦悩の日々を送ることになる。

つづく

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