さっさと作る、質はあとからくっつける

昨年から同人ボードゲームの制作活動をしゃがんでいる自分を強引に励ますために書きます。まず結論を言うと、ボードゲームを作るのはわりと簡単です。面白く作るのが難しいだけで、そこそこのクオリティまでなら難しくありません。そんな話をします。

出発点・コンセプト

作りたいと思った人なら、たぶん30~50作ぐらいは既存のボードゲームをプレイしてるはずです。その中に「自分はこういうのを作りたい」っていう対象があるはずです。あるいはそれは「自分ならこうするのに、こういうのがほしいのに足りない」っていう、気になるけど物足りない部分かもしれません。それを捕まえて要素を抽出すれば最初の段階はクリアです。これが制作のコンセプトになります。

このとき、必ず好きなものを選んでください。言い換えると、作れそうなものを選んではいけません。トリテなら土台があるから簡単そう、バッティングなら読み合いが演出できそう、ではダメです。いやダメじゃないんですけど、俺はそれだとモチベが続かないのでおすすめはしません。ゲームそのものへの情熱を基準にするほうがいいです。それがないと、テストプレイやデベロップで心が折れます。

経験上、テーマも早めに決めとくのがいいと思います。システムだけ考えてもデベロップでいい落とし所がなかなか見つかりません。それこそユーロっぽいテーマ(同人作品が好きなら同人っぽいテーマ)の丸パクリでよくて、作りたいテーマがあればもちろんそっちを重視するとなおよいし、直感で決めてもそれほどは外しません。

アイデアからドラフトへ

コアアイデアは上記のコンセプトさえあれば必ず作れます。喫茶店で2時間もノートにアイデアをメモしてたら勢いで作れます。降りてこないときは諦めて本でも読みましょう。コンビニでノートを買って、テーブルにとりあえず広げてたらそのうち降りてきます。

問題はそいつをルールの体裁まで進めるプロセスです。最初はもう、好きなゲームから構造を真似して引っ張ってきましょう。コツは、コンセプトで参考にしたゲーム1つだけを真似するとパクリになってしまうので、他のゲーム1~3作ぐらいを混ぜてしまうことです。ユーロゲームには手番とかラウンドとか、リソース変換にアクションドラフト、勝利条件や収束の担保といった諸々のお作法が明確に存在します。その枠組を分解してコンセプトに合うように再構成すれば、ゲームの体をなしてきます。

このとき、本当にメカニクスの全体が調和するかどうかは考えません。それはテストして考えればいいことです。とにかく詰めたいものを極力詰めます。最初に規模感を考えてルールを好きなだけ詰め込んで、後からテストを通してそれを削ったり直したりして洗練させていきます。

あとは、仮決めでもいいからルールの細部を適当に決めてしまうことです。テストプレイでは「ここはまだ決めてないんですけど……」と制作者が迷うのがあるあるですが、適当に決めさえすれば回せます。決めないとテストが始められません。出来は考えなくていいんです、最初は。とにかく形にするのが大事です。ルールは箇条書きでも説明書に近い文章でもいいので、とりあえず作る。さっさと作る。質はあとからくっつける。そしたらルールのドラフトが作れます。これでもうゲームは半分完成しています。

デベロップメント

あとは納得いくまでテストするだけ……なんですが、これも〆切がないと永久に完成しないので、一般論としては最初にイベントに参加申込しておき、そこから入稿〆切を逆算しておくとスケジュールの目処が立ちます。

というかですね、最初から化粧箱に入った立派な紙質のゲームを作る必要はないと思うんです。コピー用紙にボードを印刷して、カードなら名刺用紙に印刷して、ジップロックに詰めてコマを入れて、それでボードゲームは十分できます。これなら印刷所入稿が不要になるので〆切がイベント直前まで後ろに倒せます。

これは個人の意見なんですけど、なんかもう、俺なんてただの素人なんだから立派なものとかどうでもよくて、いやそりゃ立派に作って沢山売りたいし利益もほしいですけど、作りたいのは面白いゲームであって、綺麗なプロダクトはその手段でしかありません。そのほうが遊びやすいしテンションも上がりやすいからコンポーネントを綺麗にできるときはするってだけの話で、それがなくたって面白いものは面白いはずだし、無骨でも勝負できるくらいのルールを目指すほうが方向としては合ってると思うんです。とにかく完成させて発表するほうが先じゃありません? せっかく同人なんだし最初は10~20部ぐらい作ってひっそり売って、参加費が高かったら友達に委託なりして、それが完売して買った人の感想が聞けたら十分楽しいですよ。俺は最初の作品は500円ジップロックで30部でしたし、それでも売り切れてすごく嬉しかったのを覚えてます。

テストをかけすぎてもエタるんで、ほどほどにテストとデベロップを繰り返して、自分のコンセプトは曲げないで、ある程度回数をかけたら無理にでも終わらせます。ゲームに唯一の正解はないもので、明らかな課題を自分なりに何とかするなり妥協するなり、とにかく折り合いをつけたら完成します。わからなくなったら、既存の作品に解決策があることが多いので探します。出発点にした作品だけを引用元にせず、いろんなゲームのアイデアを少しずつ自分のやりかたで混ぜていくことで、作品がオリジナリティを帯びてきます。それはときに創造よりも編集に似てて、そして編集にもれっきとした創作性があります。

おわりに

だから、作るだけならすぐ作れるんです。なんだっていいから完成したって言やあ完成なんです。面白くする方法はいくつも作ってるうちに少しずつわかってきます。俺も6年活動して最初よりは少しだけ上手くなりましたし、でも足りないスキルが山ほどあるし、そんなもんです。

とにかく書く。形にする。コマとボードとカードをありもので揃える。それを遊んでみる。手を動かせばなんとかなります。そうして形にしたものは頭の中で想像してた理想の10分の1にも満たないくらいしょっぱいものですけど、完成しない理想より、目の前の試作品のほうがずっと貴いです。だって、そこに新しいものがあるんですから。

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