ボードゲームのインストに正解はない

まあまあ、見飽きた話題でしょうけど、たまには自分の考えを書いてみたくなったんでよろしければお付き合いください。内容はタイトルの通りで、話の進め方は論理まっすぐじゃなくて散発的です。

インストとはインストラクションの略で、ボードゲームのルールを説明することです。ですから私は普段インストって呼ばずにルール説明って呼んでますけど、この記事では「インスト」にしたほうが文脈を明示できてよいのでそうします。

インストは手段である

インストは目前のボードゲームを全員が遊べるようにするための手段であって、上手なインストをすること自体が目的ではありません。なくても全員がルールを理解できるならそのほうが良いものです。一般的には巧いほうが伝わるから練習するにすぎず、説明が拙くても伝わればかまいません。

上記が私の原則で、理由は単純に自分がインストあんまり巧くないから、それでも遊びやすいほうがラクだし楽しいという生活上の要請があります。私はADHDっていう障害を持ってて、作業記憶が弱かったり集中力がすぐ切れて眠くなったりします。ですからすごいですよ、実際にインスト聞くときに今言われたルールの意味がわからない、重ゲーで15分程度説明が続くと謎の強い眠気が襲ってくる、喋ったら喋ったで今何を話してたか突然わからなくなる、もう自分で書いてて朝から惨めです助けて

特に致命的なのが、制作中の自作ゲームのルールをまともにインストできない! 説明書読みながら「あっここ違ってたすみません」って何度言うことか!! おかしいだろ自作なのに!!! ですから初期バージョンから説明書の文章は製品レベルで書いていく対策をしてます。さすがに自作なんで概要を押さえつつ適宜説明書で補足するんですけど、でもたとえ説明書を頭から読み下すだけでもルールが伝われば十分じゃないですか? 文面を頭から全部聞くのがだるかったら、適当に「Yeah」「Uh-huh」「OK」とか相槌打ってたらいいし、説明書のテーマ的な部分にツッコミ入れて会話を楽しんでたらいいと思ってます。

未開封のゲームをその場で開けようぜ、みんなで説明書読もうぜ

もちろん、説明書の読み下しがわかりやすいかといえば、そうでもないです。説明書には後からルールを確認するための参照性が求められるため、ルールを網羅しつつ重複を極力避けるように書かれています。説明してわかりやすい順番では書かれていません。

でもな、未就学児を育児中のおとうちゃんには、ルール読む時間もサマリシート作る時間もないんや。サマリシートは自分で作らないと自分に適した説明順にならないから自作がベストだし、子供さんが生まれる前はやってたけど今はもう無理です。体力の限界っ……気力も……!

それでもゲームは買ってしまう。だってボードゲーム遊ぶ時間が減ってストレスだから、その分を買物にぶつけてしまう。そうなんです、最近積みゲーが明らかに増えてます。これを崩すにはゲーム会に持参するしかないんです。3時間ゲームをその場読みしろとはさすがに言えませんが、30~60分ゲームなら全然成立するはずです。

なんか自分の都合の話しかしてないのは重々分かっております。でも、私はほかの人が未開封の箱を持ってきて、その場で全員で型抜きしてルールを解読するのも楽しいって思うし、実際よくそうしてます。知らないゲームを遊べるのって楽しくないですか? そこで一緒に読むことで、なんとなくその場特有の仲間意識が出てくる感覚があって私はそういう時間が好きです。プレイングだけが遊びじゃなくて、箱開けたりルール読んだりする行為だって、広義ではボードゲーミングなんです。型抜きのシート枚数やカードの包装だってゲーム情報だし(私が作ってるからもありますが)、ルールを読みながら当たりをつけていく時点でゲーム作品への批評は始まってます。

もちろん、インストラクタがルールを整理して、理解しやすく説明するほうがベターです。でもそのときインストラクタには時間や準備の負荷がかかっています。時間負荷の総和が結局減らないのなら、その負荷を場の全員で共有するのだって、時にはアリだと私は思っています。なるべくルール読んできます……ごめんなさい……。

説明って、ほんとに巧いほうが伝わりやすいの?

先ほど「理解しやすく説明するほうがベター」と書きました。理解のしやすさは、上手な喋りとイコールではないと思ってます。「理解しやすい」「上手」といった言葉は一旦無定義に使ってますのでご了承のほどお願いします。

昔ちょっとだけ塾講師やってたときに上司から教わったコツに「解説授業をするな」というのがありました。講師が上手にすらすらと説明して、生徒が分かった気になる。で、宿題を解かせてみると、できない。なんとなくインプットするだけでは理解できないからです。説明の途中で確認してみたり、すごく簡単な練習問題を細かく出してみたり、双方向的な工夫が必須です。

インストも同様で、引っ掛かりがあまりにもない説明は、頭に残りません。一般論として、ある程度ごとに説明を区切って質問や確認の時間をとるほうが聞き手にとっては楽だし覚えやすいです。私も寝なくてすみます
もっと言えば、インストラクタが最初説明を抜かしてて、後から「あっすいません大事なこと忘れてました」って付け加えたことほど、間違えにくいです。さらっと流すと理解が抜けるかもしれなかったことが、説明が前後したことで覚えられる。これは本当に下手な説明でしょうか? 実はこのほうが、プレイヤーがルールを誤解しないというインストの目的に、結果として適っているのではないでしょうか?

実際の経験で、とある重ゲー(ルチアーニ作品です)のインストを聞いたときに友人の説明がやや訥々としてたんですが、都度質問したりみんなで実例を喋ったりしてたおかげか、ルール間違いは一度もしませんでしたし楽しかったです。それでゲームが遊べてますから、問題はありません。

逆に、「説明をきちんと準備してきたので、区切るまでは黙って聞いてほしい」というインストラクタがいれば、それはその方の要望を尊重すべきです。要望を無視して質問を挟んで、もともとの説明がうまくいかなくなってしまうと、全員のルール理解はやはりうまくいきません。聞き手の都合も話し手の都合も等価です。私はわりと細かく質問を挟むほうだし自分のインストでもそうしてほしい人ですが、それは個人的なスタイルの問題で、インストラクタが嫌がるときには控えます。

タイトルに「正解はない」と書いたのはそういう意味で、インスト、ひいてはルール理解の成否は個々のセッション、個々のプレイヤーどうしの性質に帰属する問題です。簡単に言うと「人それぞれ」です。なぜならインストは結局コミュニケーション技術の話だからです。

自分の感想や意見をどんどん言おう

だから、こういう話題はいくらループしてもいいと思ってます。正解がないからです。初めてトピックに触れる人に限らず、いくら擦られた話題であっても自分の認識を確かめたいときはありますし、何年も遊んでくると昔とは意見が変わることだってあります。インスト論を語りたくなったら、それはその話題が今の自分にヒットしたということです。だったらいくら喋ってもいいし、ゲーマーがいてプレイ環境が日々変わる限り、この話題も常に自分の中で語り直す必要が生まれてくる。

あなたの感想、あなたの意見、それで十分だしそれこそが必要です。

なんていうか、何でもいいんですよ。喋りが苦手なら事前にBGGのルールブック読んどいてねでもいいし、自作サマリ作ってそこに少し説明足すだけでもいいし、逆に喋りでエンタメしてもいいし、いくら失敗しようが間違えようがすべてはプレイヤーがルールを理解するための手段にすぎません。

説明を工夫したほうが理解しやすいのはもちろんです。ルールを間違えてしまってゲーム本来の魅力が損なわれるのは惜しい。けれど、これは違う話になりますが、たとえばルールを1ヶ所間違えてプレイしたからといって、そのセッションの価値が100から0に下がるかというと、そんなことは決してありません。そのゲームにまつわる何かは経験として残るんです。

だって我々はプレゼンのプロじゃありません。素人です。アマチュアが集まって楽しむのがボードゲームですから、全員が説明上手なんてあり得ません。スキルを上げる必要を感じる人がそうするのは素晴らしいことだし、私のようにサマリを作って対応してもいい。でもそれは全員に強制すべきことじゃなくて、たかがルール説明の腕の良し悪しにそこまで強く拘泥する必要はないはずです。そのゲームを楽しく遊ぶことが目的であって、インスト自体は目的ではない、その軸を通すことがいちばん大事だと私は思います。

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