【今日のコバコ】エスカレーション!

地味だけど好きなカードゲームです。数字カードが1~13までそれぞれ異なる枚数入ってて、自分の番が来たらテーブルの中央に直前よりも高い数字になるように、手札からカードを出していきます。カードは同じ数字なら何枚でも一度に出してよく、宣言する数字はその合計です。出せないor出したくない場合、場に出たカードを全部引き取って手元に伏せて、この枚数がマイナス点になります。プラス点はないので、ひたすらマイナス点を減らすだけのリスク管理のゲームです。

1ディールは10分もあれば終わります。対応人数は2~6人という、いかにも元版メーカーが売る幅を広げたくてつけたであろうレンジです。こういうゲームは得てして4人が最適なんですが、私は2~3人が地味にベストだと思っています。

手札は常に6枚になるよう補充するので、6枚という少なめの手札で同じ数字をいかに揃えるかを問われます。その数字が山札にいくつ残っているか、それを自分が引けるか、といった計算が成り立つためにはプレイ人数が少ないほうがいいです。昔はなんとなく多人数用フィラーだと思って6人戦を試したこともあったのですが、パーティライクな笑いは起きてもゲーム的なコントロールはどうにもなりませんでした(ですから5人以上は運が強めのパーティゲームです)。

逆に、2人でも案外山札の減りは早くてよく回るというか、2人だからこそほしいカードの引きに期待できる面があります。3人でもまあまあ狙ったカードが引けます。あと、少ない人数のほうがカードをカウントする余裕があるんですね。13はまだ1枚しか手元に来てないけど2枚目を待つのか見切りをつけて出すのか、1~4あたりの低い数字はどのくらい耐えて持ち続けるのか、といった判断の悩ましさが際立つのが2~3人というレンジではないでしょうか。

という楽しみどころが分かってきたのは、ある日2人戦を3ディール続けて遊んだときでした。私が持っているのはZ-MANの海外版で、カードランクが各何枚あるかの内訳が説明書に記載されていません。軽く遊ぶには知らなくても十分だしわざわざ数えるとゲームが気軽さを失うであろうことを嫌って、枚数はそれほど気にせずに、単に出せた出せないの一喜一憂を楽しんでいました。

そうやって気軽に遊んでいると、だんだんデッキに慣れてきます。2桁のカードはだいたいこのくらい、ミドルランクはこのくらい、みたいなのを感覚で覚えてきて、じゃあ数字の上限はこのへんだったら返されないかな、という楽しみ方に少しずつ、そして自然に移行できてきます。そしたら「よし、ハイカードが何枚あるかいっちょ数えてみるか」となるわけです。カード内訳を知らなくてもライトに遊べるし、知るとゲームが鋭さを増してくる。そういう作品です。

日本語版はZ-MAN版にないカード内訳一覧がついていて、これはこれでとても便利です。全ランクの枚数をメモするのは結構しんどいので最初からサマリがあると助かります。ただ、海外版でそういう遊び方を経験した身としては、そのサマリは便利だけど余分ではないだろうか? 説明書にその情報は必須だろうか? ということは、どうしても考えてしまいます。カード内訳を載せるということは、説明書を読んだ時点で枚数を把握してしまう、つまりそれを最初から考慮するよう仕向けられている、ということを意味するからです。

ルール説明もそうですが、プレイヤーにはどの情報を与えるべきかだけでなく、どの情報を与えないかという観点が重要です。あえて極端な例をあげると『テラフォーミング・マーズ』や『アグリコラ』の全カードを最初に説明するのはナンセンスです。私は『カタン』の発展カードや『カルカソンヌ』のタイル一覧でさえ初見プレイヤーに説明する必要はないと思っています。出会う楽しみ、未知のデッキから驚きを得る楽しみというのがあるはずです。『エスカレーション!』のカードはそこまでのレベルでは全然ないですが、あえて付けるほどの情報でもないのではないか。知りたい人が探せばそれで十分ではないか。

これは日本語版が悪いと言っているのではなく、枚数をあえて知らないで軽くやってみても十分楽しいよ、という遊び方のすすめです。海外版は入手しづらいしイラストが人を選ぶので、日本語版は親しみやすく万人受けする良い箱になっていると思います。それはそれとして、気軽にも緻密にも遊べる小箱ですから、気軽なほうの楽しさを、そして気軽さから緻密さへと移ってゆく面白さも、ぜひ体験してほしいです。それは少人数でこそ出る本作の持ち味だと思っています。

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