見出し画像

【今日のコバコ】ラブレター

2014年のSdJ推薦リスト入りした名作です。ゲーマーで知らない方はいないと思います。カード16枚だけで1回5分と手軽で、私も大好きな作品です。飲みながらやると実に良い。

手札は1枚ですが、手番の最初に山札から引くので実質は2枚で、だからこそ成立するテキスト効果が沢山あります。プレイヤーがやることは常に2択で、そのうち1つを考えつつ他プレイヤーの行動や場に捨てられたカード枚数を確認し、自分の番になったらもう1つの選択肢を見て考える。思考の負荷がセッションを通して低すぎず高すぎず、その塩梅が巧いです。

山札16枚でゲームを成立させるって本当に難しくて、ルール量を増やす必要がどうしてもあるんですが、このゲームはそのルールをカードテキストに切り出すことで基本ルールを削ってあるのが良いなと思います。初見で覚えることは少なくて済む。ゲーム自体の理解に思考のリソースを割ける(かのように見せて、カードテキストというルール理解をゲーム中にやらせることができる)。5分ゲームだからそれが許される。凄い。

そういう感じなんですけど、この作品は断じて初心者向けではありません。ゲーマーズゲームです。カードのテキスト効果が8種類もあって、初見で効果の意味を理解できるのはゲーマーだけだと思います。逆にボードゲームをやってなくてもデジタルゲームやTCGをやっていれば理解できると思うので、むしろボードゲーマーにステップアップするときの試金石に近い位置づけだと思っています。

これはプレイヤー側の話になりますが、初心者と一口に言ってもバックグラウンドは極めて多様です。そうした個々のプレイヤーを相手に「誰にでも勧められる鉄板ゲーム」というのは、実はない。ラブレターはその顕著な例で、5分ゲームを何度も回して理解することを前提にしていますし、その理解の経験値を揃えておかないと、普通以上にゲーム体験に差が開くゲームです。経験者が「なるほどわかった」という横で、初心者はぽかーんとしている。俺はこのゲームを初心者やノンゲーマーに勧めてコケるセッションを何度も見てきたので、自省的な意味合いがあります。

カナイセイジは、テキスト効果を使ってやりたいことやってるときが一番輝くデザイナーだと個人的には思ってて、賞レースや売上どうこうとは関係なく、彼の個性や良さをもっとも端的に表したゲームではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?