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2.大まかなプランを立ててみよう(5)---アラフォーの大学選び:アラフォーから始める留学

前回まで、お金の話をしてきました。ざっくり言うと、

・アメリカの大学院:超高い。MBAの値段はえげつない。

・ヨーロッパの大学院:MBAは高い。英語圏以外は安い場合ありだが、かなりの学力と英語以外の語学力が必要。

・アジアの大学院:基本的に安い。欧州志向のMBAは高い。

こんな感じでしょうか。今回は、どこをどう選ぶかというお話です。

海外MBAの選択基準は学校力

NYU留学前にいろいろ調べてみて感じたのは、少なくともMBA選択基準は「学校力」に尽きるのではないか?ということです。ただしアラフォーという前提ですが。いわゆる世界ランクでいうと、学術系は各所に分散していますが、MBAの上位はアメリカのメジャースクールに集中し、そこにINSEADやIMD、CambridgeのJudge SchoolやOxfordのSaid School、HKUST、NUS(シンガポール国立大)といったnon-USの実力校が食い込んでいます。

で、集まる学生の平均学力的にどれが一番賢いかというと、わかんないんですね(笑)。この辺のクラスは、設備もカリキュラムもしっかりしているし、集まる生徒も大抵質が高い。多分、トップ20校とかは超頭脳集団が存在すると思いますが、21〜100校に入るようなところは、どこに入っても平均学力的には変わらんだろうと思っています。これは日本の著名大学も含めてです。100位から下(100位という数字にあまり意味はないけど、要は聞いたことない、大した卒業生もいない学校)は、完全に学生個人のタレントと努力に依存しており、卒業後「学校力」という資産をもらうのは厳しいかと。身も蓋もありませんが、以前述べたように、MBAは学問追求の場というより、は経営理論に関する総合的な学習とケーススタディがメインで、卒業後のビジネス・サクセスを最大目標としています。主に米国の著名校にスターや国家元首の子女がいるのは、彼らが優秀だというだけではなく、学校側が、卒業生が手に入れるパイプラインを意識しているということです。あくまで私見ですが、海外MBAを目指していて、それなりの学校に入ることが叶わぬなら、国内MBAを選択して、教授やカリキュラム重視で選ぶ方が絶対良いと思います。1,500万もの学費を払って、キャリアを捨て、1〜2年実業界から離れるのに、得たものが思い出と学位だけ、となると、老い先がやや短い(笑)アラフォーは割に合いません。

学校力とはなんぞや

ここでいう「学校力」とは、平たく言うとブランドになっちゃいますが、その本質は卒業生の世界規模での活躍レベル、つまりは知名度と人脈なんじゃないかと思います。やっぱり、誰もが知る有名校が常に上位ランクにいる理由は脈々と積み上げたエリートの歴史でしょう。学閥と言ってもいい。残念ながら世界中のビジネス界にはギアというか階層が存在していますので、どの階層に入るかはかなり重要なポイントになります。

「アメリカは実力主義で日本の学閥主義はクソだ」

という人は多く、僕も受験失敗組なのでそんな気持ちでいましたが、アメリカに限らず、基本世界はどこでも確実に学閥主義が強いです。正確に言うと、有名校を出ていた方が格段に高い下駄を履けます。これが、国内限定か世界規模かの違いがMBAの世界ランクに如実に反映されています。世界で名が知れた大学のMBAを出たか、というのは日本国外ではかなり重要です。

仮に日本の著名大学で成績優秀だったとしても、残念ながら海外の人は東大以外ほぼ知りません。この間、クラスメイトに、京大や一橋、早慶といった日本著名校の話をしましたが、誰も知りませんでした。iSP細胞の山中先生のことは知ってますが、みんな東大の先生だと思ってます。この理由は、日本が学力的に劣っているというのではなく、彼らの身近に日本の大学を卒業した実力者や著名人がいない、ということでしょう。日本人卒業生の活躍というだけでなく、彼らの同胞でも日本で学んだ人がほとんどいない。皮肉なことに、世界から集まる留学生は「日本人は基本的に真面目で頭がいい」というイメージを持っていますが、非常に漠とした都市伝説的なもので、具体的成功サンプルの近くにいたことがない。まあ、みんなアメリカに来るような連中なので、いわゆる生存者バイアスもあると思います。一方で、お隣の中国や韓国の人たちは「日本の大学は優秀だ、我々の国はもっと頑張らねば」と言ってくれますけど、実は東大しか知らないわけで、実際は日本に留学なんぞ考えたこともないか、ただのお世辞でしかないでしょう。

*蛇足ですが、研究職だと論文が学会で認められるか否かが評価される世界なので、上記でいうものとは違う学校力(研究施設、仲間の頭脳、師事する教授など)の方が重要だと思います。

ところで、我がNYUの看板の一つであるStern Business Schoolは全米でも10位台をキープしている名門ですが、今僕は、縁あってあるSternの生徒の卒業試験をヘルプしています。もちろん僕の専門であるマーケティングの分野だけですが。つまり、それなりに仕事を頑張ったアラフォー・ビジネスマンともなると、たとえ名門校のMBAであっても現役学生を教えるだけの専門知識と経験を持っています。逆に、トップスクールであっても、学力的には人知を超えるレベルではなく、我々でも手の届く、ついていける範囲です。では、日本のおっさんに教えを請うような彼らが何故、既に超有名企業から内定をもらい、卒業後エリート街道で活躍できるのか?それが学校力なのだと思います。

多様性に富んだ卒業生ネットワークがあるか

MBAという、卒業生のビジネスサクセスが大きな評価基準になる領域では、Diversityの担保は非常に重要なのだと思います。ここでいうDiversityは人種や国籍だけではなく、金持ちと貧乏人、男女とLGBT、そう言った様々な方面を含みます。NUS(シンガポール国立大)が躍起になって奨学金を出しているのは、海外留学生です。自国民の教育を主眼とする国立大なのに。もちろん自国の置かれている状況(小国、資源なし、貿易と金融中心)から編み出した戦略なのは間違いないですが、とにかく海外の優秀な人間とのパイプラインを作りたいんですね。NUSは極端な例ですが、欧米の有名どころも海外留学生比率が非常に高く、非常に積極的に留学生呼び込みのマーケティングをしています。僕も学校を決める前に色々リサーチしましたが、どうターゲティングされたのか、Linkedin経由で何校からも「受けてみない?」というアプローチを受けました。しかもMITやINSEAD、Oxfordといった名門校から。これは、僕の学力が高いからとかではなく(どこにもそんなんアップしていないし、僕のスコアを知ったらむしろメールよこさなくなるでしょう笑)、めぼしい海外の人材に常にアンテナを張っているということです。

自分が欲しい「学校力」を考えてみる

話が逸れましたが、アラフォーが海外MBAを意識するなら、「学校力」をまず考えるべきかと思います。座学で賢くなるためだけなら海外MBAはやめたほうがいいです。先述のように、MBAは経営に関連する包括学習の分野ですから、特定分野に賢くなるというより、高いレベルでの基礎知識を習得し、使いこなすための勉強だと思いますので、学校力を絶対に意識した方がいい。一方、高学費で難関の著名スクールが難しいけれども、どうしてもMBAホルダーになりたい方は、国内MBAを選択した方が確実に良策です。少なくともリスクはぐんと下がりますし、カリキュラムが極端に劣るとは思えません。ただし、海外授業特有のディベートや多国籍での意見交換という環境はなくなるので、こっちを重視したい場合は、MBAを諦めましょう。僕のように(苦笑)。

ともあれ、海外MBAを考える場合、卒業後にどういう資産を得るか、知識や学位以外の資産についても熟慮しましょう。「学校力」が欲しいか、については、自分のスコープを整理する必要があります。卒業後、どういう仕事で活躍して、どんな国とパイプを作ろうか、です。ファイナンスであれば、ファイナンスで活躍する卒業生が多いところが良いでしょう。技術系であれば、MITやHKUSTのような、科学分野に強い部門を持っている学校が良いでしょう。パイプラインについて、仮に自国内メインであれば国内MBAで良いわけです。中国とパイプを作りたければ中国ですし、全世界的に広範なネットワークであればトップスクールに名を連ねる学校になるでしょう。大抵の大学には留学生比率が書いてありますから、これが参考になります。そうやって絞り込まれた候補を、ランクの上から順番に並べて、あとは学力と予算との相談です。

残念なくらいベタで、本質的じゃなさそうな回答ですが、世の中こんなもんです。あと2、3回学びなおすチャンスがある30代や、すでにリタイアして自己探求を目的としている人ならもっと自由な選択がありますが、結構具体的に卒業後の労働責任があるアラフォーにとって、このような「大人な選択基準」は大事だと思います。

海外MBAを諦める

海外MBAのことをつらつらと書いていますが、僕はMBA学生ではございません。Professional Schoolと言われるセカンドキャリア用の社会人大学院です。なぜ海外MBAを選ばなかったかというと、

・学費が超高い

・勉強超大変

という2大へたれ理由からです。

学費が高いことは以前に述べました。アメリカのメジャースクールは学校力あるから行きたいけど、高すぎる。1,500万とかアホか、と。しかも2年も生活費かかるのかと。なので、最初はアジア・欧州のMBAを考えていました。

第一候補はINSEAD。学費1,000万くらい掛かりますが、10ヶ月で修了でき、シンガポールとフォンテーヌブロー(フランス。リヨンの近く)とドバイのうち2つのキャンパスで半分ずつ過ごすというのがかなり魅力的でした。次いでCambridge、Oxford、NSU、HKUSTというところ。そして、調べているうちに憧れのMITにMid Career MBAという1年コースがあるのを知り、これも候補に追加。それでも学費1,000万超しますが。

これらを綺麗に諦めた理由は、自分の英語力とGPA持ちスコア、そしてGMATの存在です。

まず、英語力について。

調査にあたり、僕は幾つかの学校のセミナー(定期的に日本でやってます)やウェビナーに参加しました。結論は、「こりゃ無理だ。ついていけん。」やってる内容はスライドから察しがつきます。ビジネス戦略論とかのイロハは知っているので、それほど衝撃的に目新しいものではありません(話すスケールはかなりでかいですが)。僕の場合、単純に英語が無理。早いだけではなく、アカデミック・ボキャブラリー満載で、かなりの双方向性を要求されます。要は意見交換。欧米ではPerticipation=授業参加のスコアを重要視しますので、黙って授業聞いて宿題やるだけだと100%落とされます。

次にGPAスコア。

GPAとはGrade Point Averageの略で、要は学部時代の自分の成績の平均点です。アラフォー世代の成績グレードはちょうど、優良可不可式とABCD式の境目にいると思いますが(これで年がばれる)、基本A=4, B=3, C=3, D=1で計算されます。で、僕の平均はGPA 3.0。

「え”?結構Aあったはずだぞ、俺」

はい。こういうことは起こります。愕然とします。計算方式の問題です。これは後ほど述べます。知らない人は多分驚愕します。

ともあれ、トップスクールの合格者のGPA中央値は3.6ぐらいです。ハーバードあたりは3.66。4が満点なので、つまりほぼオールAです。これに準ずるクラス(だいたいトップ20-50ぐらい?)でGPA3.0ぐらいが中央値。ちなみに、これで足切りされるわけではないですが、上位校に入るには僕の場合ちょっと低すぎ。

そして、最後にGMAT。

Graduate Management Admission Testの略で、MBAに入るにはこれのスコア提出が必須です。Verbal(国語)、Math(数学)、AWA(エッセイx2)、Integrated Reasoning(統合問題)から成り、文章力と数学を軸とした論理性を図る試験です。800点満点。コンピューター上でのテストになります。トップスクールは700点が基準です。もちろん600点台後半で入る人もいますけど、これはかなりエッセイか推薦状がイケてないと難しいでしょう。どんなもんだろうと、ざっと問題を見てみると、そもそも問題の意味がわからない(全部英語なんで)。しかもVerbalは英語ではなく「国語」という定義なので、ネイティブレベルを前提とした問題になり、TOEFLで四苦八苦している僕には高得点なぞ無理。それ以外をパーフェクトに持ってく必要がありますが、僕は文系出身でして数学苦手です(代数幾何だけ得意だったが)。

これらのことを考えると、GPAスコアは不利なので、TOEFLとGMATの勉強を並行して相当頑張らねばならぬ。GMATは過去5年履歴とハイスコアを見るのだが、1年に5回しか受けられないので、空打ちはできるだけ避けねばならぬ。管理職なので、業務と並行して勉強なんぞ100%無理、まず会社を辞めねばならぬ。そして目標レベルを考えると半年から1年は鬼修行しなければならぬことがはっきりしました。

ここから無職1年やって、試験はギャンブル。持ちスコアが微妙だったら1年延長?そのうちアラフィフになっちまうよ。これは、、、無理じゃね?

ということで海外MBAそのものを諦めました。これが、僕が35歳ぐらいならやってたかもしれません。

そこで、僕は次の選択に移行しました。

・学校力があるところ

・GMATなしのMBAか通常の専攻大学院

・良さそうなCertificate Program

こうなってくると、きゅーっと絞られてきます。

ともあれ、アラフォーで純ジャパの皆さんが留学を考える時、英語とGMATは強敵です。まだアラフォー前半、つまり35ぐらいの方は、なるべく早くTOEFLとGMATを受けて、修行して持ちスコアをあげてください。GMATは過去5年の最高スコアが適用になりますので、時間をかけて頑張れば700いけるはずです。TOEFLも1年勉強すればかなり上がります(僕は30点台から80点台まで上げた)。

40過ぎちゃった方で英語も数学も苦手な方。もうギャンブルです。数学は得意だが英語はダメな方。あなたもギャンブルです。先ほど僕は数学苦手で諦めたと言いましたが、実はGMATの数学問題はそこまで高難度ではありません。進学校の高校を出ていれば大丈夫。問題は、それを英語で読み解きできるかです。そして、もし英語は超得意だという方。まずGMAT受けてみましょう。ていうか、なんで今まで留学しなかったの?(笑)

というわけで次回は、留学に必要な試験、提出物等について。


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