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[読後感想]「分散」ネットを取り戻せ―『After GAFA 分散化する世界の未来地図』

(Image by Calsidyrose  CC BY 2.0)

インターネットの空間が、「中央集権」で傍若無人な「信頼」されないサービスの舞台とみなされてから、どれぐらいたったか。

「自律」「分散」「協調」を特徴としたインターネットがなぜこうなってしまったか。そして、GAFAに象徴される「中央集権」のインターネットから、本来、目指してきた「分散」の自由なインターネットを取り戻すには、何ができるのか。

それが"こばへん"小林弘人( Hiroto Kobayashi )さんの新著『After GAFA 分散化する世界の未来地図』(2/29発売、KADOKAWA)を貫いているテーマだ。

いち早くその校了ゲラを読ませていただいた。

316ページの分厚い本の中で、「中央集権」(言及47回、以下同)の象徴としての「GAFA」(247回)、さらに「分散」(97回)と「信頼」(56回)を取り戻す手立てとしての「ブロックチェーン」(243回)が論じられる。

この言及回数から、小林さんの熱量が何に対抗し、どこに向かっているのかが窺える。この本は、「分散」したインターネットを取り戻すために、小林さんが“革命”を呼び掛ける扇動のテキストだ。

その特徴は、本書の書き出しにある「ツァイトガイスト(時代精神)」。

一般のユーザーにとってインターネットの黎明期だった1994年にテクノカルチャー雑誌『ワイアード』の日本語版を手がけた小林さん。その小林さんが、リードし、伴走してきたこの四半世紀を、その時代の空気と文脈とともに描く。

「分散」の理想から、「中央集権」のインターネットが、いかにできあがってしまったか。それが、同時代の証言として検証されていく。

そして今、ブロックチェーンなどのテクノロジーをめぐって、最前線で何が起きているのか、そこにはどんな可能性があるのか。それを小林さんが立つ最前線から解説する。

だが、その先には何があるのか。

テクノロジーによって、何がしたいのか。どんな価値を見つけ出し、社会をどう変えていきたいか。まさに「世界の未来地図」をつくるのは自分自身。それが、小林さんの結論だ。

テクノロジーの現在地と未来の展望が見えずらい、と思っているのなら、まさにそんな人のための本だ。

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