介護現場とICT

介護業界で勤め始めて8年目.この1,2年の間に私の勤務先にも記録システムが導入された.私は,もともと「字を書くよりもPCで入力するほうが楽だし早いし修正も簡単」と思っていたので,この導入はとてもありがたいと感じていた.※介護現場では非常の多くの記録物を残す必要があるのだ.

しかしながら,実際にはスタッフの多くが難色を示した.「PCの操作,入力に不安がある」ということが主な原因だ.介護現場には多様な人材が働いている.老若男女,バックグラウンドや年齢層も幅広いし,介護の仕事をしている理由や介護に対する想いも様々だ.そんな中で,一定数の拒否反応がみられることは想定の範囲内ではあった.そのため,事前研修をできる限り丁寧に行うことに努めた.研修後の反応は概ね良好で,「まあ,これならなんとかできるかもしれない」という声も多く聞かれた.

ところが,導入からしばらく経過した現在,情報格差とそれに伴う連携不足に悩まされている.

どうにか皆,必要な記録を残すことはできている(記録にかかる時間の差はあれども).しかし,必要な記録を拾うことがうまくできていなかった.見ているようで見ていない.情報収集が苦手な職員が言うには,「見る(読む)だけでかなりの時間がかかってしまう.そのため,見る(読む)時間がない」と.一方,PC操作が得意な職員は入力を終えるとさっと帰ってしまう.帰り際、残る職員への申し送りが減ったのだ.

チームで取り組む介護現場において,情報共有,多職種間連携ができないということは致命的な問題だ.

いかに有能なIT機器が導入されようともフェイストゥフェイスのコミュニケーションが不要になることはないと思う.実際にこんなやり取りを見かけた「○○さんのご様子どうだった?」「入力してありますよ」.いや,記録することは大事だけど…

大切なのは,情報共有がタイムリーに行われ,その情報をどう活用していくのかということ.共有された情報を,把握していることを前提に,より質の高いコミュニケーションが求められるべきではないか.それこそがAIにはとって代わることができない介護職の専門性であり,強みになると考える.

まずは記録の仕方と見方,何でもかんでも記録して,何でもかんでも見るのではなく,一定のルールのもと情報の精査,選別ができるようになることから.まだ先は長いが,介護職員も機器や情報に振りまわされるのではなく,使いこなせるようにならねばならない.

「介護」や「終活」の情報を堅く、重苦しくなく伝えています! その他、「仕事と介護の両立」や「介護職員のキャリア支援」に取り組んでいます。