希望の光がそこに:データとAIで高齢化社会を支える医療機関を支援 (2021/10/6、ニュースリリース)

※米国マイクロソフトからブログ更新のお知らせがニュースリリースで来ました!

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希望の光がそこに:データとAIで高齢化社会を支える医療機関を支援
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※本発表は、アジア太平洋地域時間 9 月 30 日に公開された ”Silver linings: How data and AI are helping healthcare organizations support our aging populations” の抄訳を基に掲載しています。

日本やシンガポールのようなアジアの高所得国家では、今生まれた子どもが 90 歳以上まで生きることも想定できます。医療や技術の進化によって、寿命はさらに伸びるでしょう。事実、アジアの「シルバー世代」、つまり 60 歳以上の人口は、2010 年から 2050 年の間に 3 倍にまで増加し、13 億人近くに達すると予測されています。

しかし、シルバー世代へと足を踏み入れる人が増加する中で、多くの人は新たな課題に直面するようになります。糖尿病や心臓病、一部のガンなど、加齢による慢性疾患が、アジア全体で生活に影響を及ぼしており、すでにリソース不足となっている医療分野への大きな負担となっているのです。

長寿によって生活の質を落とさないようにするにはどうすればいいのでしょうか。また、この分野でデータや AI をどう活かせばいいのでしょうか。

■高齢化に対する考えを変える

患者にとっても、医療従事者にとっても、社会全体にとっても、予防が治療よりも良いということは皆わかっています。

世界経済フォーラムによると、高齢化社会のニーズに対応するには、高齢者はもちろん、若者や中高年にもフォーカスしたプログラムを早期に開始する必要があるとのことです。生涯にわたって患者をケアすることで、医療従事者は予防に向けたサービスが提供でき、それが最終的に高齢化による生活や医療システムへの悪影響を軽減することにつながります。

もちろん、このことは医療業界のお客様やパートナーもすでにご存知だと思います。皆、受身的な施策から予防的な施策に変えていかなくてはならないことをすでに理解しており、そのためにはより長期的で包括的な患者ケアが必要なこともわかっています。そこで何に苦労しているかというと、このような施策を進めるにあたって必要な患者データを取得すること、そしてその施策に取り組む時間を確保することです。

Microsoft Azure上に構築されたアプリHalza
< https://news.microsoft.com/apac/features/halza-keeps-family-medical-records-safe-in-a-mobile-vault-built-in-the-cloud >は、患者が自分の医療データを安全に保存し、追跡し、共有できるというソリューションです。
このようなソリューションにより、患者が自分の健康情報を管理する手法が再構築されています。
ただ、医療従事者の状況はこれとは異なります。

看護チーム内やチーム間では旧式のOSが使われていたりサイロ化された状態になっていたりすることから、多くの医療機関では患者データの収集や管理、分析、共有に課題を抱えています。一方、ほとんどの地域では医療スタッフ不足の影響も出てきています。
東南アジアだけでも190万人< https://www.who.int/southeastasia/news/detail/07-04-2020-countries-in-who-south-east-asia-region-need-1.9-million-more-nurses-midwives-to-achieve-health-for-all >の看護師や助産師が不足しており、COVID-19の感染が広がってからはこの分野の人手不足がより深刻さを増しています。

しかしマイクロソフトでは、お客様やパートナーが最先端のテクノロジを使ってこうした課題に真っ向から立ち向かい、予防的かつ積極的なケアを提供して最も効率的に高齢化社会をサポートしようとする様子を目の当たりにしています。

■問題が大きくなる前に把握を

循環器疾患は、アジアにおける死因第1位
< https://www.oecd-ilibrary.org/social-issues-migration-health/health-at-a-glance-asia-pacific-2020_cce902d8-en#:~:text=Cardiovascular%20disease%20(CVD)%20is%20the,int%2Fdata%2Fgho). >となっており、高齢化が進むにつれその問題は深刻化する一方です。また、医療従事者が早期に診断を下し、効果的に対処することが困難な疾患であるという問題もあります。

患者が心臓発作を起こす可能性を医師が把握できるような予測ツールは存在しますが、こうしたツールの多くは欧米のデータでトレーニングされていて、地域的なリスク要因は考慮されておらず、同じ精度で結果を得ることはできません。

この状況を、インドのApollo Hospitalsが変えようとしています。

Apollo Hospitalsは、マイクロソフトのAI Network for Healthcareと提携し、インドでの使用に合わせた心臓リスクスコア
< https://news.microsoft.com/en-in/features/microsoft-ai-network-healthcare-apollo-hospitals-cardiac-disease-prediction/ >を作成、医師が患者の心疾患リスクをより高い精度で予測できるようにしました。
Apollo Hospitalsではその後、Azureプラットフォーム上で連携学習を利用し、国際的にスコアを検証しました。

Apollo Hospitalsのチームは、10年以上にわたってインド各地から40万人もの患者に関するデータを収集しました。その匿名化されたデータを、Azureを使って実用的なインサイトへと変換し、データサイエンティストや臨床医が機械学習モデルのトレーニングで使えるようにしたのです。

Apollo Hospitalsが開発したスコア付けツールは驚くようなものでした。
データ処理のスピードが速いだけでなく、患者の冠動脈疾患発症の可能性を予測する精度も高かったのです。事実、その精度は既存のモデルより最低でも15〜30%ほど高くなっていました。

これでApollo Hospitalsの医師は、リスクのある患者に対して予防的かつ先制的、また防止的な医療を提供するにあたって必要なものをすべて手に入れたことになります。
これにより、患者の生活向上が実現するのはもちろん、医療システムの負担軽減にもつながります。

■病院の壁を超えた医療の拡大

世界の多くの地域と同様に、アジアでも遠隔医療やその他バーチャル医療の仕組みがここ2年で急増しました。この遠隔監視ブームは、医療従事者のCOVID-19対策に役立っているだけでなく、高齢患者の治療方法にも大きく影響しています。

例えば長崎県の離島地域では、医療従事者不足のため専門的な検診を受けることが難しく、離島で専門医の診察を受けるのはほぼ不可能な状態です。こうした状況は、関節リウマチのような複雑な症状を抱える人にとって深刻な問題です。
高齢者や移動が困難な人は、必ずしも治療のために本土に向かえるとは限らないためです。

それが今では、長崎大学などの取り組み
< https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/1351386748036899595-nagasaki-university-health-payor-microsoft-365-ja-japan >により、離島の診療所に専門医を送り込める< https://www.youtube.com/watch?v=C5C2sbjrypo >ようになりました。
Microsoft HoloLens 2と、Azure Kinect DK、Microsoft Teamsを活用した複合現実体験(Mixed Reality)によって実現したのです。

同大学の関節リウマチ遠隔医療システムでは、地元の診療所で患者の手を撮影し、ホログラムをリアルタイムで作成します。専門医は3D画像が入手できるので、関節の動きを見て患者の状況を遠隔からでも確認できるようになります。
Teamsも同時に使うため、対面でのチャットに似たパーソナル体験のようにもなっています。

台湾では、車椅子メーカーのKarma Medical
< https://www.karmamedical.com/ >がAzureのIoTテクノロジとDynamics 365 Connected Field Serviceを活用し、医療従事者が患者を遠隔地からモニターできるようにしています。Karma Medicalの
スマート車椅子であるiBuddyを利用することで、看護担当者が患者の日々の使用状況を追跡し、最適なメンテナンスを実施したり行動習慣をリアルタイムでモニターすることができ、診療所の枠を超えて高齢患者の状況をより深く理解できるようになっています。

また、オーストラリアでは、マイクロソフトとシンガポールのパートナー企業Napier HealthcareがMobile Rehab Australiaを支援し、在宅の高齢者に向けたリハビリおよび回復健康プログラムを
拡大しようとしています。Napier Healthcareは、Mobile Rehabが安全に患者データにアクセスできる環境を整えており、その結果Mobile RehabとAllied Health Professionalがつながって連携し、よりパーソナライズされたケアが提供されています。また、Mobile RehabではAzure AIの採用を予定しており、リソース管理やルート計画をより効率的に実施するにあたって必要となるインサイトを入手したいと考えています。

こうしたイノベーションにより、医療機関はより効率的な看護提供体制を整えることができました。
それだけでなく、歳を重ねても自立して生活できるようなツールを提供することで、高齢者の生活の質も向上しているのです。

■人生を最大限楽しむ

医療従事者が予防医療を提供するには、データとAIの重要性を強調せざるを得ません。
同様に、コネクテッドデバイスや遠隔監視技術の利点も見逃せないものとなっています。
しかし、その展開の中で最も面白いのは、デジタル化によって高齢者が家の外の世界とつながりを保てるようになったことです。

例えば、ニュージーランドのRyman Healthcare施設の入居者は、最近世界初の定年退職者向けバーチャルゲーム
< https://news.microsoft.com/en-nz/2021/08/05/a-virtual-games-that-wins-the-gold-medal-for-innovation/ >に参加しました。

東京オリンピックからインスピレーションを受けたRyman Healthcareのチームが、マイクロソフトのパートナーであるAward Groupと連携し、数週間にわたる没入型イベントを開催したのです。バーチャルゲームでは、オーストラリアとニュージーランドの42の村から入居者が集結、SurfaceデバイスやAIテクノロジ、複合現実ヘッドセットのHoloLensを使ったこのゲームは大成功を収めました。

コンピュータビジョンを活用したボーリング大会や、没入型拡張現実ツールで作られた土地でのサイクリングレース、2国間の入居者対抗による大規模パブクイズなど、Ryman Healthcareのバーチャルゲームによって入居者は活動的になり、社会との関わりが保てるようになり、より充実した日々を過ごせるようになっています。

高齢化が進むにつれ、こうした取り組みはますます増えてくるでしょう。
マイクロソフトのパートナーやお客様は、長寿によって生活の質が犠牲になることのないよう取り組んでいます。というのも、テクノロジは若者が使うものだと思われがちですが、高齢者へのメリットはさらに大きいかもしれないためです。

●本ブログの詳細につきましては、日本マイクロソフト広報資料サイトをご覧ください。
< https://news.microsoft.com/ja-jp/2021/10/06/211006-silver-linings/ >

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