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デジタル人民元は一帯一路経済圏の基軸決済通貨を目指す

発表された、深センでの5万人のデジタル人民元・実証実験について。

相変わらずと言いますか…動画のコメント欄を見ると中国蔑視がすごいですね(笑)。これは配布額の問題でもない、配布人数の問題でもない、共産党の問題でもありません。そのような言動を繰り返しているから、今の日本があるのでしょう。

感情的な排除は、無意味です。日本人は、何が起きようとしているのかを客観的かつ冷静に捉え、仕組みを造る側になれるのか、仕組みを利用する側のままなのかを分析する必要があります。現時点では後者。

この件については、リップル共同創業者クリス・ラーセンの先週の発言が参考になると思います。異論を唱える人は皆無でしょう。

リップル社の共同創業者であり、決済テクノロジー企業の取締役会会長であるクリス・ラーセン氏は、中国は次世代金融システムを設計したくて「うずうずしている」と述べ、米国は 「大きく遅れをとっている」と述べた。

先週開催されたLAブロックチェーン・サミットでの講演でラーセン氏は、世界の金融システムの支配権を握る命運がかかっている中国と、技術的な冷戦状態にあることを米国は認識する必要があると述べた。今のところ、中国が勝っている、とラーセン氏は言う。(Source:Here

これがまさに、客観的で非感情的な現状認識です。現状を正しく認識するところから、未来が創れます。逆に正しい認識が出来ない場合、戦略の立てようがありません。同盟国であるアメリカすら遅れを取っている状況です。

さらにクリスの発言の要点をまとめてみます。

✅中国は次のシステムを設計する側になりたがっている
✅中国の技術投資は1.4兆ドル、ブロックチェーンは優先度トップ
✅米国の規制環境が金融イノベーションを大いに阻害している

最後に、こちらは長文ですがそのまま掲載しておきたいと思います。

「私たちはここで変化しなければなりません。そうでなければ、世界の金融システムに対するリーダーシップや受託責任を失うことになります。それは悲劇だ」と述べた。

ラーセン氏はまた、規制環境が改善されなければ、彼の会社は米国を出る可能性があるとも述べています。

アメリカのフィンテック企業のトップに、ここまで言わしめる状況なのです。日本人は上段から中国を見下すのではなく、米中双方から学ぶ謙虚さを改めて身に付けるべき。…と思いつつも、世界的なプラットフォームを1つも生み出していない日本の「フィンテック技術力」が、もはや今後も世界に通用することはないのでは?という予感すら脳裏をよぎるのです。ただ、それでも死ぬわけではありません。

アメリカは未だにクレジットカード社会から抜け出すことが出来ず、デジタル決済(QR決済)すら共通プラットフォーム化出来ていません。アメリカで言う「キャッシュレス」は、クレジットカードなのです。そしてアメリカ政府は、中国発のテクノロジーを排除しようと動いてきました。

一方で中国では、自動販売機がQR決済に対応して久しいです。

(画像:2018年11月に筆者が撮影)

画像は、北京市内のとあるホテルに設置されていた自動販売機です。AlipayかWeChat Payしか使えない。現金を入れるところすら無いのです。これはこれで不便でしたが…「変える時は一気に変えてしまう」中国の潔さが分かります。ビジネスホテルですから…国際出張者には優しくして欲しい(笑)。

※IDの無い日本人は中国でAlipayやWeChat Payを使うことが出来ません

アリババのフーマフレッシュでも、買い物すら出来ません。

(画像:2018年10月に筆者が撮影)

過去の遺産=レガシーの存在を大事にすればするほど(規制を設けて保護すればするほど)、新しいインフラのイノベーションが起きないことをクリスは暗に述べています。それはハード的なものだけではなく、ソフト=思考においても同様です。

中国発のイノベーションは、私は「人」から始まって「人」で伸びていると思っています。もちろん、14億人すべてがそうであるわけはなく、中にはこちらの精神を破壊しそうなほどの強烈なクチャラーも多いですし、公共の場で大声で話し続ける人も多いですし、道端に座ってご飯を食べてる人も見かけます。そういう大衆的なところではなく、今イノベーターと言われている人たちの視座が、かなり前から高かった。そこに今注目しています。

そういう人材は、パッと出てくるわけではないと思います。ある程度の年月をかけてソフィスティケートされ、時代に選ばれる。14億人の国家で醸成されるダイナミックな視座は、日本人が学ぶべきもの。日本人が中国を訪れる機会がまだまだ少ないです。

話を元に戻しますが、深センで行われるデジタル人民元のトライアルは、たった5万人でも良いのです。5万人でTrial&Errorが出来れば、他の都市でも実証実験が出来ます。最大母数は将来的に14億人となり、やがて一帯一路経済圏に横展開出来る。

目的はもうお分かりですよね。一帯一路経済圏確立による中国元の国際化への布石と、ドル決済システムに依存しないインフラの構築です。中国元は、国際化してドルを打ち負かす必要はなく、経済圏の中で国際化を果たせば良いと中国政府は考えているでしょう。

この動きを受けて、日本も本腰を入れるようです。

日米欧の中銀グループが同日に公表した実際に発行する際の基本原則に沿ったもので、デジタル通貨の準備で先行する中国への警戒感がにじむ。日米欧と中国でデジタル通貨の主導権を巡る争いに発展しつつある。

まだ日米欧にこだわっているので、進まない予感しかしませんが…通貨だけ考えてたらダメで、フィアット通貨を超える利便性とライフインフラとの統合があって然るべきなのですが…GoToキャンペーンのクーポンを強制的に100%デジタル化出来なかったソフト=思考を総取り替えしたいところです。

↓こんなことしている場合ではありませんねぇ。「名簿を見ていない」とは言えない印鑑の存在と私利私欲。

本日もお読み頂きありがとうございました。

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