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フィリピンという国


大きな経済格差
セブ島、ボラカイ島などのビーチでも知られるフィリピンは、7000を超える島から成る、人口約9400万人(2010年現在)の国です。
1521年にマゼランがセブ島に上陸して以来、約300年間スペインの植民地となり、その後は、1946年の独立までアメリカの支配下に置かれるなど、欧米の影響を強く受けてきました。人口の80%がカトリックを信仰しているキリスト教国です。
国内の主要産業は農業。ほかのアジアの国々が工業分野で急速な経済成長を遂げるなか、フィリピン経済は足踏み状態が続いています。国内の格差も大きく、10%の富裕層が、国家所得の90%を握っているといわれています。
貧困層のなかには、1か月の世帯収入がわずか1000ペソ程度という家庭も多くあります(日本円で2000円程度。マクドナルドのハンバーガーセット60ペソ、大衆的なレストラン1食分100ペソ)。
子だくさんの家庭が多く、厳しい経済的事情から、都市部には家族と一緒に路上で暮らしているストリートチルドレンが多く見受けられます。過酷な環境のなかでも家族で助けあって暮らしている場合もある一方、親の虐待・育児放棄が原因となって家庭から離れ、子どもだけで暮らしているケースもあります。

世界に広がる労働力
フィリピン国内では、雇用の機会が十分ではありません。国外での雇用を求めて、出稼ぎに出るオーバーシー・フィリピン・ワーカー(OFW)が大勢います。その数は、人口の1割弱にのぼり、彼らの一年間の送金額は188億ドル(2010年フィリピン中央銀行発表)になります。これはフィリピンの国家予算に匹敵する金額です。彼らが外国でつく仕事は、決して、良い条件とはいえない仕事も多いのですが、海外での雇用を斡旋する業者が新聞に広告を連ねていたり、都市の中心部に海外雇用専門の職業安定所があったりと、海外で働くことが、ごく自然な選択肢のひとつになっているように見受けられます。親や兄弟を養うために海を渡るOFWは、祖国に残る家族にとっては英雄のような存在。幼い子どもがいる父親、母親が兄弟や両親に子どもを預けて単身で海外に働きに出るケースも珍しくありません。
日本では、1980年代以降に多くの女性が飲食店でダンスをしたり歌ったりするエンターテイナーとして働きに来ました。知り合った日本人男性と恋愛関係に至り、結婚して幸せな家庭を築くカップルも出てきました。その一方で、子どもが生まれたあとに関係が終わった、または男性からの音信が途絶えてしまったケースも少なくありません。こうして父親不在となった子どもたちは、2~3万人にのぼるといわれています。こうした子どもたちのアイデンティティ確立、経済的自立を支援しているNGOもあります。

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