真面目で勤勉であることの弊害

私が就職をしてから丸3年が経過した。
新卒4年目の人間が社会一般的に一人前とみなされるかどうかは定かではないが、まぁよく「まず3年働いてみろ」と言われることを考えるとその最低ラインはクリアできたという事だろう。

3年働いていると、その間に後輩が出来るわけである。
うちの会社は中途入社も多く、特に新卒から2年以内にやめて転職してくる人も少なくない。特に他業種からの転職組は事実上新人と同じ扱いになるわけだが、そういう人も含めると同じ案件に数人の後輩がいて共に仕事をしている。

さて、そういう数人の後輩を見ていて思ったことがある。
彼らはみな真面目だからサボったりとかしないし、学歴も高いので基本的な知的能力も有している。
しかし、そういう人たちだからこそ、ある罠にはまっているのではないかと感じている。

どういうことか。それは
最低限の能力があり、かつ真面目で残業も厭わない人、そういう人は仕事を力技でクリアしようとしてしまう傾向があるのではないか
という事である。

私は怠惰な人間である。その上、体力も無くて体調を崩しやすい面もある。
だから残業なんてしたくないし、少しでも早く帰って早く飯を食って早く寝て翌日に備えたい。
実際に私の月間の残業時間は10時間に満たないし、それどころか会社の制度を使って月に何度か早退することもある。後輩は毎日のように多少なり残業しているにもかかわらず。

しかしそれでも仕事は回っているし、むしろ特にこの1年間でやらせてもらえることも権限も増えた。上司や会社からも一定の信頼を勝ち取れていると自負している。

なぜそうできるのか。
単純なことで、私は定時に帰る(隙あらば早退もする)つもりで仕事をしているだけなのだ。

あるタスクが降ってきたときに、どうすれば定時内に完了して納期に間に合わせられるかというのを最初に考える。
他の抱えているタスクと優先順位を考えてみたり、そのタスク内でやらなければならないことを整理して効率的な方法を考えたりするし、もしそれでもどうしても間に合わないと思えば納期の交渉もする。

そしていざその仕事にとりかかった時は全力で行う。深く集中して一気に片付ける。必要なら2つでも3つでも同時進行で処理する。
仕事の性質上、コンピュータに計算させているのを待つだけの時間というのが発生しがちなので、そういう時間を上手く組み合わせれば同時並行は不可能ではないのである(流石に3つも同時にやっていると結構混乱するが)。

一方で「真面目で勤勉な」後輩たちは、どうも「残業する」というのを前提にして仕事をしているように思う。
確かに大抵の仕事は時間さえかければどんなやり方でも終わるだろう。そして最低限の能力はあるから難しい方法でもなんとかクリアしてしまうし、それが定時を1時間2時間と過ぎていても平気な顔をしている。
しかしそれでは私はダメだと思うのだ。

結果的に終わっているならいいじゃないか、という意見はあるかもしれない。またいくら残業していると言っても月に40時間を超えるようなことは基本的には無いし、またうちの会社は給与体系としてみなし残業分が結構ある(その範囲を超えることは滅多にない)ので、別に人件費が膨らんで会社に迷惑がかかるというようなこともない。
確かに短期的な目線ではその通りだと思う。しかしもう少し長い目で見ると、そのやり方を続ける限りは中々「成長」しないんじゃないかと思うのである。

簡単な仕事をしているうちは力技で何とかなっても、少し難しい仕事が来た時や、たまたまタスクが立て込んだ時にはそれだけでは太刀打ちできなくなる可能性がある。
普段から残業しているともう余力がないので柔軟な対応は難しくなるという面もあるし、またどうすれば効率よくこなせるか分からないのでいつまで経っても処理できる仕事の量が変わらないという面もある。

ましてや我々は技術系の専門職である。
仕事の中で技術を身に付けてどんどん成長していかなければならないのに、目の前のタスクを工夫もなく力技でこなすことだけを考えていたらいつまでもより良い方法を身に付けることができない。

繰り返すが、私は怠惰な人間である。
嫌いな言葉は「努力」だし、失敗したけど頑張ったから偉いねなんてのが認められるのは小学生までだし、同じ成果なら当然より少ない時間と労力でアウトプットできた方が偉いと信じている。
同時に、仕事である以上は求められている以上のクオリティを出さなければならないとも思っている。適当なものを出すようじゃ仕事をしていると言えない。

だから私は必死になって、楽に、素早く、かつより良く行う方法を調べたり考えたりする。
その結果として自分がやっている仕事に関してはかなり知見もたまってきて技術が身に付いたと思っているし、その結果としてどんどん仕事の速度も精度も高まって行っていると思っている。

常に余力がある、そして素早く仕事をこなすスキルが身に付いている、その結果として仕事を依頼されたらパパっと処理してすぐにアウトプットを提出できる。頼んだ仕事の結果がすぐに出てきたら頼んだ側は嬉しいもので、私のことを評価してくれる。だから残業しなかろうが、時に早退しようが、こいつはそれでも仕事が遅延したりクオリティが低下することは無いぞと思ってくれているからこそ寛容な目で見てくれるのだと思っている。

別に自分の自慢をしてドヤ顔したいわけではない。
ただ、私の後輩のような真面目な人が、その真面目さゆえに損しているのがなんか勿体ないなと思うのだ。
もちろん世の中には真面目なうえに凄いスピードで成長もしていくスーパーマンもいる。そういう人には私は当然太刀打ちできない。
でもそんなのは一握りしかいないと思うし、我々凡人は良い意味での怠惰さを身に付けるべきなのだろう。「全身全霊を以て怠惰になる」のだ。少しでも複雑な仕事を任されたら「うわめんどくせ、楽にやる方法ないかな」って最初に思わなければならないのだ。

別に怠惰であることは誇るものでも何でもないが、なんとなくそれが自分にとってはプラスに働いているように思ったからこんな話を書きなぐってみた。誰かの参考に・・・ならなくてもいいや。ただこういう考え方もあるよというのが伝わり、面白いと思う人がいればそれでいいかな。

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