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美容師が思う「色」の話


ここ数年、空前のブリーチブームで、サロンでもブリーチ&カラーのオーダーが多い

髪をBLEACHしメラニン色素を破壊する事で、ベースの髪色を白に近づける
そうする事により上から塗布するカラーの発色を良くする事が目的

ヘアカラーがここまでヴィヴィッドになった背景には、Instagramの流行が要因だと思ってる

2014年2月にInstagram日本語版が開設されて以降、2017年の流行語「インスタ映え」を経て今に至る流れの中で、美容師やアーティストを中心に、多種多様なブリーチ&カラーデザインがInstagramで発信されてきた

80年代〜90年代にもすでに”外国人風ハイライト”や”ヴァレイヤージュ”、”インナーカラー”はあったが日本ではまだ一般的ではなく、今ほど街のあちらこちらで見かけるデザインではなかった

(ちなみに「映え」が流行語大賞になった時点で、すでに終わっているワードだと思っていた。おじさんが流行語大賞に選ばれた言葉を無邪気に使うのはみっともないので私は使わない)

何はともあれ
自由にヘアカラーを表現する事を、誰もが可能になり、誰もが簡単にヘアカラーの情報にアクセスできるのは本当に素晴らしい時代だと思う

その半面で
「色」の捉え方や見え方も人それぞれで、世間一般では「色」の認識にかなりズレがあるなと常々思っている


2015年に私がblogに書いた「“グレー”と”アッシュ”という色について」という記事を思い出したのでそのまま転載する (http://acqua.co.jp/blog/2655.html)
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“グレー”と”アッシュ”という色について

最近ちょっと考えることがあった。

グレーヘア、すなわち白髪

髪の毛一本一本が自然にグレイになる事はなく、白い毛と黒い毛が混ざって生えていて全体としてのイメージがグレイになるからグレイヘアと言われる所以

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さて、ここからはヘアカラーの話。

髪の毛をあえてグレイに染める事を髪の毛業界では一般的に“アッシュにする”と表現しています。

染める素材が白い紙や布であれば、単純にグレイのカラーをのせれば良いのですが、何しろ相手は髪の毛、真白である可能性は皆無。

黒、茶、黄色の髪の毛を自由自在にグレイ(アッシュ)にすることがどれほど難しいかという毛髪科学や色彩学をくり広げたいところだが、ここでは割愛させていただく。興味がある方は行きつけのヘアサロンで聞いてみてください。

全国のおしゃれ女子(男子)がヘアカラーをする時のオーダーは、髪を赤や緑や黄色に変えたいというより、「少し明るく軽くしたい」という声が圧倒的に多い。

そして人気色の「アッシュにしたい」と同時にそれはつまり外国人風の透明感や、やわらかい質感になりたいということと同義語だと感じている。

おやおや?アッシュやグレイっぽい色とは、色ではなく“透明感”や“質感”なの?もはや色の話からかなりズレているではないか。

しかしここで面白いのは、そもそも色を”立体”として認識している事。そうなのです、色と質感は切っても切れない関係なのです。

色を見ているようで質感を見ている、質感は見るというより経験からの想像なのかもしれない。ここに時間軸も加わると経年劣化で色あせるといったイメージまで広がる。

もしかしたら”色”って平面ではなく、もっとボヤっと抽象的で、しかも4次元的概念なのかもしれないのかな?などと考えてみた。。

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先日山田詠美さんの著書4 Unique Girlsを拝読させていただき、その中に”アンチ透明感”という話があった。透明とは色を持たない事で、日本人はなんでそんなに透け透けになりたいのか、透明人間にでもなりたいのか?もっと色を出せといった内容。だったと思う。

(私の説明がずいぶん雑なので山田詠美さんには大変申し訳ないのだが)なるほど、私も美容師として透明感至上主義から脱却して、ゲストにもっと色をつけてあげられるヘアカラーの提案をしよう。

グレイはいろいろなシチュエーションで溶け込むことができる人気の色。

実は私ITOもグレイという多彩なカラーが大好物、グレイグラデーションのファッションに中性的なアッシュのヘアカラーが似合っている女性などを目の当たりにするとかなりシビれる。

そして私のヘアカラー、ここ何年か黒髪だったが調子にのってアッシュにしてみた。

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ダメだ、見事に似合わない。女子スタッフからも不評。

さっそく黒髪に戻そう。


2015.4.23 kazuaki ito

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そうなんだよなー
我ながら7年前に良い事を書いてるなーと感心する

ここで書いているのは、つまり
色=質感ではないが、かなりの部分で似通った概念だと言う事

最近でこそ減ったが、いまだにパーソナルカラー診断信仰がある
紙にプリントされたカラーで、4シーズンに当てはめるアレ

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私はオータムよとか、あなたはウィンターで日本人には珍しいタイプねとか

で、その肌色に合わせて似合う色を決めるパーソナルカラー診断

完全否定はしないが
色だけで似合わせ判断するなど、なんて薄っぺらい決め付けなのかというのが第一印象

一時は美容メーカーでさえも、美容師向けに4シーズンのカラー診断セミナーを行っていた
このセミナーに参加した当時の私は、机上の空論に心底落胆し、本気で日本人のヘアカラーに活用しようとする人達に唖然としたと記憶している

前出の私のblogでも書いているが「色は立体」だ
そして動く、流れる、移ろう。四次元なのだ

自分に似合う服なども、パーソナルカラー診断だけで決めようものなら、大抵はおかしな事になる

同じ色の服の生地でも、シルクとベロアでは光沢や奥行きが全く違うし、ウールとリネンでは見た目の温度感や雰囲気も違う
服のシルエットでも随分と印象が変わる

コスメも
マットやシアー、グロッシーでは、色が同じであっても似合う似合わないが変わってくる

ヘアカラーでも同じ事が言える
髪色で似合わせを決める要素として、直毛とクセ毛では光沢や質感が違う事も考慮しなければならない
細毛と太毛では光の透け具合が違う、メラニンのバランスも違う
スタイリング剤でも色の深みが変化する
パーマのある無しや、ショート〜ロングのレングス違いでも印象は変わる

そもそも日本の社会は単一民族黒髪ベースで成り立っている
黒髪とは、赤黄青のメラニン色素が混ざり合って”黒に見える色”を形成しているので、褪色して赤みの強いブラウンや、黄色くなりやすいのはそのせい

黒〜ブラウンベースがデフォルトの髪色で、その上からパーソナルカラー診断で導き出した色を基準に似合わせを決めるのは無理がある

そう、「似合う色」とはただ単純に色の話ではなく、立体的であり時に情緒的な概念だと言うことを強調したい

ちょっと前に読んだ本で

「色のふしぎ」と不思議な社会 ―2020年代の「色覚」原論
川端裕人(著)

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色彩学の話なのかな?と思い読み始めたが少し違った

自身も色覚異常とされてきた著者が、色覚メカニズムや色覚検査の歴史や変化を社会学的にまとめている

色の認識も、個々の程度がグラデーションで繋がっているため、異常と正常の境目がなくなっていると書いてる
他人と自分が見えている色は同じではないという、色覚の多様性がわかる内容が興味深い

この本の中で「ザ・ドレス」の話題にふれている

SNSでバズった「ザ・ドレス」論争を覚えているだろうか
このドレスが「白×金」に見えるか「青×黒」に見えるか問題

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「ザ・ドレス」論争
私は白×金に見えたが、この本によると白×金は少数派らしく、青×黒が多数派との事

これは普段の生活の中で、どんな照明に慣れ親しんでいるかによって、ドレスに当たっている光の予測に違いが生じる。その結果、色の認識が変わるという見解

この本には書かれていないが、他にも研究結果はある

「非常に早起き」の人は「非常に夜更かし」の人と比べ、ドレスが金と白に見える可能性が高いと言う事がわかっているらしい

これも慣れ親しんだ光が要因なのだろう
うん、面白い
なるほど合点がいった、私は毎朝4:30に目覚める。ドレスにあたる朝の光を予測したのだろう

どうりでドレスが白×金に見えるはずだ

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より自由にヘアカラーを表現できるようになった今があるのは、美容メーカーの努力による薬剤の飛躍的な進歩もある

ブリーチから白髪染めまで、様々なヘアカラーが実現できる

イルミナカラーやアディクシーカラーの発売は特に革命的だった
クリーミーなアッシュやメタリックな寒色系が表現できるようになったのは、これらカラー剤の躍進のおかげ

ブリーチ毛の色落ちが早すぎる問題はまだまだあるが、この空前のブリーチ&カラーブームは今後もしばらくは続くだろう

固定観念に囚われる事なく、柔軟に新しいヘアカラーにトライできる今だからこそ、お客様の空間や心にフィットするヘアカラーを提案したい

ヘアカラーを通じて、あらためて「色」に関して考えていることをまとめてみた


そして私は今「抜きっぱなしブリーチ」
しかしブリーチはトップの薄毛に優しくない
キチいなー👨‍🦲

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ゴールデンウィーク、暇を持て余しているならヘアサロンで気分転換を!

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