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笑って許して <前編>

イギリス留学から帰国して、山口市秋穂の元々祖父母が暮らしていた家に住むことにしました。キッチンにローボードがあったらいいね、という話になり、ネットでリサーチ。一時は家具職人になりたいとすら思った僕なので、家具にはこだわりがあります。た、高いなぁ!とは、思ったものの一生使うものだから、北の住まい設計社のローボードに決めました。

県内の取り扱い店に電話すると取り寄せになるとのこと。すぐに欲しかったので、お隣福岡県の取り扱い店、『KifuL』さんに電話。運良く在庫があったので、見積書をFAXしてもらいました。やっぱり高いなー。よし、店長の木本さんに電話してダメ元で値切ってみよう。

「ローボード、これより安くならないですよねー?」
「すみません、出来ないんですよー。」
「じゃ、送料を安くしてもらえませんか?」
「ウチが山口まで運ぶので、高速道路の料金がかかってしまうんです」
「えー、下の道でのんびり来たらいいのに〜」

仕事では滅多に見せない驚異の粘りを発揮。とうとう高速道路料金片道分の値引きをゲットしました。強引すぎたかなー、納品のとき顔を合わせるのがちょっと気まずいなー、とも思いましたが、「家具は一生、気まずいのは一瞬」と思い直しました。

高速道路を使ったかどうかは不明ですが、木本さんは、にこやかにやって来てくれました。床に傷がつかないよう丁寧に養生して、重たいローボードを一生懸命運び込む姿を目にした僕の心は「しつこく値切ってごめんさない!」という思いでいっぱいでした。

木本さんに僕の作ったオートマタを見てもらうと、ずいぶん気に入ってくれたご様子。
「ウチで展示しませんか?」
と言ってくれました。
「帰りの高速代は僕が出しましょう」
とまでは思わなかったものの、
「ぜひ、展示させてください!」
とお返事させてもらったのでした。

<後編に続く>

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