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笑って許して <後編>

展示の前日、搬入でKifuLさんに到着。選び抜かれた家具や塗料、ブラシなど充実した品揃え。木本さんのセンスの良さが光ります。そんなセンスの良い人がなぜ僕の作品を気に入ってくれたのかは疑問の残るところですが。

初日と次の日が在廊日でした。僕は無名のオートマタ作家。KifuLさんはまだその場所に新装開店したばかり。影響力の少ない者同士のコラボレーションは、予想通りの展開に。ほとんど誰も来てくれないのです。

仕方ない。ノートを広げて新作のアイデアスケッチをすることにしました。しかし、心優しい木本さんは、そんな僕を放っておくことができません。いくら気を使わないでください、と言っても

「コーヒーいかがですか?ミルクとお砂糖はどうします?」
「これ、評判の良いパンなんですよ。ぜひ。」
「今晩、何か食べたいものあります?モツ鍋屋さんとかどうですか?」
「卓球お好きでしたよね?今晩、卓球しましょうか?」

とまるで竜宮城にでも来たかのようなおもてなし。お言葉に甘えて、モツ鍋をごちそうになり、卓球でも気持ちよく勝たせてもらった頃には、すっかり仲良しになっていました。
「木本さん、あのときの高速代、やっぱり僕に払わせてください!」
とまでは思わなかったものの
KifuLさんで展示できて良かったな〜」
との思いを胸に、山口に戻りました。

2週間の展示期間が終わり、販売報告書がFAXされてきました。どういうマジックを使ったのかは不明ですが、たくさん売ってくれていました。きっと木本さんの丁寧な説明が、お客さんの心に響いたのでしょう。もしかしたら催眠術が使えるのかもしれないし、全部自分で買い取ってくれた可能性も無いとは言いきれません。いずれにしてもありがたいことです。

木本さんは、もうすぐ出版される僕の本『話せば長くなる』もたくさん発注してくれたそうです。本が売れ残って頭を抱える木本さんの姿が、はっきりと目に浮かびます。そうならないよう、福岡にお住まいのみなさまには『話せば長くなる』はKifuLさんでお求めいただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

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『話せば長くなる』原田和明(aptp books )

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