見出し画像

週刊金融日記 第631号 読めば5分で分かる世界の自動車産業 - なぜ欧州の対中国EV関税でドイツが困るのか、フランスEU離脱か、品川駅の美味しい居酒屋と店側の写真エクスプロイト戦略、子供は欲しいが結婚はしたくない、他

// 週刊金融日記
// 2024年6月18日 第631号
// 読めば5分で分かる世界の自動車産業 - なぜ欧州の対中国EV関税でドイツが困るのか?
// フランスEU離脱か
// 品川駅の美味しい居酒屋と店側の写真エクスプロイト戦略
// 子供は欲しいが結婚はしたくない
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 僕もメルマガ配信しているプラットフォームのひとつのニコニコを運営するドワンゴ社が、ランサムウェアなどにやられ、大変なことになっています。ランサムウェアというのは、コンピュータウイルスの一種で、システムに忍び込んで、大事なデータを暗号化してしまいます。そして、元に戻してほしければ金を払え(Ransomは身代金の意味です)、と脅します。ド犯罪ですが、犯罪組織にもある種の信用が大切なので、クリプトなどでちゃんと払うと、本当に元に戻ることが多いらしいです。
 しかし、いまのところ、そういう金目的なのか、単に恨みを持った人間がシステムを壊す目的でランサムウェアを使ったのかなど、よくわかっていません。とにかく、内部の他のシステムもやられ、カドカワの出版関係の方もやられ、日本のIT史に残る、上場企業に起こった最大級の惨劇になっております。ニコニコの方からは先週号を配信できておりません。今週号もまだ配信できません。
 どう対応するかは考え中です。どうもすみません。

●当社サービスへのサイバー攻撃に関するご報告とお詫び
https://dwango.co.jp/news/5131439897051136/

 まあ、怪我の功名というか、僕は先週、世界が大騒ぎしている生成AIって大したことねぇぞ、という趣旨の記事を書きました。その配信日以降も、NVIDIA株は上昇を続けていますから、ニコニコで購読してくださっている方は、僕の記事を読んでNVIDIA株を売らずに儲かっています(損していません)!
 とにかく、早く復旧することを望みます。

週刊金融日記 第630号 AIブームは大山鳴動して鼠一匹!これから生成AIの大がっかりイヤーが始まります

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

-46歳サラリーマンですが1億円の資産運用についてアドバイスお願いします
-MicrosoftのAI搭載Surfaceについて
-子どもは欲しいですが幸せな結婚生活がイメージできません
-年収1500万円のサラリーマンですが婚前契約について教えてください
-20代大学生ですが美人と話す時のコツを教えてください

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.読めば5分で分かる世界の自動車産業 - なぜ欧州の対中国EV関税でドイツが困るのか?

 僕は半導体産業(ITのハードの方)や現在の株式市場で乗りに乗っているインターネット産業(大まかにソフトの方)には割と土地勘もあるし、なんせ自分で日々使っているので、それなりにわかります。GoogleやMicrosoftなどが売っている商品はC向け(to Consumer、企業が直接消費者にサービス提供)でとてもわかりやすいですが、世界のコンピュータや通信を支えるハードを製造する半導体産業は複雑かつ重層的で、そこで使われているテクノロジーも理学と工学の広範な範囲にわたります。まあ、理解するのは大変だし、専門のアナリストの方などの知識と比べると、僕はぜんぜん大したことないと思います。
 ちなみに、半導体産業の方は、世界的なベストセラーとなったこの本はオススメです。まあ、この本もひとつの見方に過ぎないとは思いますが、ざっくりと半導体産業の歴史を俯瞰するにはいいでしょう。

●半導体戦争 - 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防、クリス・ミラー
https://amzn.to/4evnho7

 PC黎明期にメモリーの増設とかしてMS-DOSで自分で設定しながら子供時代を過ごした僕は、前述のように、半導体のハードの方はそこそこ詳しいのですが(いちおうPhDは半導体物性の研究で取りました。もう忘れましたし、その知識が産業を理解するのに役に立ってるとも思いませんが)、世界で最も密集し公共交通機関が発達している東京の都心や香港の都心で暮らし車のいらないライフスタイルを心がけているので(統計的には現代人にとって自動車事故が最大のリスクでもある)、正直、自動車の方は土地勘があまりありません。
 しかし、一般的には逆で、ふつうの人は自分で車買って、日々自分で運転しているわけで、ふつうの人こそ自動車産業に詳しいわけですね。そして、自動車産業は部品メーカーなど非常に裾野が広く、莫大な雇用を生み出します。自動車産業は、ふつうの人も詳しく、実際に各国の政治家にとっては雇用問題でもあり非常に重要で、時に非経済合理的なナショナリズム感情とも強く結びついています。さらに、ガソリン車の排気ガスは二酸化炭素と大気汚染物質のトップ排出源であり、これも市民の非常に強い感情を引き起こす環境問題とも結びついています。
 週末にこの辺をいろいろ勉強していて、だいたい大雑把に状況がつかめましたので、今週号ではそれらをまとめておこうと思います。グローバルな自動車産業の知識がある程度ないと、世界経済を語ることはできません。また、日本の数少ない世界トップの産業というか、ここが終わったら日本もいよいよ途上国並みの経済力になっていくわけですしね。

ここから先は

16,649字

¥ 220

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?