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週刊金融日記 第501号 トヨタ自動車がバッテリーEVで反撃の狼煙を上げる、アメリカでインフレ加速中、海外渡航中に期限が切れた運転免許を更新する方法、トヨタが敗北したら日本経済はどうなるか、他

// 週刊金融日記
// 2021年12月16日 第501号
// トヨタ自動車がバッテリーEVで反撃の狼煙を上げる
// アメリカでインフレ加速中
// 海外渡航中に期限が切れた運転免許を更新する方法
// トヨタが敗北したら日本経済はどうなるか
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 隔離が解除されて一週間ほど経ちました。いま諸用でとある瀬戸内地方の街に来ているのですが、朝の散歩なんかはマスクをしなくても大丈夫です。東京だと外を歩いているときにマスクをしていないと、もうこれは変質者だと思われるレベルなんですが、地方は意外と外での散歩などはマスクしてないんだ、と感心しました。しかし、さすがにスーパーマーケットなんか行くと100%マスクですね。こうした地方の田舎県の多くが、現在、感染者がひとりも見つかっていない、という点で、ほぼゼロコロナ状態になっています。

★新幹線の自由席で駅弁を食べながら缶ビールを飲むと、日本に帰ってきたんだなぁ、と感慨深いです。

★ふつうの庶民の安いお寿司が美味しいです。やはり香港の寿司はコスパ悪いですわ。

 僕は東京でマスクをしていない人を、まだひとりも見ていないのですが、これは面白いことだと思いました。多くの国で、公共の場所でのマスク着用が義務付けられ、違反者には罰金が課されるようになりましたが、日本ほどのマスク着用率には達しませんでした。自動車のスピード違反をみんながやっていることを考えると、罰金よりも、他の人におかしな人と思われる、という同調圧力を利用するほうが、はるかに強制力が強いですね。

 また、もうひとつ気づいたことがあるのですが、日本は本当にぜんぜん電気自動車が走っていませんね。これまでテスラ車を1台も見ていません。じつは香港ではテスラはけっこう走っています。狭い香港では、シンガポールと同様に、自動車を買うときに多額の登録税を払わないといけません。これは車の価格に対して累進課税で40%から最大115%です。高級スポーツカーなら購入するのに必要な費用は定価の約2倍ですね。しかし、香港政府は、環境対策のため、電気自動車ならこの税金を免除していた期間がありました。その間にテスラがバカ売れしましたが、テスラなんか買う金持ちになんでこんな税金の優遇をするんだ、ということでこれがなくなったら、ぜんぜん売れなくなりました。しかし、このときに大量に出回ったテスラ車があるので、香港でUberを呼ぶと、だいたい5回に1回ぐらいはテスラが来ます。電気自動車は走行可能距離が短いのが難点ですが、香港のような過密都市の街中を走るUber車としては、ちょうどテスラは合っているように思います。
 電気自動車の普及状況を調べてみたら、やっぱり日本は1%行きませんね。アメリカでも2%行かない、ヨーロッパはがんばっていて2020年の新車登録のうち5%以上がEVになっていますね。

●【2021年】電気自動車(EV)の普及率はどのくらい?
https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/09/28/000020

 当初から僕はコロナ禍を終わらせる可能性を秘めていると注目していたファイザー社の新薬ですが、最終治験の結果が出ました。おおよそ2000人のコロナ患者から無作為に選んだ約1000人にプラセボを飲ませ(もちろん本人はそれが偽薬とは知りません)、残りの約1000人に新薬を飲ませて、効果を見ました。初期のデータから言われていたことが裏付けられ、じつに重症化率が10分の1程度まで低下します。
 これは期待できますね。そして、ファイザー株にも期待です。なんか、9割効くワクチンでコロナ禍が終わるはずだったのに、このように未だにぜんぜん終わってなかったり、この手の飲み薬はことごとくあとからダメだったりで、これまで何度も裏切られてきた株式投資家たちは、このファイザーの新薬の重要性にまだ気づいていないか、あるいは、効果に疑心暗鬼なのか、ファイザー株はかなり上がってはいるんですが、そこまで大きく反応はしていません。まだまだ、こんなものではない、というのが僕のビューですね。

★プラセボ対照ランダム化比較試験による最終治験によると、ファイザーの新薬を発症5日以内に飲ませた1039人で死者ゼロ、一方でプラセボ(偽薬)を同様に発症5日以内に飲ませた1046人では12人が死亡し(発症した場合に1%程度死亡するのはふつうですね)、非常に強力な効果を確認できました。

●ファイザーのコロナ飲み薬、入院・死亡リスク約9割減 最終分析
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-treatments-pfizer-idJPKBN2IT1OM

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- このコロナ大検疫時代はいつまで続きますか
- オススメのふるさと納税をご教示ください
- 日本が財政破綻してハイパーインフレになる可能性
- テスラが万が一にトヨタを倒した場合日本はどうなりますか
- 携帯販売員ですが仕事を聞かれたときに自信を持って答えられません

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.トヨタ自動車がバッテリーEVで反撃の狼煙を上げる

 先週、テスラの株価は販売する自動車一台当たりで見れば、(販売台数では)世界一の自動車会社のトヨタの40倍ほどのプレミアムで取引されており、テスラは野心的でとても興味深い会社であることは間違いないですが、いくらなんでも信じられないほど割高な株価はそのうちクラッシュするだろう、という話を書きました。実際に、テスラ社のことを一番良くわかっているはすのトップのイーロン・マスク氏やその親族は、この歴史的な株高の中で自分たちの持ち株を大量に売っています。

週刊金融日記 第500号 トヨタvsテスラ 電気自動車バブルがはじけテスラ株は1年以内に暴落へ

 メルマガにテスラvsトヨタを比較した分析を書いて一週間も経たないうちに、トヨタ自動車からとんでもないEV戦略が発表されることになり、驚いています。すでに、さまざまなメディアが報じていますが、それほど長くないので、豊田章男社長のプレゼンテーションを直接見るのがいいでしょう。

●トヨタ自動車 バッテリーEV戦略に関する説明会(2021/12/14 にライブ配信)

●トヨタ、EV投資4兆円 世界販売目標8割増350万台 2030年までに
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78448220V11C21A2MM8000/

 トヨタ自動車は2030年までにEV開発に4兆円投資し(うち2兆円がバッテリーの研究開発)、2030年にはバッテリーEVの販売台数を350万台とする、と目標を発表しました。バッテリーEVを350万台といったら、トヨタが世界一の電気自動車メーカーになることを意味します。
 世界のEV生産台数トップはテスラで、2位がフォルクスワーゲン、3位が中国のBYDです。BYDは香港の隣の深センに本拠地を置く電気自動車メーカーで、深セン市のタクシーやバスは100%EVになっており、ほとんどすべてがBYDのEVとなっています。

●日産、トヨタがベスト10「脱落」EVメーカー世界ランキング
https://maonline.jp/articles/japanese_makers_finally_falls_from_the_top10_in_ev_phv_world_sales210208

●中国の1000万都市はタクシーもバスも100%電動化を達成、「EV先進国」が進める次の一手
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/077000d

 前号で書いたように、トヨタは年間約1000万台の車を生産しており、テスラは2021年は約80万台程度となりそうです。この80万台がEVメーカーのトップということになります。350万台がいかに大きい数字かわかるでしょう。

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