見出し画像

週刊金融日記 第405号 高度な意思決定に必要なものは小学4年生が習う算数の割り算だけ、新型コロナウイルスが世界を分断する、麻布十番なフレンチ焼鳥とケアンズと目黒の立ち食いビストロ、合理的な人生の生き方入門、他

// 週刊金融日記
// 2020年2月4日 第405号
// 高度な意思決定に必要なものは小学4年生が習う算数の割り算だけ
// 新型コロナウイルスが世界を分断する
// 麻布十番なフレンチ焼鳥とケアンズと目黒の立ち食いビストロ
// 合理的な人生の生き方入門
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 いま香港にいるんですが、新型コロナウイルス騒動ですっかり景色が変わってしまいました。週末はマカオに行ってきたんですが、こちらもガラガラでしたね。香港は旧正月が開けて人がすこし増えてきたんですが、自宅勤務が推奨されててオフィスは人が疎らですし、みんなマスクしてますね。まあ、大げさだと思うんですけどね……。
 逆にシンガポール政府なんかは、みんながマスクを買い占めて必要な人に行き渡らないので、症状のない人はマスク付けるな、と新聞に全面広告を出しています。実際、インフルエンザなどの風邪は、飛沫感染を防ぐということでマスクは有効そうですが、マスクの効果を調べようとランダム化比較試験なんかしても統計的有意差は出ないようです。一方で、手洗いはかなり効果的とのことです。ということで、マスクは気休め程度のものですね。
 新型コロナウイルスについては今週のマーケットのコーナーに詳しく書きましたので、興味のある方は読んでください。

★香港のセントラルからマカオに行くフェリーはガラガラです。

★ホテルはパリジャンに泊まったんですが、お正月ということでレセプションで嬉しいチョコレートのプレゼントもらいました。

★パリをテーマにしたホテルなんですが2分の1スケールでエッフェル塔建てちゃうという良くも悪くもチャイナマネー(笑)。

★ここのフレンチはそんなに高くないですしかなり美味しかったです。また行きたい。

●マスク着用にインフルエンザ予防のエビデンスはあるか?
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007543517

★人々の反応、各国政府が実施している過剰な渡航制限など、まるで福島の原発事故のグローバルバージョンを見ているようです。

★マカオから香港に戻ってきたちょうど次の日にフェリーなども止まったみたいで、あやうくマカオに取り残されるところでした(笑)。

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 格安SIMのようなMVNOが大衆に普及しない理由
- Huawei製のスマホやPC製品の信憑性について
- 日本赤軍と連合赤軍はオタサーの姫状態だったのか
- ネットから学べる人は現代文の勉強がよくできた人では
- 池袋駅北口の立ちんぼとヤッて毛じらみを伝染されたときの話

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.高度な意思決定に必要なものは小学4年生が習う算数の割り算だけ

 2月1日は東京はトップティアの中学の入試が集中する日でした。このメルマガでも中学受験などの「教育工学」に関してはいろいろ書いてきたので、受験生の子供がいる読者も多かったのではないでしょうか。お疲れさまです。

●週刊金融日記 教育工学バックナンバー(夜間飛行)
http://yakan-hiko.com/PU14

●週刊金融日記 教育工学バックナンバー(まぐまぐ)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52160749.html

●週刊金融日記 教育工学バックナンバー(note)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52121885.html

 中学受験ですが、昔は小学5年生からはじめれば良かったのですが、いまは4年生(正確には3年生の2月)からはじめるのが一般的です。まあ、正直、5年生からはじめるとちょうど2年ぐらいでテンションが落ちないので、いまでも5年生で僕はいいと思うんですが、それだと塾の高速道路に一気に合流しないといけないんで、塾のカリキュラムと子供がわからないところを見比べて、パッと何が足りないのか判断できるだけの力量が親にある必要があります。まあ、端的に言ってそんなことができるのは、親が研究者、医者、エンジニア、官僚、弁護士、大学教授とかでしょうか。そう考えると、4年生からはじめるのが無難、ということになります。
 そして、小学4年生の最初の難所が算数の「単位量あたりの大きさ」になります。スーパーに行って、10個入りパック250円の卵と6個入りパック180円の卵、どっちを買えばいいでしょうか、というやつです。

 10個入りパック: 250円 ÷ 10個 = 25円/個
   6個入りパック: 180円 ÷ 6個   = 30円/個

 この問題はこのように卵1個あたりいくらか、と考えればどちらが安いのか高いのかがわかりますね。これが「単位量あたりの大きさ」という小学4年生の算数の最初の大変なところです。この考え方によって、物質の重さを表す密度(単位体積あたりの重さ)、都市の過密度合いを表す人口密度(単位面積あたり何人住んでいる)、あるいはガソリン1リットルあたり何km走れるかという燃費なんかが理解できます。
 この単位量あたりの大きさを理解した小学4年生の子供は、次の難所の速さの単元に行きます。ここで速さは距離と時間と結びつける公式なんかがあるんですが、単位量あたりという概念が腹落ちしていると、公式なんていう発想は出てきません。それは自ずと明らかだからです。
 1時間で進める距離が時速、1分なら分速、1秒なら秒速です。秒速5mなら5秒で25m進むな、と。東京と大阪は500kmぐらい離れているので時速250kmの新幹線ならだいたい2時間ぐらいか、と。
 そして、驚くことではありませんが、ビジネスで使う高等な数学はほとんどこのレベルなんです。株価が高いか安いかは1株あたりの利益であるEPS、あるいは純資産であるBPSを株価と比べます。配当を株価で割って配当利回りを計算することもあります。似たような会社のPER(=株価÷EPS)を比べれば、未上場株でもだいたいの株価の水準が計算できます。
 正直、ビジネスで必要な意思決定で、僕はこれより高級な数学に出くわしたことがほとんどありません(笑)。前回の前澤さんの時給の話もまさにこれですね。単位時間あたりに稼げそうな金という指標があるから、自分の時間をどこに突っ込むかの意思決定ができるわけですね。そして、残念ながら小学4年生レベルの算数ができるビジネスマンはとても少ないです。

『週刊金融日記 第402号 ビジネスはすべて時給だという話と前澤さんが剛力彩芽と別れた理由』

 それで、放射能でも新型コロナウイルスでも、僕というか、一定以上の知的水準の人が、危険かどうかの意思決定をするのもまさに単位量あたりの死亡数なんかを比べて、ざっくりとどれぐらい危険なのかを考えているんですよね。この辺は拙著を読んでいただければ、と思います。いま思うと、これは原発の本というより、どうやってリスクに対して意思決定するか、という本になっています。

『反原発の不都合な真実』 http://amzn.to/2c6txVG

ここから先は

17,082字

¥ 220

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?