見出し画像

週刊金融日記 第540号 じつは経済合理的だった大王製紙前会長井川氏とiPadのペーパーレスが最高という話、米SECがイーサリアムPoSを証券認定匂わせ暴落、香港SOHOのおしゃれベトナム料理屋、iPhone機種変更はマネー関係の乗り換えが大変

// 週刊金融日記
// 2022年9月21日 第540号
// じつは経済合理的だった大王製紙前会長井川氏とiPadのペーパーレスが最高という話
// 米SECがイーサリアムPoSを証券認定匂わせ暴落
// 香港SOHOのおしゃれベトナム料理屋
// iPhone機種変更はマネー関係の乗り換えが大変
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 日本は大型の台風が連休にぶつかってしまったようですね。香港はそれほど影響は受けていませんが、海の方はいつになく波が高かったように思います。今週もいろいろ雑務が立て込んでいて、すこし配信が遅れてしまいました。申し訳ございません。
 さて、Twitterで、銀行口座に間違えて1桁多く振り込んでしまったから(実際に振り込む)返してくれ、お礼に1割あげる、みたいな話に従って、オレオレ詐欺の受け子にされて逮捕された件が賑わっておりました(まだ警察等からの正式発表のニュースソースはないようです)。いやはや詐欺師というのは本当にいろんなことを考えるものですね。
 過去に何度か書きましたが、オレオレ詐欺というのは高齢化社会日本にあって反社会的勢力の一大収益源になっていて、ひたすら電話してアポを取るコールセンターをタイやフィリピンに設置して底辺の日本人をたくさん雇っていたり、SNSで闇バイト募集して受け子などを集めたり、それでいて幹部に足がつかないように、こうした部隊には幹部の情報がまったく出ないようになっていたり、まるで多国籍企業のような洗練された組織が出来上がっております。
 読者のみなさまにひとつ気をつけてほしいことは、知らない人から振り込みがあったら、すぐに返金するんじゃなくて、銀行とか警察とかに相談して適切に処理しないと大変だな、ということですね。迷惑な話ですね。逆に、間違えて知らない人に振り込んじゃったりとかも、とてつもなくめんどくさいことになりそうですね。

★作者不明ですがTwitterに出回っている非常によくできたスキーム図です。

●お金配り“当選”が知らぬ間に詐欺グループの受け子に。SNS上で表面化した新手の資金洗浄に「あの社長が悪い」との声も
https://www.mag2.com/p/money/1233224

 ロシアによるウクライナ侵略戦争ですが、ウクライナは最初から国民総動員ですし、自分の国を守るという正義がありますから士気も高く兵隊はいくらでもいる(武器はまだまだ足りない)のですが、ロシアの方はあくまで特別軍事作戦で、世論を考えると国民を動員するわけにもいかず、こっちは兵隊が足りない状況でした。しかし、ロシア兵もだいぶ消耗して減ったので、いよいよ部分的に国民を動員するようです。プーチンは一歩も引かず、ですね。もちろん、ウクライナ側についているアメリカもヨーロッパも日本も、一歩も引きませんし、また引くべきでもありませんから、これは戦争は予想通り長引いていきそうです。

●プーチン氏、部分動員令に署名 30万人規模 親ロ派地域併合へ 核使用も辞さず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2169Y0R20C22A9000000/

 日本は欧米ほどではまったくありませんが、インフレが始まっています。日本は消費者が値上げを許さないので、企業物価の方は上がっているのに、企業が損をかぶって値上げを押さえている感じですね。規制や文化で、欧州などと違って電力会社もすぐに電気代に転嫁できないのですが、エネルギー価格は上がっているので、こちらも電力会社の株主が損をかぶっている状態です。いずれ電気代を上げてきて帳尻を合わせます。
 黒田総裁在任中か来年の4月の任期が終わるのを待ってからかはわかりませんが、さすがにマイナス金利や10年物国債の上限金利を国債を無制限に買うことにより一定水準以下にする、といった非伝統的緩和はそろそろやめる段階に来ているように思います。

●消費者物価8月2.8%上昇 30年11カ月ぶりの上昇率
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16ALG0W2A910C2000000/

●企業物価8月9.0%上昇、18カ月連続前年超え 円安が拍車
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1233U0S2A910C2000000/

 まあ、戦争も終わらないし、中国経済もコロナや不動産バブル崩壊で大変そうですし、世界的にインフレで世界の中央銀行は利上げしていかないといけないわけで、やはり世界経済は一回お休み、ということですね。このお休みが1年間なのか2年間なのか3年間なのかわかりませんが、さすがに半年後にまた世界経済が上向く、ということはないように思います。

週刊金融日記 第535号 来たるべき不況に備えよ

 サービスが終わってしまったCakesの過去の対談記事転載ですが、今週からは、約10年前に行った『ハゲタカ』の真山仁氏との対談記事です。読んでいると、10年前はまだ日本経済がいまよりだいぶピンピンしていたんですよね。最初の方の『ハゲタカ』は本当に面白くて、夢中になって読んだことを覚えています。

『ハゲタカ』真山仁 https://amzn.to/3f0237o

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- iPhone機種変更でクリプト口座などの移行は大変ですか
- 平成累計の東大合格者が多い学校ランキングと石原慎太郎による都立高改革の成果
- パートナーとのセッ〇スもレ〇プになりかねない性交新法なるものが出てきました
- 恋愛工学のおかげで人生が変わり外資系コンサルに転職したのですが仕事にフルコミットするためにアドバイスください
- 巻末に【Cakes対談記事 日本人に足りないのは「強欲」なのか? 真山仁 × 藤沢数希対談 第1回 強欲は「悪」ではない】再掲載

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.じつは経済合理的だった大王製紙前会長井川氏とiPadのペーパーレスが最高という話

 日本で一番カジノで負けた男といえば大王製紙前会長の井川氏である。じつに106億円を溶かした。お父さんが大王製紙を大企業に育て上げ、そこの御曹司として生まれてきたのが井川意高氏である。この金がポケットマネーではなく、自らが経営する大王製紙の関連会社などからの借入だったので、特別背任罪で東京地検特捜部に逮捕され、刑務所に入ることになってしまった。

●大王製紙前会長を再逮捕 東京地検、特別背任容疑 2011年12月14日
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1303E_T11C11A2CC1000/

 これがただのボンボンなら、なんかよくある話(金額はそれにしても大き過ぎるが、ギャンブルではなくビジネスでの失敗ならこれぐらいはよくある)で終わるのだが、井川氏は(ギャンブル以外は)とても優秀だったのである。中学受験をして筑波大学附属駒場中学という日本の最難関中学に受かり、そこから東大文1にも受かって、東大法学部をそつなく卒業している。筑駒は東大現役合格率が日本トップの最難関中学であるが、さらに昔の東大の文1というのは、いまと違って文2や文3より頭一つ抜けていた。いまほどは医学部人気が高くもなかったので、日本のペーパーテストという点では、いまの理3みたいなものだったのが東大文1である。さらに、お父さんの会社で働きはじめ、ジョブローテーションでいろいろな業務をこなしながら、大王製紙の経営を担うようになっていき、実際に業績を大きく改善し、経営者としてもとても優秀であったのだ。お父さんにとってみたら、こんな自慢の子供はいないだろう。
 それがカジノにハマってしまい、バカラで106億円溶かすわけだが、その経緯を赤裸々に綴ったベストセラー『溶ける』がかなり面白かった。何が面白かったかというと、正直、僕にとってはカジノの話自体は大して面白くなくて、カジノなんてただの確率のゲームであり、長いことプレイしたら確率通りに収束していくというだけの話であり、井川さんの博打の話なんか、僕にとっては数式1行でおしまいである。実際に、井川さんは勝ったり、負けたりを繰り返して、合計1兆円ぐらいは賭けたと書いてあって、バカラのハウスエッジは1%ぐらい(1万円賭けたら期待値で9900円ぐらい返ってくる)なので、長いことプレイしてそのとおりになっただけのことである。

★『溶ける』はかなり面白かった。

『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』 https://amzn.to/3f4Iqvb

ここから先は

16,082字

¥ 220

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?