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ココロがしめつけられた。

1985年公開バック・トゥ・ザ・フューチャー。

ロレインを演じるリー・トンプソン、彼女に「青い体験」アンジェラ役、ラウラ・アントネッリを重ね合わせたのはきっとボクだけじゃない(そう思っている)。当時24歳のボクは、主人公マーティの恋人ジェニファーよりもマーティの母親役リー・トンプソンに魅了された。その俳優名もすぐに覚えた。彼女の作品があれば必ず観に行くと強くココロに誓ったのだ。

そして1987年、リー・トンプソン主演

「恋しくて」

公開のニュースが飛び込んできた。コピーライターとして締め切り追われていたけど、上司の目も、取引先の担当者の目も、ボクのコピーを待つデザイナーの目も、リー・トンプソンの眼差しに勝てるはずがない。仕事資料を閉じ、原稿用紙の上に2Bの鉛筆を置き、ボクは仕事場から徒歩10分の映画館に向かった。シートに身をゆだねた。映画が始まった。登場人物のキースがワッツが画面に…そしてアマンダを演じるリー・トンプソンの着替えシーンで下着姿が…いやいや本当の自分とは何なのか、キースの言葉に、自分を取り戻していくアマンダ。うん、青春映画だ。リー・トンプソンの魅力がいっぱい詰まった思い出の映画だとこの文章を書くつもりはない。

だって、この映画の主演はリー・トンプソンじゃなかった。ボクはココロの中で映画を見ながら宣伝した会社を嘘つきと叫んでいた。この映画の主演は、アマンダに恋しているキースの幼なじみ、ボーイッシュな女の子、ワッツを演じる 

メアリー・スチュアート・マスターソンだ。

キースに恋をしながら、それを隠して、キースとアマンダの恋を応援する。キースを傷つけるお金持ちの坊っちゃんをこらしめ、アマンダにキースを傷つけるなと、陰からキースを守る。キースはアマンダへのプレゼント選びにワッツをつきあわせる。ワッツは自分が気に入っているイヤリングをキースに勧めた。キースとアマンダのデートは、ワッツのおかげですべてがうまくいく。ふたりが素敵な時間を過ごす間、運転手をかったワッツはひとり、車のボンネットの上。キースがアマンダにイヤリングをつけようとする。その瞬間、キースの脳裏にワッツが。アマンダは、このイヤリングは私じゃない。私はもう大丈夫とキースに別れを告げる。ひとり泣きながら路上を歩くワッツ。そこにキースが。そしてイヤリングをワッツに…

この映画はすごくいい。主演がリー・トンプソンじゃなかったけど、すごくいい。メアリー・スチュアート・マスターソンてすごく覚えるのが面倒くさそうなのに、その名前さえスラスラ言えるくらい、いい。何が良かったんだろう。忘れていた何かを思い出させてくれた映画だ。だけど、それは取り戻すことはできない。取り戻せないことにココロがしめつけられる。だけど、すごくいい。リー・トンプソン演じるアマンダはかわいい。だけど、メアリー・スチュアート・マスターソンのワッツはもっとかわいい。登場人物3人の未来に幸あれと思ってしまうエンディングもいい。グラマーなアマンダと自分の胸を見比べるワッツもいい。アマンダとのデートで困らないようにとキスの練習相手になり、顔を赤らめるワッツもいい。

締め切りに追われていたのに、コピーを書く気にさせてくれた映画だった。その日は徹夜だった。

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